季節性うつ病とは

季節性うつ病は主に冬季うつ病を指し、日照時間が短い高緯度地域に住む人が発症しやすい疾患です。このタイプのうつ病にかかると、冬場に気分が著しく落ち込み、仕事をうまくこなせなくなったり、普段の活動に興味が持てなくなったり、睡眠パターンが変わることもあります。それでも、適切なセルフケアに併せて、主治医と相談して包括的な計画を立てることで、冬を乗り切りやすくなるでしょう。

冬はやや苦手という人もいれば、深刻な問題に発展する人もいます。特に重症の方は、迷わず精神保健指定医または精神保健福祉士に相談するか、地域の自殺防止電話相談に連絡してください。

適切なセルフケアの基準を設定

季節を問わず、うつ病が深刻な疾患であることは紛れもない事実です。うつ病に対処するための計画の一環として、良好な社会支援制度の確立をはじめ、バランスのとれた健康的な食事、良質な睡眠、運動なども欠かせません。ただし、それだけでは十分とは言えず、さらに多くのサポートが必要な場合もあります。

まずは、かかりつけ医および精神保健指定医または精神保健福祉士に相談し、個人のニーズに合った包括的な計画を立てることが重要です。その上で、補助として取り入れたいサポートをいくつかご紹介しましょう。

季節性うつ病に対処するための自然な方法11選

1. メラトニン

メラトニンは、睡眠補助サプリメントとしてよく知られています。日照時間が短い冬の間は、人によってメラトニンの作用に敏感になったり、異常なメラトニン分泌が起こるため、季節性気分障害が悪化すると考えられます。限定的ではありますが、就寝時にメラトニンを摂取することで、季節性うつ病の症状を和らげる可能性があるという予備的証拠があります。

メラトニンは概して安全であり、良質な睡眠は健康全般に極めて重要です。睡眠が改善しない場合はかかりつけ医にご相談ください。なお、メラトニンは一部の国や地域では処方箋がないと入手できませんが、サプリメントとして誰もが購入できる国もあります。(日本国内のお客様は、iHerbにてメラトニンを含む製品を2ヶ月分までご購入いただけます。)

2. 光療法(別名ハッピーライト)

高照度光療法専用のライトを購入し、自然光に見立てて、冬の朝はその前に座ってみてはいかがでしょうか。光療法は、メラトニンなど他の療法との併用が有効であるという研究結果もあります。ただし、精神疾患の中には光療法で症状が悪化するものもあるため、不安がある方は主治医に相談しましょう。

3. ビタミンD

ビタミンDは、日光を浴びると体内で作られることから「太陽のビタミン」として知られています。日照時間が短い冬の間はビタミンDが不足しがちで、気分が沈みやすくなるものです。他の治療法と合わせてビタミン濃度を改善することで、季節性うつ病の治療に効果が見込めるという研究結果が報告されています。ビタミンD欠乏かどうかは血液検査を受けなければわからないため、気になる場合はかかりつけ医に相談しましょう。また、ビタミンDは摂りすぎると副作用が出ることから、必ず医師に相談し、適切な摂取量を守ることが大切です。

4. 認知行動療法

認知行動療法(ものの考え方や受け取り方である認知と、何らかの行動に対して働きかけることでストレスを抑える治療方法)を、ビタミンD、メラトニン、光療法など、季節性うつ病の治療によく用いられる補助的療法と組み合わせてさらなる効果を図った研究もいくつかあります。総合的なメンタルヘルス対策として、かかりつけ医に相談して認知行動療法士を紹介してもらうと良いでしょう。

5. ビタミンB群、またはメチルビタミンB群

ビタミンB群には、ビタミンB12葉酸などの重要な栄養素が含まれますが、これらのビタミンを単一のサプリメントで一度に摂取できる製品が数多く販売されています。研究で成人のうつ病や不安の症状の改善に役立つことが示されているビタミンB群ですが、腎疾患がある方はこのビタミンのサプリメントを摂取しないようにしましょう。

6. イノシトール

イノシトールは、主に単独および高用量で摂取されるビタミン様物質(ビタミンに似た生理作用をもつ有機化合物)です。卵巣の健康と不妊治療で特によく知られているイノシトールですが、睡眠を改善し、不安を軽減し、気分を向上させる働きもあることから、気分の落ち込みや、なんとなくだるくてやる気が出ない季節に使用すると良いかもしれません。

7. オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸、健康な脳と気分の維持に不可欠です。植物性食品にはある種のオメガ3脂肪酸が十分に含まれていないため、ヴィーガンやベジタリアンのように動物性食品を摂取しない人はどうしても不足しがちです。気分に対するオメガ3の効果を調べた研究はありますが、適切な摂取量が肝心であるにもかかわらず、多くの製品に微量しか含まれていないことから、一貫した結果が得られていません。

また、各個人のニーズに応じて、2大オメガ3脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)を正しい比率で摂取することも重要です。そのためにも、自分に合った量を医師に相談しましょう。なお、血栓の懸念がある方や抗凝固薬を服用中の方は、オメガ脂肪酸の摂取に注意が必要です。サプリメント以外では、サケ、サバ、甲殻類(貝類など)といった脂肪の多い魚介類を食べる習慣を増やすことでもオメガ3の摂取量が高まります。

8. 5-HTP

5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)は、気分の落ち込みなどメンタルヘルスの治療によく用いられ、睡眠障害や特定の消化器障害にも効果があるようです。ただし、特定の薬剤との併用は安全ではないため、何らかの薬を服用中の方は5-HTPを摂取する前に主治医にご相談ください。前述のメラトニンと同じく、5-HTPが市販されている国もあれば、処方箋がないと購入できない国もあります。(日本国内のお客様は、iHerbにて5-HTPを含む製品を2ヶ月分までご購入いただけます。)

9. チロシン

チロシンは、タンパク質の構成要素の一つであるアミノ酸の一種で、気分や精神的敏捷性を高める上で欠かせない神経伝達物質の量を増やすのに役立ちます。チロシンは、肉、チーズ、ナッツ類、穀物など多くの食品やサプリメントによって摂取できます。なお、服薬中の方は、チロシンと併用しても問題ないかどうかをかかりつけ医に確認した上で摂取することが大切です。

10.SAM-e

SAM-e(S-アデノシルメチオニン)は、体内で自然に発生する分子であり、アミノ酸であるメチオニンのエネルギー生成化合物で構成されています。研究によると、SAM-eは神経伝達物質の生成を助けることで気分を向上させやすくする他、痛みの治療にも効果が期待できるようです。SAM-eはメチル化を促進する働きがあるため、遺伝的要素によってSAM-eの効果を受けやすい人とそうでない人に分かれる可能性があります。

遺伝的に、細胞内のメチル化の速度が速い人と遅い人がいます。メチル化遺伝子の検査を受けるべきかどうかは、かかりつけ医に相談することをお勧めします。特定の精神疾患がある方や薬剤を服用している方はSAM-eを摂取しないでください。SAM-eも、サプリメントとして購入できる国と、処方箋がないと手に入らない国があります。

11. セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)

セイヨウオトギリソウトは、気分転換によく用いられるハーブです。複数の小規模研究では、特定の集団を対象に、セイヨウオトギリソウを他の治療法と組み合わせたところ、季節的な気分の落ち込みの改善に効果が期待できることが明らかになっています。ただし、セイヨウオトギリソウは、さまざまな処方薬と相互作用する可能性が高いため、服薬中の方は服用中の薬剤との相互作用について医師に相談した上で摂取することが重要です。

サポートを受ける

メンタルヘルスの治療は非常に複雑なものですが、適切なサポートを受けられるかどうかで大きな差が出ます。専門家のアドバイスに加えて、サプリメントも役立ちますが、まずは、かかりつけ医に相談して精神保健福祉士を紹介してもらい、その上で基本的なセルフケアを行うと良いでしょう。

また、楽しみながら続けられる運動をはじめ、バランスのとれた食事、社会支援制度の活用、良質な睡眠などは、最も重要な基盤となります。なお、極度のうつ状態に陥った場合は、くれぐれも一人で抱え込まずに救急センターに連絡してください。

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