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ウイルス感染症の一次予防

著者:マイケル・マレー博士

この記事の内容 :


現在、新型コロナウイルスCOVID-19 )による感染症 の世界的大流行を踏まえて、「社会距離戦略(社会と距離を置くこと、人混みを避けること )」と良好な衛生状態による感染リスクの低減はもちろん、そして免疫力強化という予防策に目が向けられています。ただし、免疫系がウイルスや微生物と接触する前においても、感染から身を守る天然のバリアが存在します。COVID-19 に関する一次予防箇所は、鼻腔、副鼻腔、咽喉、気管、気管支からなる気道です。

気道粘液の重要性

何らかのウイルスが喉、副鼻腔、気道、肺のいずれかに感染するには、まず粘膜を通過するか、粘膜を通して体内に侵入する必要があります。これが感染に対する第一関門で、 免疫系は二次予防です。COVID-19が肺に侵入し、深刻な損傷を引き起こす経路は2種類あります。主要経路は気道通過で、もう一方の経路は消化管通過です。

気道を覆う気道粘膜は、対COVID-19の一次予防です。これは、主に繊毛上皮細胞と呼ばれる細胞で構成されています。これらの細胞の外面は、繊毛と呼ばれる毛のような構造で覆われています。繊毛は束になり、ブラシのように機能して、気道分泌物、微生物、細胞残屑を上に移動させ、最終的には鼻や口から排出させます。繊毛上皮細胞の上部には2層の粘液層があります。粘液は、杯細胞と呼ばれる別の種類の上皮細胞に産生されます。粘度が比較的低い粘液と繊毛の束が混ざり合った層の上に、厚めの層が重なった状態です。粘液は、糖と結合したタンパク質のネットワークであるムチンで構成されています。

粘膜と粘液の役割は、微生物や粒子が肺に侵入しないよう防ぐことです。肺の中には、繊毛を持たない特殊な上皮細胞があります。肺には杯細胞も存在しません。肺にあるのは、血液に酸素を供給して二酸化炭素と交換する機能を果たすように発達した、ごく薄い上皮細胞、結合組織、毛細血管だけです。すなわち、粒子状物質や微生物が肺にたどり着くと、肺に保護手段がほとんどないため、非常に深刻な状況となります。粘液と気道内壁が正常に機能しないと、深刻な感染リスク増加につながることから、COVID-19感染予防における健康な粘液と気道内壁の重要性は決して軽視できないものです。

消化器経路の感染を予防

COVID-19の第二の体内侵入経路は、消化管経由です。消化管内では、粘液層を通過すると多数の保護因子があります。最も注目すべき補助要員は、胃酸や消化酵素などの消化分泌物です。免疫構造も、腸内でははるかに大規模です。COVID-19がこれらの保護因子を回避して消化管に感染すると、血流に入り込み、肺への感染も可能になります。興味深いのは、腸から肺に移動するこのウイルスの能力が、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)で既に確認されていたことです。これは、動物にウイルスを経口感染させて胃腸内のウイルス複製を増加させ、同時に、プロトンポンプ阻害薬と呼ばれる胃酸抑制薬を投与したところ判明しました。そうなると当然 、「プロトンポンプ阻害薬を服用すると、肺への二次的な侵入経路が増加することで、ウイルスが肺を攻撃するリスクが高まるのか」という疑問が起こるでしょう。答えはイエスです。

感染の二次的経路のリスクを大幅に高めるもう一つの要因は、 消化酵素不足です。膵臓から分泌される膵酵素(すいこうそ)不足があらゆるウイルス性呼吸器感染症の主要なリスク因子であることは確立された事実です。実際、酵素補充療法は、これらの患者の肺感染症リスクを減らすための重要な医学的アプローチです。タンパク質を分解する酵素であるプロテアーゼは、食物に含まれるタンパク質だけでなく、ウイルスの細胞壁のタンパク質も消化することができます。ウイルスには、感染過程で重要な役割を果たす細胞膜から突き出たタンパク質が含まれています。このタンパク質がなくては、ウイルスはヒト細胞内に侵入できません。このように、プロテアーゼ補給が、気道の粘液バリアのサポートにも効果的と考えられます。

新型コロナウイルス(COVID-19)感染の重症度の判定基準とは?

COVID-19感染の軽度と重度の違いは、いくつかの要素に基づいているようです。最も重要なものは、患者が初期にさらされるウイルス量です。曝露したウイルスが少量なら、健康な人の大半が軽度〜中程度の症状で済むでしょう。一方、曝露したウイルス量が極めて高い場合は、深刻な感染リスクが大幅に高まります。医療従事者が特に脆弱なのはそのためです。 

COVID-19の重症度を左右するもう一つの要因は、ウイルスが気道を通過して肺まで下がる能力と言えるでしょう。通常、ウイルス性気道感染症は鼻で始まり、気道を通って下に移動します。下に行くほど、感染が重症化します。前述の通り、肺細胞には保護作用がほとんどありません。肺のウイルス感染中、肺上皮細胞は感染ウイルスのダメージを受けるだけでなく、感染に対する体の免疫反応からもダメージを受けます。免疫系による反応とウイルス排除が迅速に行われれば、感染は数日で阻止・解消されるでしょう。ところが、免疫反応が不十分であったり、逆に攻撃的すぎると、重大なダメージにつながるおそれがあります。

一次予防をサポートする方法 

上記を踏まえて、COVID-19をはじめ、気道を狙う微生物に対する宿主防御サポートの第一段階は、効果的な粘液バリアの生成を促進することであるのは間違いありません。主な方法は以下の通りです。 

十分な水分補給が肝心

粘膜の健康に水は不可欠です。上皮細胞が作るムチンは、いわば乾燥した状態です。乾燥していないと、細胞自体に十分なスペースがなくなるからです。ムチンは、水中で重量の千倍にまで結合可能です。水が十分なければ増殖できません。大きくなるおもちゃを覚えていますか?そう、水の中に入れておくと膨らむ、安くて小さなおもちゃです。粘液は、まさにあの方法で形成します。そのため、粘液の機能には十分な水が欠かせないわけです。加湿器は気道の潤い保持に役立ちますが、適切なバリア機能には、体の内側からしっかり水分を補給することが大切です。 

効果的な粘液バリアをサポートする主要栄養素

必須ビタミンやミネラルが不足すると、粘液バリアが変化する可能性があります。上皮細胞は、適切に複製し、構造的かつ生産的役割を果たすために、絶えず栄養素の供給を必要とします。これらの細胞は、ムチンだけでなく、ウイルスや有害生物を撃退するのに欠かせない他の保護物質も数多く産生します。 マルチビタミン・ミネラル製剤 を摂取することが肝心です。少なくとも、ビタミン A、 C、 D、 ビタミンB 群、 亜鉛 など、特に重要な栄養素の推奨食事摂取量を供給する製品を選びましょう。今日では、ほとんどのマルチビタミンにビタミンA供給源として βカロテン が含まれているため、レチノール型ビタミンAも併せて摂取することをお勧めします。レチノールは、より直接的な抗感染作用が特徴です。

ビタミンA

ビタミンA は最初に発見された脂溶性ビタミンですが、「A」と呼ばれる理由はそれだけではなく、「抗感染(Anti-infective)」性にちなんで名付けられたからでもあります。ビタミンAは、粘膜の健康と機能に必要不可欠な栄養素です。ビタミンA欠乏症の人は、感染症にかかりやすく、特にウイルス性感染症には要注意です。ビタミンA補給は、特に気道ウイルス対策として、ウイルス感染中の免疫機能の改善に大きな効果を発揮することが示されています。 

ビタミンAの摂取量は、使用目的によって異なります。風邪・インフルエンザ流行期の数カ月間に粘膜と免疫系の健康をサポートするなら、男性3000 mcg(10000 IU)、女性1500mcg(5000 IU)が安全摂取量です。急性ウイルス感染症の場合は、妊娠の可能性がゼロである限り、15000mcg(50000 IU)の1〜2日1回の経口投与が安全です。妊娠中に高用量のビタミンAを摂取すると出生異常を引き起こす可能性があるため、出産可能年齢の女性は1日1500mcg(5000 IU)を超えるビタミンAを摂取しないでください。授乳中の女性も同様です。

ビタミンD

ビタミンD は、マルチビタミン・ミネラル製剤に通常含まれる量よりも少し多めに摂取することも重要です。ビタミンDが不足するとウイルス性呼吸器感染症のリスクが高まることを示す科学的データが増えています。日光に当たると皮膚でビタミンDが生成されるため、冬場はどうしてもビタミンDの生成量が少なめになります。食事だけでは不足しがちなビタミンDを補給することで、冬のビタミンD濃度低下を防ぐことができます。 

さらにビタミンDには、細胞へのウイルス感染を防ぐ機能があるようです。ビタミンD補給は、年齢を問わず、呼吸器感染を防ぐことが研究で示されています。ビタミンD専門家のほとんどが、冬の間は10歳以上の子供から大人まで、1日5000 IUのビタミンDを摂取するよう推奨しています。なお、1歳未満の乳児の推奨摂取量は1日1000 IU、2〜4歳の幼児は2000 IU、4〜9歳は3000 IUです。 

プロテアーゼ酵素製剤を活用

特定のプロテアーゼ酵素は、粘液の組成、物理的特性、機能の改善に効果があることが示されています。プロテアーゼは、食物タンパクの分解を助けるために、 消化酵素 に用いられることが多いものです。空腹時にこれらのプロテアーゼを摂取すると、血流に吸収され、粘液をはじめ、全身への効果を発揮します。 

最も研究が進んでいるプロテアーゼは、気道粘液への作用が確認されている特殊な真菌性プロテアーゼ「ムコラーゼ」です。ある臨床研究で、慢性気管支炎患者の粘液へのムコラーゼの効果が調査されました。無作為に割り当てられた患者らが、10日間にわたってプロテアーゼまたはプラセボのいずれかを投与されました。その結果、プラセボに粘液への効果がなかった一方で、ムコラーゼには治療終了時、粘度(濃さ)と弾力性(伸縮性)の両方に有意な変化が見られました。実際、改善された粘液の構造と機能は、治療終了後の最大8日間まで明白でした。

別の10日間の二重盲検試験では、ムコラーゼが粘液の粘弾性を改善するだけでなく、気道炎症を軽減することも示されました。  ブロメライン や セラチア・ペプチダーゼ(別名セラペプターゼ) といった他のプロテアーゼでも同様の効果が示されています。ムコラーゼ、ブロメライン、セラペプターゼは、粘液の粘度を下げると同時に、粘液の産生を増加させ、粘液繊毛輸送を劇的に増やします。正味の効果は、微生物を中和し、体外に排出させるのに有効な粘液の産生を大幅に増やすことです。プロテアーゼは、粘液の機械的効果を高めることに加えて、粘液内の特殊な保護因子が侵入生物をさらに効果的に中和するよう促進する可能性があります。粘液で分泌される保護因子には、分泌型IgAの他、ウイルスを遮断するさまざまな白血球由来のプロテアーゼ阻害剤、一酸化窒素、ラクトフェリンなどがあります。

N-アセチルシステインと呼吸器の健康

N-アセチルシステイン(NAC) は含硫アミノ酸で、気道をサポートする粘液修飾剤として広く使用されてきた実績があります。NACは、肺と呼吸器全体のための主要な抗酸化物質である グルタチオン の形成という目的でも体内で利用されます。-タバコの煙や他の呼吸器毒素にさらされている人をはじめ、糖尿病、肥満、その他の慢性症状などの炎症系疾患患者は、グルタチオン濃度が低めです。グルタチオン濃度が低いと、COVID-19の重症化リスクにつながるおそれがあります。このように、NAC補給は、グルタチオン濃度を高め、肺と気道の保護に役立つと考えられます。

NACは粘液修復剤です。NACは経口でも、病院で呼吸管を介しての使用でも大きな成功を収め、肺気腫、気管支炎、慢性喘息、嚢胞性線維症といった急性および慢性肺疾患で、粘液が非効率または濃い患者の治療に役立っています。NACは、気管支分泌物の粘度低下を促進します。また、NACは、気道の繊毛が粘液を除去する能力を改善し、除去率を35%増加させることもわかっています。これらの効果の結果として、気道に障害があると、NACが気管支と肺の機能を改善し、咳を軽減し、血液中の酸素飽和度を改善する可能性があります。感染リスクを減らし、肺のグルタチオン濃度を高めるための摂取量は、1日500〜1000mgが目安です。粘液を薄めるのが目的の場合、通常の摂取量は200mgを1日3〜4回です。

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