ビタミンDが免疫に重要であることはよく知られていますが、紫外線によるダメージへの懸念を考慮して、メリットとデメリットを天秤にかけた上で、太陽光から安全にビタミンDを得るにはどうすれば良いのでしょうか。この記事では、免疫機能に対するビタミンDの重要な役割について説明する他、食品やサプリメントから安全にビタミンDを摂取する方法や、紫外線から肌を守りつつ安全な日光浴でビタミンDを作る方法をご紹介します。

ビタミンDと免疫力

ビタミンDは重要な免疫調整ビタミンであり、市中感染(病院などに立ち入らず日常生活を送っている人が感染症にかかること)ウイルスによる(肺炎などの)重症化リスクを下げる可能性があります。人体におけるビタミンDの役割は複雑なもので、その理由の一つとして、さまざまな種類の細胞がビタミンD受容体を有することが挙げられます。免疫系において、ビタミンDはB細胞とT細胞に影響を与えていると考えられています。この2種類は、病原体を認識して破壊する際に防御の最前線を担う代表的な細胞です。B細胞とT細胞は骨髄で作られますが、この骨髄はビタミンDによるカルシウム代謝の調節を利用して維持されています。

パンデミックにおけるビタミンDの重要性

複数の研究を経て、正常なビタミンD濃度はウイルス性疾患の重症度を軽減することが明らかになっています。例えば、ウイルスにさらされた場合、ビタミンDの血中濃度が高いほど重症化または死亡のリスクが低くなります。

また、ビタミンDは、レンサ球菌感染症やインフルエンザなどの感染症による重症化のリスクを下げるとも言われています。今後50〜100年の間に、ウイルスや細菌などのベクター媒介性疾患(病原菌や寄生虫によって起こる疾患)を原因とするパンデミックが増加するおそれがあると予想されていることからも、家族全員のビタミンD濃度を把握し、正常値を維持するのが賢明でしょう。いつ細菌やウイルスにさらされ、免疫力を試されないとも限りません。

ビタミンDの推奨摂取量

端的に言うと、個人差があるということになります。専門家が推奨する摂取量にもばらつきがある上に、各個人の病歴、食生活、生活習慣によっても異なります。太陽光や食品・サプリメントからの摂取が必要な1日あたりのビタミンD量は、遺伝、肌質、腸機能、健康状態、年齢によって変わってきます。

ビタミンDを十分に摂取できているかどうかを知る唯一の方法は血液検査です。検査の結果、50〜100ng/mLはビタミンD充足、30〜50ng/mLは準最適、30ng/mL未満は非充足または不足、(なお、2017年に発表された日本国内向け「ビタミンD不足・欠乏の判定指針」によると、30ng/mL以上を充足、 30ng/mL未満を非充足とし、そのうち20ng/mL以上〜30ng/mL未満は不足、20ng/mL未満は欠乏)と判定されます。一部の医学会では、骨のリモデリング(骨の再構築・再形成)のような基本的な身体機能を維持するには、75ng/mL以上の濃度を保つことを推奨しています。各自の具体的な摂取量は医師が判断しますが、50ng/mL程度がほとんどの人にとって安全な数値と言えるでしょう。この目標値は、自分に合った安全な日光浴と食品・サプリメントの摂取を実行することで達成できます。

日光を浴びてビタミンDを作る方法

ヒトの皮膚には7-デヒドロコレステロールというコレステロール化合物が豊富に含まれています。このタイプのコレステロールがUVB(紫外線B波)を浴びると、B環(コレステロールのような環式化合物の構造の一つ)が分解されてプレビタミンD(ビタミンDの前駆体)になります。次に、このプレビタミンDが熱を受けるとビタミンDに変換され、全身で多数の重要な化学反応に利用されます。こうしたプロセスは酵素なしで行われます。つまり、コレステロールと健康な皮膚に加えて、太陽の下で過ごす時間さえあれば、体でビタミンDを作ることができるのです。

ただ、単純なプロセスとはいえ、日頃から太陽の下で仕事をしている人や赤道付近に住んでいる人でない限り、この方法だけでビタミンDを摂取するのは心もとなく、到底お勧めできる方法とは言えません。その理由は以下の通りです。

地域によって異なるUVBの強度

地球の表面に届く紫外線量は、季節や緯度はもちろん、太陽の角度や地軸の傾きによっても変わります。地表に届くUVB量が最も多いのは赤道緯度の正午です。この条件下であれば、1日数分間、体の大部分の皮膚を直射日光に当てるだけで、理論上は約10,000〜20,000 IU(国際単位)のビタミンDを生成できます。とはいえ、赤道から離れたり、昼間に外出できなかったり、衣服や帽子を着用したり、日焼け止めを塗る他にも、秋冬になればビタミンDの生成量が激減するため、日光浴だけで十分なビタミンDを作ることができなくなります。多くの医師が、秋から春にかけてビタミンDのカプセル摂取を勧めるのはそのためです。この時期は、体内で自然にビタミンDが生成されるほど日差しが強くなく、地表に届く太陽光の角度も最適とは言えません。

日焼けのリスクは、無防備にUVBにさらされてようやく得られる(かどうかも疑わしい)メリットを上回るデメリット

UVB放射は、皮膚内でコレステロールをプレビタミンDに変えるタイプの紫外線放射ですが、DNAにダメージを与え、メラノーマ(ほくろのような皮膚がんと呼ばれる悪性黒色腫=あくせいこくしょくしゅ)のリスクを高めるといった副作用を伴います。十分なビタミンDを作るのに必要なUVB量と、皮膚がんのリスクを高める重度の日焼け(皮膚が赤く火照って炎症を起こした状態で、日光皮膚炎ともいう)を起こすUVB量は、まさに紙一重です。このわずかな差は、1時間単位ではなく、秒〜分単位で測定され、UVインデックス(紫外線指数)をはじめ、遺伝や最近の日光曝露によって皮膚で生成されたメラニンの量によって変化します。仮に、大多数の人がビタミンD濃度の変化を(血液検査で)即座に把握し、それに応じて日光の照射量を調整し、日光皮膚炎が起こり始める瞬間を正確に予測できれば問題はないのですが、それを期待するのは無理というものでしょう。このことから、たとえビタミンDの生成量が減っても、念のため日焼け止めをくまなく塗ってメラノーマを予防することをお勧めします。この話題についての詳細は、こちらの記事日焼けして火照った肌を天然成分で鎮める方法をお読みください。

日焼けから肌を守りながらも、ある程度のビタミンDを生成

日焼けによるダメージや皮膚がんから肌を守る上で、日焼け止めの使用が欠かせないことは明らかですが、日焼け止めを塗っているからといってビタミンDがまったく生成できないわけではありません。実際、ある研究では、1週間の休暇中に日焼け止めを塗って計40時間太陽の下で過ごした人でも、血清ビタミンD濃度が20ポイント増加したことがわかりました。さらに、多くの広域スペクトラムの日焼け止めには、体に安心で免疫機能に重要な亜鉛のようなミネラルも含まれています(ただし、ナノ粒子型の亜鉛製品は避けましょう)。私が患者に勧めているのは、常に日焼け止めを塗り、健康的な生活を送ることで重度の日焼けを防ぎ、日焼け止めで保護された肌で日光を浴びて少しでもビタミンDを増やし、それでもビタミンDが不足して場合は食品やサプリメントで補給することです。

つまり、正常なビタミンD濃度を維持するには、日焼け止めを使用し、ビタミンDを多く含む食品を摂るなど健康的な生活習慣を心がけ、皮膚炎を起こすほど肌を焼かない程度にできるだけ日光を浴びることが大切です。それだけで正常な血清ビタミンD濃度を維持できない場合は、かかりつけ医にサプリメントの使用について相談すると良いでしょう。

食品からビタミンDを摂取する方法

ビタミンDの3大摂取源は、タラ肝油、マス、サケです。これは、ヒトと同じく、魚をはじめとする動物も生体組織や脂肪にビタミンDを蓄えているためです。魚の肝臓や動物の組織を食べることは、動物が一生をかけて蓄えたビタミンDも摂取するということです。そこで、ビタミンDをなるべく自然な形で摂取したい方は、週に数回、上記の食品をそれぞれたっぷり一人前ずつ食べることをお勧めします。

サプリメントでビタミンDを補う方法

代表的なビタミンDの摂取源が動物性食品ばかりとあって、ヴィーガンの方が食事から十分なビタミンDを摂取するのはかなり難しいでしょう。そこで頼りになるのが、ヴィーガン対応の合成ビタミンDサプリメントで、ビタミンDグミビタミンD錠剤として販売されています。なお、ビタミンD2ではなく、ビタミンD3を摂取することをお勧めします。同じ用量でも、ビタミンD3の方がD2よりもビタミンD欠乏を効果的に改善する作用が示されているためです。もし、ビタミンD2を摂取するのであれば、D3よりも半減期が短い(成分の代謝・排泄が早いため、効き目が短い)ため、毎日摂取するようにしましょう。他のサプリメントと同様に、ビタミンDを摂取する前に、自分に合った種類と摂取量についてかかりつけ医に相談することが賢明です。

健康な免疫機能に不可欠なビタミンD

免疫機能に大きな影響を与えるビタミンDは、免疫力の維持に欠かせない栄養素です。日焼け止めを使用した上での日光浴をはじめ、ビタミンDが豊富な食事とビタミンDのサプリメントを組み合わせることで、生涯にわたってこのビタミンの効果を最大限に引き出せるのではないでしょうか。

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