注意力の持続時間を短縮させたり、物事に集中して取り組む精神力を下げるような要因があると集中力が続かなくなります。例えば、ストレス、病気、食事、薬剤、栄養欠乏、年齢などは、いずれも集中力や認知能力に大きな影響を与える要因と言えます。

集中力を低下させやすいストレスの実例としては、複数育児や高齢の親の介護をはじめ、ストレスの多い仕事や失業、世界情勢への不安、パンデミック禍への対応疲れなどが挙げられるでしょう。

治療や不安が原因で集中力に直接影響する病気が診断されると、いかに多くの疾患が集中力や思考力に影響を及ぼしているかがわかります。その一例として、ブレインフォグ(脳霧、頭のモヤモヤ)のような副作用を引き起こしがちな薬剤や治療法が多数あります。また、特定のビタミンやミネラルといった栄養素が不足している場合も集中力や注意力が損なわれますし、加齢に伴い集中力などの認知能力が低下する傾向も多く見られます。

とはいえ、ご心配なく。幸い、自然界には、集中力、注意力、認知機能に役立つ成分が数多く存在します。

集中力を高めるのに最適なサプリメント

積極的に取り組むことで脳力の改善が図れることを踏まえ、集中力と注意力を高める上で特にお勧めしたいサプリメントをご紹介しましょう。

これらはヌートロピック(向知性)サプリメントと呼ばれ、記憶力、注意力、認知能力といった脳機能に効果を発揮するだけでなく、加齢による脳機能低下を抑える働きも期待できます。

1. レスベラトロール

レスベラトロールは、ポリフェノールと呼ばれる化合物群の一種で、抗酸化物質として作用して有害なフリーラジカルから体を保護します。このレスベラトロールは、赤ブドウの果皮や赤ワインの他、ピーナッツ、ピスタチオ、ブルーベリー、クランベリーなどに含まれています。

認知機能のサポートとして、レスベラトロールのサプリメントを取り入れてみてはいかがでしょうか。ある研究で、レスベラトロールは、記憶に関わる脳領域である海馬をサポートすることで、加齢による認知機能の低下を防ぐのに役立つことがわかりました。

2. ホスファチジルセリン

ホスファチジルセリンを1日最大400mg摂取した人は記憶力と思考力が向上したという研究結果がある他、認知障害のある人の記憶機能がホスファチジルセリン補給後に改善されたという研究報告もあります。

リン脂質の一種であるホスファチジルセリンは、体の細胞膜を構成する重要な成分です。ストレスに反応すると体内でエピネフリン(別名アドレナリン)とノルエピネフリン(ノルアドレナリン)が放出されますが、ホスファチジルセリンは脳内でこれらの神経伝達物質の調節に関与することで、気分の安定につながり、ストレス、抑うつ、不安などの症状を抑えやすくします。

つまり、ホスファチジルセリンのサプリメントで思考力が向上し、ストレスや不安が和らぐため、集中力が大幅に向上するという仕組みです。

3. イチョウ

中国原産のイチョウは、何千年もの昔から脳の働きをサポートする植物として利用されてきました。学名(Ginkgo biloba)の由来となった銀杏(ぎんきょう)とも呼ばれるイチョウは、脳への血流を促進することから、集中力や記憶力などの認知能力を向上させることが明らかになっています。

イチョウのサプリメントを摂取することで、加齢に伴う認知機能の低下を改善できるという研究結果があり、他にも、健康な中高年がイチョウのサプリメントを摂取したところ、記憶力と思考力が向上したという研究が報告されています。

4. イワベンケイ

イワベンケイは、ヨーロッパの北極圏の他、アジアや北米に広く自生する多年草です。

学名のロディオラ・ロゼア(Rhodiola rosea)としても知られるイワベンケイは、疲労感を軽減して脳機能と精神処理能力を向上させることが有望視されています。

肉体的・精神的ストレスに対する体の抵抗力と適応力を高めるアダプトゲンハーブであるイワベンケイには軽度の刺激作用があり、ストレスへの対応力と適応力を向上させながら、エネルギーを増やして集中力を高める働きがあります。

ある研究では、慢性疲労症状のある参加者がイワベンケイを1日400mg摂取したところ、わずか1週間後には、集中力、生活の質、気分、疲労感、ストレス症状に大幅な改善が見られ、8週間の研究期間中さらに改善し続けました。

5. バコパ

インド東部・南部の湿地帯に自生する匍匐(ほふく)性のハーブ(茎や枝が地面を這うように横に広がって育つ性質のハーブ)であるバコパ(学名 Bacopa monnieri)は、日本ではオトメアゼナと呼ばれる多年草です。古くからアーユルヴェーダ医学で使用されてきたバコパは、記憶力、学習能力、思考能力を高める効果があるようです。

バコパは、アルツハイマー病に関与する化学物質から脳細胞を保護するのに役立つことが研究で示されています。

他の研究では、バコパがADHD(注意欠陥・多動性障害)の症状を軽減する可能性があることがわかっています。バコパを摂取したADHDの小児患者は、プラセボと比較して、注意力、落ち着きのなさ、認知力が改善したことが明らかになりました。

イワベンケイと同じくアダプトゲンハーブとされるバコパは、ストレスや不安の軽減に役立つと考えられ、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの濃度を下げることで、不安症状を和らげながら、気分や集中力を向上させる可能性があります。

6. マカの根

マカの根は、脳組織の一部である下垂体と視床下部(ししょうかぶ)をサポートすることで集中力の向上に役立つと考えられている他、脳の活動を活発にして精神的なエネルギーを高めることもわかっています。

ペルー原産のマカは、古来、精力増強をはじめ、生殖能力やエネルギーを高めるために用いられてきました。標高4千メートル以上のアンデス山脈に自生するアブラナ科の野菜であり、ペルーの朝鮮人参とも呼ばれるマカは、ペルーで薬用として長い歴史があります。特によく使われるのは根の部分で、脳の機能や集中力を高める上で不可欠な栄養素がたっぷり含まれています。

ポリフェノールとビタミンB6を豊富に含むマカには、神経毒(神経系の働きを遮断する毒素)や神経炎症にさらされて傷ついた脳を保護する神経保護作用があります。マカに含まれるポリフェノールは記憶力、認知機能、学習能力の向上促進に役立ち、ビタミンB6は特定の神経伝達物質や化学伝達物質の脳内生成に欠かせません。ビタミンB6が欠乏すると、認知症や認知機能低下につながる可能性があります。

7. L-テアニン

緑茶を筆頭に、紅茶や白茶(主に中国福建省産の弱発酵茶)の他、キノコ類にも含まれるL-テアニンは、中高年の注意力や作業記憶を向上させることが明らかになっているアミノ酸の一種です。

L-テアニンは注意深く落ち着いた覚醒状態に導くと言われており、心身の健康にプラス効果をもたらし、ストレスに伴って上昇しやすい心拍数と血圧を下げたり、不安症状を和らげるといった効果が期待できます。

抹茶も優れたL-テアニンの供給源であり、あらゆる種類の緑茶の中でL-テアニンの含有量が最も高く、ストレスを緩和する作用があることが知られています。

8. MCT

MCT(中鎖脂肪酸、中鎖トリグリセリド)は、脳を活性化させる効果があるとして広く研究されています。MCTは、炭素原子が6~12個(脂肪酸に含まれる炭素は鎖のように連なっており、炭素数が6以下のものは短鎖脂肪酸、8~10は中鎖脂肪酸、12以上は長鎖脂肪酸と分類)の脂肪酸です。素早く分解されたMCTは肝臓に送られ、そこでケトン体(体内の脂肪が分解されてできる産物で、エネルギー源として利用される)に変換されると考えられます。ケトン体は血液脳関門(血液から脳組織への物質の移動を制限して細菌やウイルスなどを防ぐ関所のような仕組み)を通過できるため、脳にとって望ましい燃料源である炭水化物が利用できない場合の代替エネルギー源となります。

こうした研究の一つで、MCTのサプリメントが瀕死のニューロン(神経細胞)にエネルギーを供給し、脳細胞の生存維持に役立つ可能性があることが示されました。これは、特にアルツハイマー病患者にとって朗報と言えるでしょう。

また、別の研究では、MCTサプリメントを摂取することで脳内エネルギーが9%増加することが実証されました。さらに、MCTには抗酸化作用や抗ストレス作用もあると言われています。

摂取量については、MCTサプリメントの摂取に加えて、大さじ2(30ml)のココナッツオイルを摂れば十分でしょう。

まとめ

日々の生活では、さまざまなことに気を取られてしまい、目の前の課題に集中して取り組めないことも多々あります。ましてや、病気や栄養欠乏といった問題が重なるとさらに集中できなくなるでしょう。

幸い、脳力と集中力を高めるために実践できる対策がいくつかあります。なお、どのサプリメントにも作用機序(効果を発揮する仕組み)があるため、各個人の生活習慣や精神サポートのニーズに合ったものを選ぶことが大切です。

特に、妊娠中・授乳中の方をはじめ、他の薬剤を服用中の方や何らかの治療を受けている方は、新しいサプリメントを取り入れる前に必ずかかりつけ医にご相談ください。

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