睡眠に問題がない時は眠れることは当たり前で、特に意識することもありません。ところが、少しでも眠れない夜が続くと、生活する上で睡眠がいかに重要であるかを思い知らされるものです。睡眠がエネルギーレベルに影響を与えることは明らかですが、睡眠の重要性はそれだけにとどまりません。

睡眠障害は、片頭痛をはじめ、高血圧、心疾患、糖尿病、認知症、パーキンソン病、気分障害、肥満など、他にもさまざまな健康問題の原因になることが研究でわかっています。

睡眠の質を高める4つの理由

睡眠には、脳と体のバランスを整えて回復させる効果があります。まずここでは、レム睡眠(REM:急速眼球運動。浅い睡眠)とノンレム睡眠(深い眠り)という2種類に大別される睡眠の段階について見ていきましょう。レム睡眠は記憶処理や学習の定着に重要な役割を果たしていると見られ、ノンレム睡眠はレム睡眠よりも回復効果が高い段階です。睡眠の質には、入眠の速さ、レム睡眠・ノンレム睡眠の量と質、起床時の熟睡感など、さまざまな要素があります。

1. 睡眠不足と血糖値、肥満の関係

睡眠不足が続くと、その影響が積もり積もって悪影響を及ぼしかねません。ノンレム睡眠の間、体は芯からリラックスした状態であり、心拍数、血圧、神経系へのストレスが減少します。また、ストレスホルモンであるコルチゾール濃度が低下し、成長ホルモンが分泌されます。

このノンレム睡眠が十分にとれないと弊害が生じます。例えば、睡眠不足でストレスホルモンの濃度が高まると血糖値に影響が出てしまい、血糖値の問題、糖尿病、肥満などのリスクが増加します。また、コルチゾール濃度が高くなると、日中のストレスレベルも全体的に高まります。

他にも、睡眠不足は食欲制御に関係する2つのホルモンであるグレリン(食欲増進ホルモン)とレプチン(食欲抑制ホルモン)に急速に影響を及ぼします。睡眠不足が数日続いただけでも、レプチン濃度が低下し、グレリン濃度が上昇して空腹感と食欲が増すため、当然のことながら肥満に直結します。そのため、睡眠の問題は子供の肥満の一因とされてきました。成人の場合は、平均睡眠時間7時間から1時間減るごとに肥満リスクが9%増加すると言われています。

2. 睡眠とメンタルヘルス

睡眠不足は、脳や神経系にも深刻な悪影響を及ぼすことがあります。睡眠中、脳はグリコーゲンの貯蔵量を回復させます。多糖の一種であるグリコーゲンは、必要に応じて脳機能が高まるようにサポートするエネルギーの貯蔵庫です。グリコーゲン量が減少すると片頭痛が起こりやすくなります。

度重なる睡眠不足について調査した研究では、脳に変化が起こることが明らかになっています。具体的には、ストレスや記憶に関連する脳の領域である海馬、扁桃体、前頭前野(ぜんとうぜんや)などがダメージを受けました。その結果、同研究の被験者は記憶力に問題が生じ、不安感や攻撃性が強くなりました。このことを血糖値の問題と合わせて考えると、長期的にダメージを悪化させ、認知症や認知機能低下のリスクを高める可能性があります。

睡眠中、脳はいわば大掃除をしている状態であり、代謝廃棄物が除去され、抗酸化防御機能が高まります。このような機能が阻害されると、脳細胞損傷や脳細胞死の原因となります。慢性睡眠障害によるダメージは、パーキンソン病などの脳機能障害の発症リスクを高めると見られています。

3. 睡眠と心臓の健康

睡眠障害や慢性的な不眠症により心疾患リスクが増大するようです。血圧の問題は、やはり睡眠不足に強く影響されるものです。ある研究では、十分な睡眠時間から1時間減るごとに、高血圧のリスクが37%増加することがわかりました。なお、これらの研究ですべての睡眠と血圧の相関関係が明らかになったわけではありませんが、少なくとも一部のケースでは、睡眠不足によるストレスホルモンの増加が血圧上昇につながることがわかっています。

しかも、これだけではありません。睡眠の問題は心臓の健康にさらなる悪影響を及ぼします。前述の通り、睡眠障害は抗酸化物質の減少およびフリーラジカルによる損傷を増加させやすくなります。また、炎症の増加も例外ではありません。血管を収縮させるシグナル伝達分子であるエンドセリンの生成が増えると、全身の血管壁に問題が生じることで、心疾患の根本原因である動脈プラーク(コブ)の蓄積を引き起こします。

4. 睡眠と免疫機能

睡眠障害により免疫機能に支障が出ることは以前から知られていました。最近の研究では、シフト勤務や睡眠障害が新型コロナウイルスを含むウイルス感染症のリスクを高める一因になっているとも言われています。

睡眠不足は、炎症レベルの上昇をはじめ、免疫機能にいくつも有害な影響を及ぼします。炎症はほとんどの慢性疾患の根本的要素であるため、炎症レベルが上昇すると他の慢性疾患を引き起こすおそれがあります。

不眠症の標準的な治療法

睡眠薬による治療では、ベナドリル(一般名ジフェンヒドラミン)などの抗ヒスタミン薬の他、さらに強力な鎮静剤であるアンビエン(一般名ゾルピデム、日本での商品名マイスリー)やザナックス(一般名アルプラゾラム、日本での商品名ソラナックス、コンスタン)などがよく使われます。とはいえ、睡眠薬と死亡リスクの増加には気がかりな相関関係があることが明らかになっています。一例を挙げると、ある大規模な研究では、睡眠薬を使用すると死亡リスクが2倍になるという結果が出ています。鎮静作用のある睡眠薬の使用は、呼吸器系疾患、感染症、気分障害、事故などを原因とする死亡率の増加につながるとされています。

しかも、そのリスクに見合う効力があるならともかく、実際はそうでもないようです。ある研究では、よく知られている睡眠薬の一つを使用したところ、一晩の睡眠時間を平均11分延長した程度だったという結果が出ています。このことからも、不眠症の治療にはより安全で効果的な方法が望まれると言えるでしょう。

睡眠に影響する8つの生活要因

研究結果にばらつきがあるものの、睡眠の改善に役立つと思われる一般的な推奨事項が参考になるでしょう。薬剤に頼ることなく実践できる方法には以下のようなものがあります。

  1. 毎日一定の時間に就寝する
  2. 日中は運動を心がける
  3. なるべく寝室を暗くする
  4. 日中は15分以上の昼寝をしない
  5. 寝る前のアルコールやニコチンの摂取を控える
  6. 昼以降はカフェインを控える
  7. 夕食は早め・少なめに済ませる
  8. 寝室にコンピュータ、テレビ、携帯電話などを置かない

このような方法に加えて、多数の自然な睡眠補助サプリメントの可能性が研究で明らかになってきました。

睡眠を改善する天然成分のサプリメント

メラトニン

夜になり、暗くなると、体内で睡眠ホルモンであるメラトニンが生成されます。メラトニンは強力な抗酸化・抗炎症分子であり、睡眠を促進するだけでなく、さまざまな疾患の予防にも役立ちます。また、メラトニンは副作用が少なく、安全性も高いとされています。

これまで公表されているエビデンスの多くにおいて、メラトニンは睡眠改善をサポートすることが示唆されています。通常、メラトニンは入眠を促し、不眠症の重症度を軽減します。有意な効果が認められなかった研究もいくつかありますが、それは投与されたメラトニンの種類や処方に問題があったのかもしれません。中には、メラトニンの特性が十分に活かされていない処方もあるためです。(注:日本国内のお客様へ:メラトニンを含む製品につきまして、iHerbでは2ヶ月分まで購入が可能です)

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ハーブの鎮静剤

バレリアンパッションフラワー(トケイソウ)レモンバーム ラベンダーカモミールマグノリアバーク(コウボク)カリフォルニアポピー(ハナビシソウ)などのハーブには鎮静作用があることがわかっています。これらのハーブの大半について、確固たる結論を出すにはヒト臨床試験のデータが不十分ですが、動物研究や予備的な臨床試験の中にはストレス性不眠症に効果があると示唆されているものもあります。

上記のハーブは、適切に使用されている限り、安全性も概ね確保されています。とは言うものの、新たにハーブやサプリメントを取り入れる際は、必ず事前にかかりつけ医にご相談ください。特に、何らかの薬剤を服用中の方や慢性疾患がある方は注意が必要です。

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睡眠のためのアミノ酸療法

一部のアミノ酸には、不眠症の改善に期待できるものがあります。トリプトファンγ(ガンマ)-アミノ酪酸(GABA)グリシンなどには鎮静作用があり、安眠を助ける可能性があります。

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トリプトファン

七面鳥を大量に食べた後に眠くなるのは、この肉にトリプトファンが多く含まれているからだと言われています。研究によると、食物で摂るトリプトファンの量が増えるほど、気分が良くなり、不安が和らぎ、睡眠が改善されやすくなるようです。また、トリプトファンを用いた直接的な臨床試験でも、不眠症に悩む被験者が就寝前にトリプトファンを摂取したところ改善が見られました。

トリプトファンは1日4g未満の適量であれば安全とされています。ただし、このアミノ酸はセロトニン(脳内神経伝達物質)の前駆体であるため、セロトニン濃度に影響を及ぼす抗うつ剤などの薬剤を服用中の方は、トリプトファンを摂取する前にかかりつけ医等に確認することが大切です。

GABAとグリシン

GABAグリシンは、セロトニンやドーパミンと同じく神経伝達物質として作用するアミノ酸です。この2つのアミノ酸は、どちらも脳の活動を抑制したり、落ち着かせる作用があります。GABAとグリシンの抑制作用を考えれば、睡眠に効果があっても不思議ではないでしょう。一般的な処方睡眠補助薬の多くは、GABAシステムに直接影響します。

不眠症へのGABAの効果に関する研究では、このアミノ酸を毎晩摂取することで、主観的な睡眠の質と客観的な睡眠効果がいずれも改善されました。睡眠へのGABAの作用に関する全研究をまとめた最近のレビューでは、不眠症においてGABAは主に、入眠を促すことが示されました。この効果は、このアミノ酸特有のリラックス特性によって発揮されるようです。前述のハーブの鎮静剤と同様に、ストレスで眠れない場合はGABAが役に立つかもしれません。

同じく研究結果は限られていますが、グリシンも有望なアミノ酸です。動物研究によると、グリシンを経口投与することで脳内のグリシン濃度が効果的に高まります。グリシンを投与するとまもなく深部体温(中核体温)が下がります。通常、入眠前は深部体温が下がるため、グリシンによる体温低下は睡眠の質向上につながると考えられます。あるヒト試験では、グリシンは日中など覚醒時の眠気を引き起こすことなく、主観的にも客観的にも睡眠スコアを改善することが示されました。

まとめ

言うまでもなく、睡眠は日々の生活や長期的な健康に欠かせないものです。不眠症に悩む人の数や一般的な処方睡眠薬の副作用を考慮すると、それ以外の選択肢が必要となります。こうした最新の研究が示すように、メラトニン、ハーブ製品、アミノ酸など、最小限の副作用で睡眠改善が期待できる自然な睡眠補助剤が多数あることは心強いことと言えるでしょう。

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