スピルリナとクロレラ :健康効果に優れた藻類

著者:エリック・マドリッド医学博士
この記事の内容 :
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クロレラ
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クロレラの抗酸化効果
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クロレラと血圧
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クロレラとコレステロール
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クロレラと血糖
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クロレラと体からの毒素除去
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スピルリナ
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スピルリナの健康効果
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スピルリナの抗酸化力
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スピルリナ、コレステロール、血圧
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スピルリナと糖尿病管理
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スピルリナと関節炎の抗炎症補助
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スピルリナと体の解毒
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スピルリナ、アルツハイマー病、パーキンソン病
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スピルリナと白内障予防
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スピルリナと線維筋痛
この名を聞くと、よどんだ水の中で成長するねばねばした生物のイメージが思い浮かぶかもしれません。それは“藻類”のことですが、実際には、世界中の多くの人々が口にする植物です。中でも、最もよく知られた2つの形であるクロレラとスピルリナは、一般にカプセル製剤と粉末製剤で販売され、数多くの健康効果が見られます。
クロレラ
クロレラ単細胞性緑藻類で、以下のビタミン、ミネラル、栄養素を豊富に含んでいます :
クロレラの抗酸化効果
酸化とは、加齢と共に慢性疾患を発症する過程です。喫煙やアルコールの大量摂取といった特定の行動が過剰酸化の原因となり、老化を早めます。理論的には、この過程を遅らせることで、多くの健康効果が期待できます。
酸化防止に必要な栄養を体に供給する上で、健康的な食事は不可欠です。クロレラもその一翼を担っています。Nutrition誌に発表された2010年の研究 結果は、“… クロレラの抗酸化作用を裏付けるものであり、クロレラが健康的な食事の主要要素として取り入れられるべき重要な天然食品サプリメントであることを示しています。” 1995年の 研究でも、クロレラの抗酸化性が実証されました。
クロレラと血圧
高血圧は、心臓発作、腎疾患、脳卒中の主要危険因子です。血圧を管理する上で、食事と運動は重要な役割を果たしますが、処方薬に適切な形で頼る患者も少なくありません。
ただし、できるだけ自然な療法を望む方にとって、クロレラは有益性が期待できるサプリメントです。ラットを用いた2006年の研究では、クロレラが血圧降下に役立つ可能性があることが示されました。この効果は、同様の研究で血圧降下特性が示された1978年以来知られているものです。最近では、Clinical Nutrition誌の2018年の研究で、クロレラ補給が被験者の血圧降下に役立つ可能性があることが示されました。高血圧の方は、服薬調整を行う前に主治医とよく話し合った上で判断する必要があります。
クロレラとコレステロール
高コレステロールは心臓発作の危険因子であると考えられています。このリスク軽減を目指す方にとって、最適なコレステロール値を達成することは大変重要であり、一般に抗コレステロール薬が処方されます。
サプリメントとして紅麹米の他、クロレラもコレステロール低下補助に摂取されています。 クロレラは、Nutrition Journal誌の2017年の研究によると、健康的なコレステロール値の維持に役立つと考えられます。さらに、Clinical Nutrition誌に発表された2018年の研究では、クロレラ補給が総コレステロール値とトリグリセリド値の低下にも役立つ可能性があることが示されました。
クロレラと血糖
前糖尿病および糖尿病は、世界人口の平均体重が増えるにつれて顕著になっています。高血糖値は、心疾患、脳卒中、認知症のリスクを高めます。 糖分と単純炭水化物の摂取量を減らすことが重要であり、食事を厳重に監視する必要があります。以前の記事で、私が考察したのは自然な糖尿病対策です。その際、クロレラについては言及しませんでしたが、2015年の研究では、クロレラのサプリメントが被験者のグルコース濃度低下に役立つ可能性があることが示されました。
クロレラと体からの毒素除去
毒素の蓄積を防ぐには、汚染した食物や水を避けることが大切です。加えて、毒素を除去する体の能力も非常に重要です。このようにクロレラが毒素除去に役立つ可能性があるという考えは、Drug and Chemical Toxicity誌の1984年の研究以来調査されてきました。他にもNAC(N-アセチルシステイン)などのサプリメントも有効性が期待できます。
スピルリナ
スピルリナは、多くの人にスーパーフードと見なされています。藍藻類に属すスピルリナは、消化しやすい栄養補助食品です。かつてのスペインの征服者らの記録によると、メキシコのテスココ湖に生息したスピルリナは、何世紀も前にアステカ人から”tecuilati”と呼ばれ、愛用されていました。
スピルリナには、以下のビタミンとミネラルが含まれています:
- 亜鉛 - 皮膚の健康、強力な免疫システム、記憶機能に重要。
- ビタミンB群 - 神経系および心臓の健康に重要。ベジタリアン食を実践する方に最適な選択肢となります。というのも、ビタミンB12が十分でないことが多いためです。スピルリナを毎日補給することで、ビタミンB12の1日の推奨許容量(RDA)の最大60%を供給することができます。
- γリノレン酸 (GLA) - 多くの野菜に含まれる必須脂肪酸。これはオメガ6 オイルで、抗炎症効果があります。
スピルリナの健康効果
スピルリナはプレバイオティクスとして作用し、腸内の他の有益細菌の増殖を助けます。また、体の組織をアルカリ化(pH値を最適化)するのに役立つクロロフィルも含まれています。
スピルリナの抗酸化力
スピルリナに含まれる化合物には、クロロフィル、β-カロテン、ゼアキサンチンフィコシアニンなどがあり、これらは強力な抗酸化物質で、慢性疾患の主な原因であるフリーラジカルが引き起こす酸化損傷を中和することができます。体がこのプロセスから身を守る方法を見つけることが、疾患予防に不可欠です。
スピルリナ、コレステロール、血圧
高コレステロールは、心疾患の危険因子です。食事を変えたり運動をしてもコレステロール値が十分に低下しない場合、医師がコレステロール低下薬を処方します。スピルリナは、コレステロール低下武器庫の兵器をもう一つ提供します。メキシコの住民を対象とした2008年の研究では、藻類を摂取した被験者のコレステロール値と血圧をスピルリナが低下させる可能性があることが示されました。
さらに最近では、2014年の研究で、スピルリナを1日1g、4カ月間にわたって摂取したところ、総コレステロール値が16%低下したことが示されました。スピルリナは、トリグリセリド(脂肪)とLDL(悪玉)コレステロールも低下させました。2015年の研究では、スピルリナを補給する被験者のコレステロール低下効果が確認されました。
スピルリナと糖尿病管理
2型糖尿病は、心疾患、脳卒中、腎疾患、記憶障害の主な原因です。 2型糖尿病患者は、食事に気をつけて運動することで、血糖値を管理できます。さらなる治療が必要な患者には、一般に経口薬が処方されます。スピルリナは、毎日の食習慣に加えることもできる便利なサプリメントです。
動物モデルを用いた研究では、スピルリナが、血糖値を抑える他、糖尿病性腎疾患といった糖尿病合併症の予防に役立つことが示されました。別の研究では、局所使用のスピルリナが糖尿病性創傷の治療に有用であることが示されました。ただし、一般使用される前に、さらなる研究が必要です。
スピルリナと関節炎の抗炎症補助
関節炎の英語名Arthritisは、ギリシャ語で関節を意味する「arthron」と、炎症を意味するラテン語「itis」を起源とします。関節炎は、文字通り「関節の炎症」を指します。”関節炎には主に2種類あります。最も一般的なのは変形性関節症(最大95%)で、加齢と共に発生します。2番目の関節炎で、はるかに少ない症状が、自己免疫疾患である関節リウマチ(最大5%)です。
2006年の研究では、スピルリナには抗炎症特性があり、関節炎関連のあらゆる痛みを軽減する可能性が示されました。最近の2015年の研究では、イブプロフェンやナプロキセンなどのNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)の標的となる酵素COX-2の血中濃度を下げることで(しかも薬剤副作用なしで)、スピルリナが炎症を減少させるという同様の結果が示されました。
スピルリナと体の解毒
スピルリナは、体内の重金属を解毒するのに役立つ可能性があります。。ヒ素は、神経疾患や糖尿病のリスク増加の原因とされますが、飲料水中に高濃度のヒ素が検出されたインドの研究によると、スピルリナの健康特性を利用して体内からヒ素を解毒することができます。
スピルリナ、アルツハイマー病、パーキンソン病
人口の高齢化に伴い、神経変性疾患がますます一般化しています。健康的な食事や運動の他、単語検索やクロスワードパズルなどの脳トレーニングパズルはいずれも、老化する脳の認知障害予防において、全体的アプローチの一環として用いることができます。
スピルリナも一翼を担う可能性があります。Journal of Alzheimer's Disease誌の2010年の研究では、クルクミン他の数種類のサプリメントに加え、アルツハイマー病の原因と考えられるアミロイド斑(老人斑)の形成をスピルリナが予防する可能性があることが示されました。
スピルリナと白内障予防
加齢と共に、酸化により目の水晶体が濁ってくると発生する、白内障形成のリスクが高くなります。2013年と2014年の研究では、スピルリナの有効成分であるフィコシアニンが、白内障形成の予防に役立つ可能性が示されています。予防こそが最善の治療です!
スピルリナと線維筋痛
一般に、びまん性疼痛や筋圧痛のある患者に、他の原因が見つからない場合、線維筋痛症と診断されます。男性より女性が罹患しやすい傾向にあります。多くの場合、“リーキーガット” が原因であることが考えられます。ある小規模研究では、スピルリナが線維筋痛症の症状緩和に役立つ可能性が示されました。これはおそらく、プレバイオティクス(腸の善玉菌の栄養)能力と体の解毒力によるものです。
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