睡眠不足が気分に悪影響を及ぼすことは周知の事実ですが、免疫の健康へも左右することは意外と知られていないかもしれません。免疫防御力は夜間にピークを迎えるため、細胞を修復するためにも、夜は最適な方法で体を休ませてあげたいものです。免疫力アップに役立ち、気持ちを落ち着かせるおやすみ前の習慣は、最適な健康づくりの基礎となるでしょう。

睡眠中に「再起動」する免疫系の仕組み

睡眠時の体は、細胞の修復モードに入っている状態です。この状態で、体はその日に溜まったストレスを取り除き、不要となった酸化粒子を除去しようと努めます。また、睡眠中は、免疫系を保護することで知られる特殊なサイトカインが生成されます。睡眠が十分にとれていないと、免疫系にとって強い味方であるサイトカインや感染防御抗体生成の効率が落ちてしまい、その日に接触した可能性のあるウイルスを撃退できなくなります。

一方、免疫力を回復させる質の良い睡眠中は、身体組織が癒され、脳や筋肉から毒素が排出されます。こうして一晩で得られる回復の度合いは、睡眠時間と質に直接関係しています。

科学研究では、毎日の習慣が心身の充実感の維持に役立つことが実証されています。疲れた心と体をほぐし、質の良い一貫した睡眠に導く習慣を段階を追って続けることで、感染症に負けない免疫力向上につながると考えられます。

現代に蔓延する睡眠障害

日中と夜の変化に体を対応させるシグナル伝達システムである自然な概日リズムは、心身の状態に大きく影響されます。例えば、心理的なレベルでは、「常にスイッチオン」の世界に脳をさらし続けると、休みなく動く脳内の思考をいざ瞬時にシャットダウンしようと思ってもなかなかできることではありません。そうなると、概日リズムの機能不良を引き起こしてしまいます。

言ってみれば、私達は常に考え過ぎているのです。就寝の直前になっても、押し寄せる情報過多の波を遮断しようと「考えて」いるほどです。脳はコンピュータのようにオフにすることはできませんが、それはつまり、毎晩ゆっくりと順を追って「考え過ぎ」モードから心身ともにデトックスできるように、意識的に心と体を整える必要があるということです。

こうした睡眠障害の蔓延の原因は、今日のテクノロジーの乱用があります。私達は日々、脳が処理しきれないほど多くの情報に接しているばかりか、あらゆる画面(コンピュータ、スマートフォン、タブレット、テレビ、ドッキングステーションなど)が放つ刺激的なブルーライトにもさらされています。このブルーライトは、概日リズムを制御するホルモンであるメラトニンの生成だけでなく、体内リズムを夜の環境に合わせる能力も阻害します。(注:日本国内のお客様へ:メラトニンを含む製品につきまして、iHerbでは2ヶ月分まで購入が可能です)そこで提案したいのが、意識して普段より早めにくつろぎモードに入ったり、同時に免疫力も高める具体的な方法で不眠症を防ぐことです。

5つのステップで完了の理想的な睡眠準備習慣

1. 自然の沈黙と暗闇を受け入れて味わう

心を落ち着かせる準備として最初にすることは、人工的な障害物を排除することです。ほとんどの照明を消し、携帯電話を片付けて雑音を取り除きます。こうすることで、自分を取り巻く自然界の力が存在することを実感できるようになるでしょう。さらに、周囲の環境に感謝するようになると、地に足がついて安定した状態に素早く神経系をリセットできるようになります。

身近にある自然に意識を向けてみましょう。例えば、ほのかなキャンドルの灯火やベッドフレームに使用されている木材でも良いのです。また、窓から外を眺めて、自分が身を置く環境の豊かさと呼吸ができる自然の恵みを見直してみましょう。

2. 脳と体をリラックスさせる

たとえ混沌とした状態にあっても、その気になれば誰もが簡単にリラックスできる能力を持ち合わせています。それには、物理的に動きを遅くして、ある一つのことに集中します。それは、「今あるこの瞬間」です。これを瞑想と呼ぶ方もいるでしょう。もちろん、どう呼んでもかまいません。姿勢もこだわることはありません。じっと座ったままでも、愛犬を撫でたり、歯を磨いたり、シャワーを浴びていても自分の存在を意識できます。

これは身体的自己を意識する行為であり、そうすることで受け入れる意識に気づいていくはずです。ただしその時、生活のことなど雑念が湧いてこないように気をつけ、今ある瞬間だけに神経を集中させることが大切です。この行為は単純に聞こえるようでいて、実は私達に与えられた最も有意義な特権の一つと言えます。以上、睡眠準備の第2ステップとして、体と脳をリラックスさせる5分を確保しましょう。

3. お茶と気持ちを落ち着かせる活動

本を読みながら温かいお茶を飲むことで神経が安らぎます。寝る前に温かい飲み物を摂ると、細胞に供給される酸素の流れを助け、血行を促進することが科学研究で明らかになっています。読書する行為そのものも、脳の創造性を刺激し、副交感神経系を活性化させます。この副交感神経系は、鎮静作用のある化学物質を放出します。

また、ハーブティーの中には、カモミールバレリアンルートゴツコラ(和名ツボクサ、学名Centella Asiatica)など、神経系を落ち着かせる効果のものがいくつかあります。これらのハーブの心地よい香りと風味でくつろぎモードが高まります。免疫力を高める有機ハチミツを少々お茶に加えるだけで、おやすみ前の強力な免疫強化剤になります。

ゴツコラに関する2020年9月の包括的レビューでは、このハーブが抗炎症性と抗酸化ストレス特性を示し、免疫力の向上に大きく期待できることがわかりました。さらに、その抗不安作用により過去何世紀にもわたって使用されてきたゴツコラですが、薬理学レビューでは、進行中の研究で「万能ハーブ」となる可能性もあるとされています。

科学的根拠を重んじる科学者気質の方には、安全かつ効果的な睡眠障害対処法として大規模な研究でもたびたび証明されているカモミールをお勧めします。このカモミールとバレリアンルートは睡眠改善用に調合されたハーブティーによく見られる組み合わせですが、この2種類のハーブが相乗的に作用して、就寝前のリラクゼーションを後押ししてくれます。

4. 眠りに誘う自然な香り

お友達のお宅を訪問したり、スパに足を踏み入れた瞬間、空気中に漂う蒸気から不思議な快感を得たことはないでしょうか。これこそ、ディフューザーから香るアロマテラピーの効果でしょう。

植物由来のエッセンシャルオイル(精油)を用いた自然療法であるアロマテラピーは、心と体の健康に科学的メリットがあることが示されています。脳の活性イメージングの研究では、このようなエッセンシャルオイルの香りを感じることで、大脳辺縁系(大脳の奥に位置し、情動や意欲の他、記憶や自律神経活動に関与する部分)とその感情経路に影響を与え、全体的な充実感が高まることが示されています。

具体的には、エッセンシャルオイルの中でも特に、ユーカリショウガに免疫力を高める直接的な効果があると考えられています。また、ラベンダーのエッセンシャルオイルの鎮静・睡眠補助作用はほとんどの人に効果が見られ、80%以上の子供が心地良いと感じることがわかっています。

5. サプリメントでサポート

GABA

γ(ガンマ)-アミノ酪酸(GABA)は脳内の神経伝達物質であり、神経細胞の活動を抑える働きと心の平安や睡眠準備を促す効果があります。ちなみに、気分障害や何らかの依存症患者はGABA濃度が低い傾向にあります。特定の自然食品や化合物、活動の中には、GABAの生成を高めるものがあります。

このGABAは、緑茶紅茶ウーロン茶の他、テンペやケフィアのような発酵食品にも自然に含まれています。GABAを高めるサプリメントには、バレリアンをはじめ、ホップマグネシウムL-テアニンL-アルギニンカバ(カバカバ)パッションフラワー(トケイソウ)、アメリカニンジン(別名セイヨウニンジン)などが挙げられます。また、GABAエンハンサーをL-グルタミンと併用すると、筋肉の緊張を和らげ、正常な腸の運動性をサポートします。

GABAのサプリメントは、休息を必要としながら、なかなかリラックスできないという患者に最も人気の高いサプリメントの一つと言えるでしょう。GABAの活性が低いと不眠症や睡眠障害につながります。ある研究では、不眠症患者のGABA濃度は、睡眠障害のない人よりも30%近く低かったという結果が出ています。

活性型ビタミンB6

ビタミンB6は、セロトニン(快感ホルモン)の生成をはじめ、炭水化物を処理してエネルギーに変換したり、神経系の働きをスムーズに保つなど、さまざまな機能に役立っています。ビタミンB6が欠乏すると、イライラしやすくなったり、うつ状態や全身の脱力感といった症状が現れることがあります。

そんな時は、活性型ビタミンB6であるピリドキサール-5-リン酸(P5P)を摂取することで、ビタミンB6欠乏患者の免疫機能を改善できます。この活性型ビタミンB6は、免疫反応の重要な補因子として、炎症部位で直接利用されます。食事によるビタミンB6摂取量が十分でない場合や、ビタミンB6を活性型に変換しにくい体質の方は、寝る前にP5Pサプリメントを摂取することで、一晩でセロトニンの生成と免疫反応の改善が期待できそうです。

以上の簡単なステップに従うだけで、一日の疲れを癒すのに役立ち、さらに免疫力アップも図ることができるかもしれません。以上の5つのステップを参考に、さっそく今夜から安眠を手に入れましょう。

参考文献

  1. Sun B, Wu L, Wu Y, et al. Therapeutic Potential of Centella asiatica and Its Triterpenes: A Review. Front Pharmacol. 2020;11:568032. Published 2020 Sep 4. 
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