この記事をお読みの方は、ヴィーガン食の導入を決めた方か、これから始めたいとお考えの方かもしれません。健康上のメリットが盛りだくさんのヴィーガン食なら、きっと後悔のない健康な生活を送ることができると言えるでしょう。

しかし、ヴィーガン食を始めるにあたり知っておきたいことがいくつかあります。知っているのと知らないのとでは、栄養面で大きな差が出るからです。この記事では、ヴィーガン食が自分に合っているのかを判断するのに役立つ情報をはじめ、ヴィーガン食に切り替えるメリットやスタート時に参考になるヒントもご紹介します。

‌‌プラントベース・ダイエットとは?

プラントベース・ダイエット(植物ベースの食生活)にはさまざまな種類があります。以下のタイプのうち最も自分に合った植物ベースの食事を選ぶことから始まります。 

  • ベジタリアン:ベジタリアンは肉を食べませんが、以下のようなタイプによっては卵や乳製品を摂取することもあります。
    • オボ・ベジタリアン:肉や乳製品を口にしませんが、卵は食べます。
    • ラクト・ベジタリアン:肉や卵は食べませんが、乳製品は摂ります。
    • ラクト・オボ・ベジタリアン:肉を摂取せず、卵と乳製品は食べます。
  • ヴィーガン:肉、乳製品、卵を含む動物性食品を一切摂りません。
  • ローヴィーガン:未加工・未調理のヴィーガン食のみを摂取します。
  • ペスカタリアン:基本はヴィーガン食ですが魚介類を食べます。
  • フレキシタリアン:植物性食品を中心としながら、時には肉も食べる柔軟な食事スタイルです。

‌‌‌‌ヴィーガン食のメリット

研究では、ヴィーガン食を実践することで多様な健康測定値のバランスが維持されることがわかっています。これらの測定値には以下のようなものがあります。

  • 血圧値
  • コレステロール値
  • ヘモグロビンA1c(HbA1c)値
  • ボディマス指数 (BMI)

このような数値を下げたい方や、今後上昇するリスクに備えて正常値を維持しておきたい方にはヴィーガン食がお勧めです。また、特に数値は気にならなくとも、体重に気をつけたいという方には、健康的な減量をサポートする上でヴィーガン食が役立つかもしれません。

糖尿病または前糖尿病(糖尿病予備群)の兆候がある方は、主治医からヴィーガン食を勧められたことがあるかもしれません。ヴィーガン食は、糖尿病や心疾患などの慢性疾患の予防に良いとされている食事療法だからです。

さらに、慢性疾患の管理に必要な服薬数が減ることも、食事から動物性食品を排除するメリットの一つです。これは、ヴィーガン食が慢性疾患の主な原因である反応性炎症の予防を促進するためです。

‌‌‌‌ヴィーガン食への移行に役立つ調理器具

もちろん、ひたすらサラダを食べるだけでもヴィーガン食を始めることはできますが、ワンパターンになりがちで後が続かないかもしれません。そんな時、ヴィーガン食の献立の工夫に使える手軽な方法が多数あります。そこで、ヴィーガン食をより楽しみながら美味しく味わうために、あると便利な調理器具をご紹介しましょう。

  • フードプロセッサー — これはヴィーガン料理になくてはならない必需品です。例えば、クルミとサンドライトマトをフードプロセッサーでペースト状にしたヴィーガンタコスはいかがでしょう。タコスにかけるトマティーヨサルサもお忘れなく。これも、トマティーヨ(ナス科ホオズキ属の植物で食用ホオズキとも呼ばれる)、ニンニク、コリアンダー、タマネギ、ライムの絞り汁をフードプロセッサーにかければできあがります。
  • ブレンダーボトル — ヴィーガン食の定番といえばプロテインシェイクやスムージーが挙げられます。この便利なボトルの中には泡立て用の小さなワイヤーボールが入っており、どろっとした重たい粉類も混ざりやすく、なめらかで口当たりの良い栄養ドリンクが簡単に作ることができます。
  • カッティングボード(まな板) — ヴィーガン食では野菜や果物を切る機会が増えるため、使い勝手の良いカッティングボードとよく切れる包丁があれば下ごしらえがはかどります。
  • スチーマーバスケット(またはせいろ)— 蒸し料理に便利なスチーマーバスケットを使えば、茹でると流れ出やすい野菜の栄養がたっぷり摂れ、しかも歯ざわり良く仕上がります。
  • ヴィーガン食のアイデア満載の料理本

‌‌‌‌栄養と健康をサポートするヴィーガン食の定番11選

ヴィーガン対応の栄養補助食品

食事から肉類を取り除いたことで十分に摂取できなくなった栄養素があっても、特定のサプリメントがあれば不足分を補充しやすくなります。そこで、ここからは、毎日の必要摂取量を満たすのに役立つサプリメントをご紹介しましょう。

  1. プロテインパウダー — 動物性タンパク質を排除すると、毎日のタンパク質を十分に摂取することが難しくなる場合があります。そんな時プロテインパウダーがあれば、スムージーやシェイクとしてタンパク質の摂取量を増やすのが楽になります。プロテインパウダーはさまざまな種類や風味の製品が販売されています。うっかり動物性食品が入ったシェイクを飲んでしまわないように、よく確かめてヴィーガン対応のプロテインを選びましょう。
  2. ビタミンB12 — ビタミンB12を最も多く含む食品が肉、魚、牛乳、チーズ、卵などであることから、ヴィーガンやベジタリアンはビタミンB12欠乏のリスクが高いという研究結果が出ています。でもご心配なく。B12サプリメントが欠乏症の予防に役立ちます。ビタミンB12は、適切な神経系の機能、DNAの生成、タンパク質の代謝、赤血球の形成など、数多くの身体機能に不可欠であることが実証されています。
  3. 鉄分 — 鉄には、動物性食品に含まれるヘム鉄と植物性食品に含まれる非ヘム鉄の2種類があります。ヘム鉄は吸収されやすいのですが、ヴィーガン食では摂れないため不足しがちです。そのため、ヴィーガンやベジタリアンの鉄欠乏性貧血を予防するには、鉄のサプリメントが必要な場合があります。
  4. 亜鉛 — 免疫機能や細胞機能に重要な亜鉛は、植物性食品にあまり含まれていない栄養素の一つです。ベジタリアンやヴィーガンは、動物性・植物性食品ともに食べる人と比べて亜鉛の血中濃度が低いことが研究で示されています。このことからも、ヴィーガンの方は、亜鉛を含むマルチビタミンや亜鉛のサプリメントが必要になるかもしれません。
  5. カルシウム — 植物性のカルシウム源が多数存在するにもかかわらず、ヴィーガン食を実践している人の多くは十分な量のカルシウムを摂取できていないことが研究で明らかになっています。他の研究でも、ヴィーガンはカルシウムの摂取量が不十分なために骨折のリスクが高くなる可能性があるとされています。カルシウムサプリメントは、丈夫な骨、正常な心臓や筋肉の機能、健康な歯の維持に期待できそうです。
  6. ビタミンD — ビタミンDの摂取量に不安があるのはヴィーガンだけではありません。食事だけでビタミンDの必要摂取量を満たすのは容易ではなく、このビタミンを含む食物を十分に摂れていないのは万人に共通する問題なのです。適切な免疫機能や精神的な健康状態の維持に欠かせないビタミンDは、ヴィーガンにとって極めて重要なカルシウムの吸収を助ける働きもあります。いずれにしても、ビタミンDのサプリメントは大半の人にとって理想の選択肢と言えるでしょう。なお、この脂溶性ビタミンを高用量で摂取する場合は、事前にかかりつけ医の診察を受け、ビタミンD濃度を測定してもらうことが大切です。
  7. オメガ3脂肪酸 — 研究によると、ベジタリアンとヴィーガンは、ドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)の濃度が著しく低いことがわかっています。この2種類の脂肪酸は、いずれも食物でしか得られないα-リノレン酸(ALA)から作られています。DHAとEPAは、主にフィッシュオイルをはじめ、サケやサバなどの魚、すなわち動物性食品に含まれています。また、ALA、EPA、DHAは、目と脳の健康に不可欠なオメガ3脂肪酸です。他にも、オメガ3脂肪酸の効能として、多様な慢性疾患のリスクを減少させることが挙げられます。とはいえ、ヴィーガン対応のオイルでオメガ3脂肪酸を補えますのでご安心ください。例えば、藻類油(藻オイル)なら、ヴィーガンやベジタリアンのオメガ3濃度をサポートできます。

ヴィーガン対応のスーパーフード

動物性食品を排除することで不足しがちな栄養素を摂取するにはサプリメントが便利ですが、ヴィーガン食に加えることで不足栄養素の補充が図れる食品も多数あります。

これからヴィーガン生活を始める方は、以下のスーパーフードを備えておくと良いでしょう。

  1. チアシード — オメガ3脂肪酸を豊富に含み、わずかなカロリーで多くの栄養素を供給する優れた食品です。小さな一粒一粒に、抗酸化物質、食物繊維、タンパク質がたっぷり詰まったチアシードは、まさに栄養満点のスーパーフードです。
  2. フラックスシード(亜麻仁種子) — チアシードと同様に、フラックスシードにもヴィーガン食に必要なタンパク質とオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。また、血圧やコレステロールのバランスを整える効果も期待できます。
  3. 栄養酵母(別名ビール酵母、ニュートリショナルイースト) — ビタミンB12強化食品である栄養酵母は、ヴィーガン生活開始後のビタミンB12欠乏リスクを減らすのに役立ちます。その他にも、ビタミン、微量ミネラル、タンパク質、抗酸化物質など含む栄養酵母は、文字通り栄養素の宝庫と言えます。さらに、完全タンパク質でもある栄養酵母には、食物源から摂取する必要のある全9種の必須アミノ酸が含まれています。
  4. カボチャの種 — ヴィーガン対応の鉄供給源であるカボチャの種は、健康効果が詰まった美味しいおやつです。ヴィーガンやベジタリアンは鉄分を十分に摂取することが難しいため、この必須ミネラルを増やすのにカボチャの種は最適です。その他、鉄分を多く含む食品には、豆類、ナッツ・種子類、アブラナ科の野菜(キャベツ、ブロッコリー、ダイコンなど)、ドライフルーツなどがあります。

‌‌‌‌ヴィーガン食が自分に合っているかを見極める

減量から血圧降下まで、ヴィーガン食による健康への効果は他の食事療法と比べて傑出しています。研究では、ヴィーガン食はコレステロール値やヘモグロビンA1c値の低下をはじめ、将来慢性疾患と診断されるリスクを減らす可能性があるとされています。また、多くの医師が、高血圧、心疾患、肥満などの慢性疾患患者を筆頭とするあらゆる患者にヴィーガン食を推奨していることも示唆されています。

一方、ヴィーガン食により特定の栄養素が不足してしまう可能性も拭いきれません。特に、鉄分ビタミンB12オメガ3ビタミンD亜鉛カルシウムタンパク質といった重要な栄養素は、ヴィーガン食を実践するならサプリメントで補給するか、少なくとも定期的に濃度測定を受けて管理する必要があるでしょう。

全体的に見て、ヴィーガン食のメリットはリスクをはるかに上回るようです。ただし、効果が実証された食事療法とはいえ、ヴィーガン食が自分の健康とウェルネスにふさわしいかどうかを判断できるのは、実践する方自身とかかりつけ医だけです。

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