運動前運動後の栄養が話題になると、運動後に注目が集まりがちです。どうしても、運動前に何を食べるかよりも、運動後の食事について耳にすることの方が圧倒的に多いものです。理論上は当然のことでしょう。なんと言っても、エネルギーを費やして運動したばかりなのですから、体力の回復に何を食べればいいのか考えるのも無理はありません。

確かに、運動後の栄養は効果的な運動と回復適応力を高めるのに欠かせないものですが、実は運動前の栄養も同じくらい重要なのです。運動前に摂取する食物は、より高いパフォーマンスと運動後の回復に合わせて体を整えてくれます。

この記事では、まず運動前の栄養について取り上げ、次にその重要性と上手な活用方法をご紹介したいと思います。

‌‌プレワークアウトの栄養とは?

プレワークアウトの栄養というのは、運動の前に意図的に摂取するあらゆる食品のことです。一般に、プレワークアウトの栄養とは、運動パフォーマンスと回復力を向上させるために開発された食品、飲料、スポーツサプリメントを指し、トレーニングの約2時間前に摂取するものです。

通常、意図主導型のトレーニングなどの運動前の栄養には、パフォーマンスのサポートに役立つ良質なタンパク質と炭水化物が含まれます。

実際には、運動前に摂取するものはすべてプレワークアウトの栄養と捉えることができますが、この記事では便宜上、一定の時間帯(運動の2〜4時間前)に限定し、タンパク質と炭水化物源の摂取に関する運動前の栄養についてお話ししていきたいと思います。

‌‌‌‌プレワークアウトの栄養の重要性

運動前の栄養を重視する理由とメリットは数え切れないほどあります。

それについて詳しく解説する前に、重要なポイントとして、本格的なアスリートやウエイトリフターでなくとも、運動前の栄養に気をつけるべきであることを挙げておきます。優れたパフォーマンスと体組成の変化は、意図的に取るちょっとした行動が日々積み重なって生まれるものです。そうした行動の一つとして、さまざまな運動パフォーマンスと生活面で成長のサポートに役立つと考えられるのがプレワークアウトの栄養です。

回復力を向上

運動前の栄養が重要な第一の理由は回復にあります。一日を通して食事をしていると、体が絶えず食物を消化し、摂取した食品や飲料を燃料や回復に利用している状態が続きます。多様な食物が消化される速度は複数の要因に左右されますが、ファスティング(断食)中でない限り、通常体は常に何らかの消化段階にあります。

筋力トレーニングにおいては、ほとんどのウエイトリフターにとって気になる不確定要素に筋タンパク合成があります。筋タンパク合成とは、筋肉増強と回復のためにタンパク質を利用することです。つまり、運動の前後に賢く効果的な食事を摂ることで、筋タンパク合成に有利な環境を作りやすくなり、より良い回復と成長のサポートにつながるのです。

パフォーマンスの向上

運動前の栄養が重要な第二の理由はパフォーマンスです。最高のパフォーマンスを発揮したいと思うのは誰もが同じで、また、エネルギーレベルが低い状態での運動効率の悪さも誰もが経験済みでしょう。そこで、戦略的なプレワークアウトの栄養計画を立てることでリスクが減り、栄養不足によるパフォーマンスの低下を防ぐことができます。

ただし、トレーニングの強度や方法は人によって異なるため、運動前の栄養を個々のレベルで評価することが大切です。つまり、これは各個人が最高のパフォーマンスを発揮するのに役立ち、かつ納得できるものを基準にプレワークアウトの栄養選択を行うことであり、簡単に手に入り、しかも美味しく摂取できる食品を選ぶことでもあります。基本的に、理想的なプレワークアウトの栄養といった既成概念にとらわれず、一人一人が自分に合った栄養計画を立てることが重要です。

‌‌‌‌運動前の体に燃料を供給する方法

ここでは、一方的に運動前の食事を紹介して「これが最高」と太鼓判を押すのではなく、体内のシステムの観点からこのテーマを掘り下げてみたいと思います。なお、運動前後の栄養を選択する際、栄養には大きな個人差があることをお忘れなく。

基本的に、以下のような基準に基づいて運動前の食事を選択する方法を考えてみましょう。

  • 実践している運動の種類
  • 目指す適応力
  • 手軽に入手できる食品の種類
  • 味の好み
  • 研究に基づく有効性のエビデンス

各自の生活や目標に合わせたプレワークアウトの栄養の流れをつかむことができれば、それに向かってアドヒアランス(積極的かつ真摯に取り組む意識)を高めていけるようになります。

そこで、運動前の栄養計画を立てる際に考慮したい最初の質問は、今後実行する予定の活動の種類です。それは長時間の持久力トレーニングでしょうか、それとも短時間のパワートレーニングあるいは中強度トレーニングでしょうか。これらのトレーニングはいずれも、運動中の異なる段階で、さまざまなエネルギーシステムとエネルギー貯蔵を利用します。この点を考慮することで、パフォーマンスをより良くサポートするための食品選びが楽になります。

そこで、各個人の活動内容に基づいて食事計画を立てる方法をいくつかご紹介しましょう。

  • 持久力トレーニング:低脂肪、高炭水化物、適度のタンパク質
  • ウエイトリフティングおよび中強度トレーニング:低脂肪、適度の炭水化物、タンパク質

これを元に、実際に行っている運動と目標とする適応力を当てはめてみてはどうでしょう。例えば、持久系のアスリートなら、運動能力を向上させることが第一目標であると考えられます。この場合は、運動の持続時間を維持できる炭水化物源を選ぶのが正解でしょう。また、エリートの持久系アスリートなら、運動中の炭水化物源を検討するのも良いかもしれません。

一方、筋肉増強が目的であれば、筋肥大を考える上で最も効果的なのは、運動前に炭水化物と良質なタンパク質を選ぶことでしょう。ちなみに、炭水化物とタンパク質は、運動後の筋タンパク合成を増加させる上で役割を果たすことが示唆されています。

こうして運動の内容と強度を見極め、目標を定めたら、次は、味の好みをはじめ、食品が簡単に手に入るかどうか、また、コストに基づいて最適な食事計画を立てることができます。

‌‌‌‌運動前の食事例

運動前後の栄養を改善する際に注意したい基本的な食事のポイントは以下の通りです。

  • なるべく質の高いタンパク源を摂取するように心がけましょう。
  • 炭水化物源は、実践している運動に応じて摂取しましょう。
  • 持久力トレーニングなら、炭水化物の摂取量を若干増やします。
  • 中強度トレーニングなら、炭水化物の摂取量はほどほどに抑えます。

ではここで、運動前の食事の具体例をいくつか挙げてみましょう。ただし、これらはあくまでも参考例ですので、各個人の嗜好に合わせて栄養計画を立てるようにしましょう。

例1:ランニングの1時間前

例2:ウエイトリフティングの2時間前

  • 鶏胸肉(または七面鳥の赤身挽き肉か牛肉の赤身)とジャガイモにフルーツのデザート
  • 理由:例1より少し消化が速い炭水化物源と良質な天然タンパク質。

例3:トレーニング(リフティング+ランニング)の30分前

  • オレンジ2個とギリシャヨーグルト
  • 理由:さらに消化が速い炭水化物と満腹感は控えめな低脂肪のタンパク源。

以上は、運動前の栄養改善に役立つと考えられる食事例です。これらの食事例で強調したいのは、運動前の食事には、個人の好みはもちろん、手に入りやすい食品を取り入れることも重要だという点です。

‌‌プレワークアウトの栄養についての重要ポイントまとめ

  1. 手に入りやすい好みの食品で、しかもパフォーマンスに負担をかけない食事を選ぶこと。基本的に、自分にとって最高のパフォーマンスを発揮できる食品を元に食事の内容と時間を設定すること。
  2. 筋タンパク合成(回復と成長)に関与するアミノ酸の含有量が多い良質なタンパク質を選ぶこと。
  3. 炭水化物源は、できれば1日の摂取量を満たし、パフォーマンスを高めるものであること。炭水化物は筋タンパク合成とエネルギーレベルに役立つため、タンパク源と同様に、手に入りやすい好みの炭水化物源を選ぶこと。

このように、自分なりに工夫できる範囲内で、長期的な成長を目指して各自に合った現実的な計画を立てることができます。