もちろん、日焼け止めを塗るのは肌のことを考えているからでしょう。ところが、日焼け止めに含まれる成分の中には、肌や健康全般だけでなく、環境にも害を与えるものがあります。そこで今回は、注意すべき日焼け止めの成分と、それに代わって選びたい安全な成分を簡単にまとめてみました。

‌‌‌‌海に優しい日焼け止めを選ぶ

日焼け止めを塗った肌で海に入ると、肌から流れ落ちた製品の一部が海中を漂い、サンゴをはじめ、藻類、貝類、ウニ、魚、イルカといった海洋動植物に吸収されてしまいます。研究では、多くの日焼け止めに含まれる化学物質のうち10種類が、海洋生物の成長を妨げたり、胎児や免疫系に悪影響を及ぼすおそれがあることが明らかになっています。アメリカ海洋大気庁によると、これらの物質は、オキシベンゾン、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-8、オクチルジメチル-p-アミノ安息香酸(別名 OD-PABAまたはパディメートO)、4-メチルベンジリデンカンファー、3-ベンジリデンカンファー、ナノ二酸化チタン、ナノ酸化亜鉛、オクチノキサート、オクトクリレンです。

このリストに含まれる化学物質についてはさらなる研究が必要ですが、このうちオキシベンゾンとオクチノキサートが海の生物にとって危険であることは間違いないというのが大方の見方です。ただ、これらの化学物質は、別の名称で表示されていることがあるため、見分けがつきにくいのが難点です。例えば、オキシベンゾンがBP-3またはベンゾフェノン-3などと表記されたり、オクチノキサートはOMCやメトキシケイ皮酸エチルヘキシル(またはメトキシケイヒ酸エチルヘキシル)と表示されることもあります。このような名前を覚えるのは大変ですが、幸い、リーフセーフ(サンゴ礁に優しい)やオーシャンセーフ(海に優しい)と書かれた日焼け止めの大半に、この2つの成分は含まれていません。ただし、このような表示の使用に関する確固たる規制はなく、メーカーによっては不正に使用している場合もあるため、ラベルをよく読んで確認することが大切です。

それでも、ラベルを読むのが面倒だという方や、重要な成分を一つだけ知りたいという方には、酸化亜鉛を主成分とする海とサンゴ礁に優しい日焼け止めをお勧めしています。亜鉛のようなミネラル系の日焼け止めは、上記のような化学添加物が含まれていない傾向があり、人体にも安全だからです。環境専門家の多くは、なるべくナノ粒子を避けることを推奨しています。これは、ミネラルを小さくした超微粒子(ナノ粒子)が海洋動物に影響を与えるかどうかがまだはっきりしないためで、私も賛同しています。そのため、できれば通常のノンナノ(非ナノ化)の亜鉛を選ぶのが賢明でしょう。

‌‌人体に安全な日焼け止め成分

米国食品医薬品局(FDA)が安全な日焼け止め成分として認めているのは、酸化亜鉛と二酸化チタンの2つだけだと言うと、私のクライアントのほとんどが驚きます。

この2種類のミネラル成分が上記の「海に優しい成分」で登場したことにお気づきの方は、決して見間違いではありません。海洋動物も人間も、基本的な生理・生化学機能は同じであるため、海洋動物に安全な成分は、概して人間にも安全です。一例を挙げると、海洋哺乳類に影響を及ぼす内分泌かく乱物質は、ヒトホルモンにも影響し、がんやエストロゲンシグナル伝達異常などの問題を引き起こす可能性があります。自分の健康を気遣うことは、地球上の他の生物に配慮することでもあり、大変良いことだと思います。

FDAが人体への影響について現在も調査中の日焼け止め成分は多数あり、シノキサート、ジオキシベンゾン、エンスリゾール、ホモサレート、メラジメート、オクチノキサート、オクチサレート、オクトクリレン、オクチルジメチル-p-アミノ安息香酸(別名 パディメートO)、スリソベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾンなどがそれにあたります。「調査中」とは、これらの成分が安全であるかどうかを判断する前に、世界中の研究者が調査し、その結果を公表するのをFDAが待っているという状況です。とはいえ、このプロセスには何十年もかかることがあるため、私がお勧めしたいのは、将来FDAが有害と判断する可能性のある製品を今使用するよりも、既に安全性が確認されている製品を選ぶことです。

さらに、FDAは、日焼け止めに含まれる2つの成分であるアミノ安息香酸(PABA)とサリチル酸トロラミンは、いかなる量でも安全とは言えないと断定しています。念のため、使用中の日焼け止めにこの2成分が含まれていないか確かめ、まだ洗面所などに残っている場合は処分しましょう。

FDAが承認した安全な亜鉛系とチタン系の日焼け止めは、ミネラル系の日焼け止めとして知られており、どちらも紫外線を肌から遠ざけるように反射させる、いわゆる紫外線散乱剤としてUVカット効果を発揮します。亜鉛はミネラルの一種で、栄養素として人体にでさまざまな用途に利用されるため、できればチタン系よりも亜鉛系の日焼け止めをお勧めします。一方、チタンが人体で栄養として利用されることは報告されていません。

日焼け止めは、体用と顔用の2種類を用意して使い分けると良いでしょう。顔用の日焼け止め体用の日焼け止めよりも肌に優しく軽い感触のものが一般的で、通常は肌に着色したり、上にメイクを重ねても化粧品の色を変えたりするような成分は含まれていません。また、顔専用の日焼け止めの方が毛穴を詰まらせにくいと言われているため、ニキビ肌にも効果的でしょう。中には、リキッドファンデーション化粧下地の他、BBクリーム&CCクリームもSPF入りのものが多く、一つの製品でスキンケアとメイクが一度にできて便利です。

お子様の日焼け止めを購入するなら、ベビー用の日焼け止めか子供用の日焼け止めを選びましょう。大人向けのスポーツ用日焼け止めやローションに比べて、肌に優しく安全な成分が含まれているものです。小さなお子様に限らず、香料をはじめ、着色料や染料を使った製品に敏感な方は、青少年から大人まで、このようなベビー処方を使ってみてはいかがでしょうか。さらに、ベビー用日焼け止めを買って夏の行楽などに持って行けば、これ一つで家族全員が使えるというメリットもあります。

‌‌‌‌動物実験していない日焼け止め

人間が日焼け止めを使うことで影響を受けるのは海の動物だけではありません。製品を市場に出す前に動物実験を行っている企業もあれば、別の研究方法で製品の安全性検査を実施している企業もあります。そこで、なるべくLeaping Bunny(リーピングバニー)やCruelty-Free International(クルエルティフリー・インターナショナル)などの認証を取得した製品を探しましょう。

FDAは 「クルエルティフリー(動物実験なし)」や「動物実験を行っていない」といった言葉を規制していないため、その真偽にかかわらず、どのメーカーでもこのような謳い文句をラベルに記載できるのです。一方、Leaping BunnyやCruelty-Free Internationalの認証は任意のものであり、この認証を取得するには、製造工程の全段階で一切動物実験を行わないなど、一定の基準を満たすことが求められます。そのため、動物実験を最小限に抑えることを重視するなら、ラベルにこれらの認証マークがついている製品を選びましょう。

‌‌‌‌無香料製品の注意点

化粧品メーカーの中には、製品に特定の香りをつけるために、刺激の強い、場合によっては有毒な化学物質を使用する企業がありますが、その物質を隠す目的で香料という言葉を使うことがあります。そこで、私はクライアントに、香料という言葉が記載されておらず、自分が知っている花や香りの良い物質の名前が入った製品を選ぶように勧めています。例えば、ラベンダー、レモングラス、ペパーミント、ローズマリー、カモミールなどがそうです。特に、敏感肌の方はどんなタイプの添加香料も身につけないように心がけ、敏感肌用または無香料の日焼け止めを使うようにしましょう。

‌‌‌‌日焼け止めについての重要ポイント

どんな日焼け止めでも重度の日焼けよりは安全

日焼け止めについて語る上で、日焼けの危険性に触れないわけにはいきません。重度の日焼け(皮膚が赤く火照って炎症を起こした状態)は、死に至ることもある皮膚がんの一種、メラノーマ発症の主要危険因子です。子供の頃からの日焼けが多い人ほど、このタイプのがんになるリスクが高くなります。つまり、こうした重度の日焼けを防ぐことが先決であり、それができるのであれば、たとえ理想的な成分が含まれていなくても、日焼け止めを使用する価値は十分にあります。

日焼け止めクリームは、あくまでも毎日の日焼け対策の一部

日焼け止めを塗るだけでなく、UVカット効果のある衣類などを取り入れたり、生活習慣を見直すことで、より効果的で安全かつ環境に配慮した日焼け対策が実践できるようになります。

この記事を参考に、今年の夏は数ある製品の中から自信を持って体にも地球にも優しい日焼け止めを選んでいただければ幸いです。有害とされる香料、化学物質、製造工程を避けることで、太陽の光を浴びながらも健康を高めていけるでしょう。

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