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ケトン食とは?ケトン食療法について知っておきたい知識を医師が解説

著者:エリック・マドリッド医学博士

この記事の内容:


人体には、グルコース(ブドウ糖)と脂肪酸という2つの燃料源があります。脂肪(脂質)はエネルギー源ですが、体内に過剰に蓄積されると体重増加につながります。グルコースを利用するのではなく、こちらの脂質を効率良くエネルギー源に変換する方法を身につけることが減量の秘訣です。この発想こそが、ここ数年で人気が高まっているケトン食の基礎というわけです。

効果的な抗てんかん薬や糖尿病治療薬が登場する以前、発作を予防するだけでなく、2型糖尿病の管理にも使用された食事療法が(高脂質、タンパク質適量、単純炭水化物と糖質少量の)ケトン食だったのです。現在では、毎日の食事で単純炭水化物と総糖質量を抑えると健康効果が期待できることがあらためて注目され、広く知られるようになりました。

ケトン食はどんな人に適しているのでしょう?

私の診療経験では、以下のような疾患の患者にケトン食の効果が現れています。なお、私の所見は科学的研究で裏付けられているものです。

  • 高血圧
  • 糖尿病(1型・2型ともに)
  • 高炎症(CRP=C反応性蛋白が高値)
  • 高コレステロール、高中性脂肪、低HDL(善玉)コレステロール
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
  • 肥満症
  • 炎症性腸疾患
  • 発作性疾患
  • 片頭痛
  • アルツハイマー病
  • パーキンソン病

注:重要なのは、栄養ケトーシスとケトアシドーシスを区別することです。栄養ケトーシスなら、グルコース濃度とインスリン濃度が正常でありながら、血中ケトン濃度が治療濃度に達します。これがケトン食の作用です。

一方、糖尿病性ケトアシドーシスの場合は、血中ケトン濃度が理想値の10倍に跳ね上がるばかりか、グルコース濃度が著しく上昇し、インスリン濃度が低下します。こうなると命に関わることもあります。

‌‌‌‌ケトン食とは?

ケトジェニック・ダイエットすなわちケトン食は、健康的な脂質を積極的に摂取し、タンパク質を適量摂り、炭水化物を抑えた食事療法です。この食事療法は、少なくとも数日間にわたって単純炭水化物または糖質の摂取量を1日30〜50g未満に抑えると、体が脂肪をケトンに変換し、エネルギーに利用しはじめるという考え方に基づいています。

ケトン食を実践する上で私がお勧めしたいのは、緑色葉野菜を多く摂ることです。葉野菜は低カロリーのため、食事全体の4分の1を占めるほどたっぷり摂ると良いでしょう。それでも食事の総カロリーの5%に過ぎません。例えば、ホウレンソウは2食分でもわずか20カロリーです。

ケトン食療法と定義される1日の摂取カロリーの比率は以下の通りです。

‌‌‌‌ケトン食のメリット

「Keto Clarity」の著書で知られるジミー・ムーア氏によると、ケトン食実践者の多くに以下の効果が見られます。

  • 空腹感及び食欲抑制
  • 精神的な明晰さ
  • 体重減少
  • 睡眠改善
  • 血糖値の安定化とインスリン感受性の向上
  • 血圧低下
  • エネルギー改善
  • 胸焼け軽減
  • 免疫力の向上と生物学的老化の進行抑制
  • 記憶力改善
  • 肌の状態改善
  • 不安の低減
  • 自己規律の向上

マクロ栄養素とは?

ビタミンとミネラルが微量栄養素とされる一方、あらゆる食物はマクロ(多量)栄養素と呼ばれる次の三大栄養素で構成されています。

  • 炭水化物
  • 脂質
  • タンパク質

第一のマクロ栄養素である炭水化物は、単純炭水化物と複合炭水化物のいずれかに分類されます。

単純炭水化物:単純炭水化物は複合炭水化物と比較して糖鎖が短いのが特徴です。消化された単純炭水化物は腸で吸収されやすいため、複合炭水化物よりも血糖値が急激に上昇します。また、単純炭水化物を摂取すると、複合炭水化物に比べてインスリンの分泌量が増加することから、体重増加にもつながります。

単純炭水化物の摂取後はすぐに空腹感を覚えやすく、ますます単純炭水化物を食べたい衝動に駆られることもあります。

ケトン食と相反する単純炭水化物の例:

  • 加工食品
  • ジャガイモ
  • パン
  • ケーキ
  • トルティーヤ
  • ペストリー(菓子パンなど)
  • 糖分の多い果物

複合炭水化物: 複合炭水化物は単純炭水化物よりも長い糖鎖で構成されています。そのため消化に時間がかかり、単純炭水化物のように血糖値を上げることがありません。つまり、(食後血糖値の上昇度を示す)グリセミック指数(GI値)が低く、単純炭水化物よりも満腹感が長持ちするというわけです。複合炭水化物のほとんどは、ケトン食でも制限なく摂取することができます。例外は豆類で、複合炭水化物でありながらケトン食では認められていません。

複合炭水化物の例:

  • キャベツ
  • 芽キャベツ
  • ブロッコリー
  • ケール
  • レタス
  • タマネギ
  • ホウレンソウ

脂質:第二のマクロ栄養素は脂質です。ケトン食では、1日の摂取カロリーの60〜70%が脂質で占められます。通説に反して、食物に含まれるあらゆる脂質(脂肪分)が体に悪いということはありません。健康的な脂質を積極的に摂ることで、脂肪燃焼の効率が高まります。さらに、私自身を含む多くの医師は、脂質摂取が必ずしも肥満につながるわけではないと考えています。むしろ糖分摂取の方が大きな原因と言えるようです。

脂質は代謝全般に重要な役割を果たしています。ただし、脂質には「体に良い脂質」と言われるものもあれば、「悪い脂質」というレッテルを貼られているものもあります。そのうち「悪い脂質」とされる飽和脂肪の危険性が近年問題視されています。

脂質の例:

タンパク質:第3のマクロ栄養素はタンパク質です。アミノ酸で構成され、摂取されるとアミノ酸に分解されるタンパク質は、体内で大きな役割を担う必須栄養素です。髪、爪、酵素、ホルモンの基礎となるタンパク質は、骨、軟骨、腱、筋肉、皮膚の重要な構成要素でもあります。

タンパク質の例:

‌‌‌‌問題は糖にあり

現状として、エネルギー源をグルコース(糖)に頼りきっている人がほとんどです。糖分や単純炭水化物を多く含む食品を摂るとグルコースが摂取されます。単純炭水化物はグルコースに分解されるため、体内で燃焼しきれないほど過剰なグルコースを摂取すると余分な糖が蓄積され、最終的には脂肪となります。一般に、どの果物を食べても大差ないと思われがちですが決してそうではなく、糖分の摂取制限が必要な方は糖分の多い果物をなるべく控えることが大切です。

ちなみに、今から200年前は平均的な個人1人あたりの糖分摂取量が年間3.2kgでした。その平均摂取量が、2020年までに年間47~55kgに跳ね上がりました。

糖分の過剰摂取は、肥満、高コレステロール、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、高血圧といった慢性疾患など、世界中で見られる様々な疾患の一因と言っても過言ではないでしょう。

‌‌‌‌ケトン食療法の作用メカニズム

脂肪組織が遊離脂肪酸に分解されるとケトーシスが起こります。これらの脂肪酸は肝臓に輸送され、そこで代替燃料源として機能する分子「ケトン」に変換されます。代表的なケトンには、β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンがあります。

私はよく患者に、ケトンは体にとってハイオクタン燃料のようなものであると説明しています。ケトンは、糖分摂取量を減らすことで脳をはじめ全身が利用できる、いわば「燃焼による排出物質が少ない」燃料というわけです。糖分とは対照的に、ケトンを燃料として利用すると、細胞の酸化損傷を抑えることができます。

ケトーシスの意味は人によってさまざまです。私が支持するケトーシスダイエットは、緑色葉野菜が豊富で、健康に良い脂質、魚介類、牛・豚・鶏肉、卵、チーズ、ナッツ類種子類が含まれるものです。何にでも言えることですが、ほどほどが肝心です。一般に、菓子類、砂糖、パン、米、トルティーヤ、ジャガイモ、豆類をはじめ、その他の加工食品もなるべく控えましょう。ご心配なく。美味しさ抜群のケトンスナックケトンバーがあれば食事制限がきっと楽になるでしょう。

ケトン食は万人向きではないかもしれませんが、他の低カロリー食で体重管理や糖尿病管理がうまく行かなかったという方に絶好の選択肢と言えるかもしれません。

炭水化物耐性が低い (またはインスリン抵抗性がある) 人や血糖値管理に悩む人にも、炭水化物の摂取量を抑え、健康的な脂質を豊富に取り入れた食事療法で大きな効果が現れています。

私自身も2017年の夏、ケトン食に取りかかりました。当時、私の体重は過去最高の112kgに達していました。身長192cmの私でもさすがに太り過ぎで、自分の服が合わなくなったり、寝ても疲れが取れないのが悩みでした。しかも、過去に怪我をしたわけでもないのに、膝や背中に痛みを感じていました。

そんな私が低炭水化物のライフスタイルに切り替えたところ、90日で14kg痩せたのです。余分な体重を落とした後、筋肉を鍛えようと定期的なトレーニングを始めたとはいえ、激しい運動をしなくてもこれだけの成果が出せました。

この低炭水化物療法のおかげで、10年以上前から減らしたくて悪戦苦闘していた体重をすっきり落とすことができました。私の成果を目にした患者からの問い合わせが増えたため、この食事療法を患者にも適用するようになったというわけです。

あれから数年たった今も私の体重は増えることなく、同じ療法を実践した多数の患者の血圧、糖尿病、減量、睡眠にも大幅な改善が見られました。そればかりか、睡眠時無呼吸症候群が改善したという患者も複数います。さらには、多くの2型糖尿病患者のインスリン離脱に成功し、糖尿病治療薬の服用を停止することができた他、服薬数が大幅に減少した例も少なくありません。

 : 主治医の指示なしに服薬を中止しないで下さい。)

ケトン食を実践する方にお勧めのサプリメント

  1. 外因性ケトン - マグネシウム塩とナトリウム塩としてβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)含有。
  2. 中鎖脂肪酸/中鎖トリグリセリド (MCT) オイル - ケトンに変換しやすい優れた脂質源。MCTコーヒーフレッシュは、多くのケトン食実践者が愛用しています。
  3. マルチビタミン - 良質なマルチビタミンなら、子供から大人までほとんどの方にお勧めできます。
  4. マグネシウム - マグネシウムを十分摂取することで筋けいれんの予防を図れます。
  5. ビタミンD – 全人口の5人に4人がビタミンD欠乏症です。大半の人に、生涯にわたって1日2000~5000IUのビタミンD補給が推奨されています。
  6. 葉野菜のサプリメントおよびパウダー – 食事で栄養所要量を満たすのが一番ですが、確実に抗酸化物質を摂取するならこれらのサプリメントやパウダーが便利です。
  7. ココナッツオイルやアボカドオイルを使った料理 - 健康的な脂質源であるこれらのオイルは野菜炒めに最適です。
  8. オメガ3脂肪酸 - 優れた抗炎症作用を発揮します。
  9. ホエイプロテイン大豆プロテインエンドウプロテイン - ミールリプレイスメント(代替食)に最適で、スムージーに加えても美味しくいただけます。
  10. ゴーヤシナモンピコリン酸クロムベルベリン- いずれも、特にインスリン抵抗性のある方にお勧めします。

参考文献:

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