スマホやパソコンなどの長時間利用による4つの弊害とその対策

著者:ガブリエル・エスピノーザ、医学博士
この記事の内容:
平均的な10代の若者は、生活の中の約70%の時間をスマホやパソコンなどを見て過ごしています。子供たちは、特に10代の間は、ソーシャルメディアで友達とつながっている時間が多くなります。しかし、スマホやパソコンなどの利用時間が長くなると、心や体の健康にネガティブな影響が出る場合があります。
多くの国でオンライン授業が検討されていることから、子供や若者たちがスマホやパソコンなどを見る時間はさらに長くなるでしょう。ここでは、子供や10代の若者たちがオンライン授業を最適な形で受けられるようにする方法と、起こり得る弊害に対処するための方法についてヒントをご紹介します。
スマホやパソコンなどの使いすぎによる弊害
1. うつや不安の増加
研究では、ソーシャルメディアに費やす時間とうつや不安になる確率の上昇との間には、相関関係があることが示されています。
2. スマホ首
携帯型のデジタルコンテンツを利用する時間が長くなると、子供でも大人でも首に余計なストレスがかかり、いわゆる「スマホ首」や猫背になってしまいます。
3. 頭痛
スマホやパソコンなどを見る時間が長くなると、子供たちが目に不快感、疲労、乾燥などを感じる可能性も高まり、場合によってはそれが頭痛を引き起こします。
4. 眼精疲労
スマホやパソコンなどを見る時間と、眼精疲労あるいはコンピュータービジョン症候群(CVS)との間には相関関係があるとされています。
スマホやパソコンなどの利用時間が増えた場合の4つのメンタルヘルス管理法
予期せぬ変化が起きた時にはよくあることですが、特にオンライン学習に関しては、不確実性が子供たちの中に不安を呼び起こす可能性があります。子供たちにとって、今は社会関係を学び、自我や自己のアイデンティティを発達させる大切な時期です。
そのため、オンライン授業に対するアプローチの仕方について、しっかりとしたプランを準備することが望まれます。
- 制限を設ける:オンライン授業に参加する間は、子供がスマホやタブレットを利用する時間を制限しましょう。そうすることで注意力が散漫になるのを防ぎ、一度に1つの課題に集中させることができ、子供がいっぱいいっぱいになったり、混乱したりすることを避けられます。
- 学習用のスペースを作る:大人が仕事のための空間を必要とするように、子供たちにも勉強のための空間が必要です。できれば、オンライン授業に参加するための専用スペースを作りましょう。そして、静かな環境を構築し、人間工学に基づき首が痛くならないように机などを配置してください。
- 忘れずに休憩をとる:子供たちにも休憩が必要だということを覚えておきましょう。休憩することで、目の前の課題に再び集中しやすくなるだけでなく、目のピントを合わせ直すのにも役立ちます。
- 昔ながらのやり方に従う:可能であれば、課題をプリントアウトして、子供に紙とペンを使って作業させましょう。また、Journal of the American Medical Association Pediatrics誌に発表された研究によると、紙の本を読む方が、タブレットを読むよりも子供の脳の発達にとって良いことが示されています。
スマホ首にならないために快適さを優先する
オンライン授業では、コンピューターの画面を長時間見つめることが求められます。オンライン授業への参加中にしっかりと集中力を保つには、快適であることが何よりも重要です。デジタルメディアの利用時間が増えたことにより、子供たちは今、スマホ首による首の痛みを感じることが多くなっています。
頭の重さは約5kgあり、首を曲げるとその角度に応じて頭の重さも大きくなり、最大で通常の重さの3倍以上に達します。首を傾けた状態を長時間続けると、姿勢が変化し、慢性的な首の痛みにつながります。
テスト中や勉強中、ウェブの閲覧中、あるいはビデオゲームをしている間に前傾姿勢になると、子供たちの肩が丸まって猫背になるため、胸郭を広げて深く呼吸をすることが難しくなります。その結果、深い呼吸によって心を落ち着けることができず、気分をコントロールできない子供たちが出てきます。
したがって、必ずコンピューターの画面の一番上の部分が子供の目の高さにくるようにしてください。また、お尻が椅子の座部にしっかりと付いた状態で背筋を伸ばして座り、休憩中にはストレッチを行い、スマホやタブレットを長時間見下ろす状態を回避するよう指導しましょう。
目の健康を大切にする
オンライン授業に関して言えば、首の痛みは単独で起きる問題ではありません。眼精疲労の蓄積とも相関関係があります。目に疲れが溜まると、子供たちは画面上の文字などを読もうとしてさらに前傾姿勢になり、これが頭痛の原因となる場合があります。偏頭痛を抱える子供の場合は特に顕著です。
コンピュータービジョン症候群(CVS)は、スマホやパソコンなどの長時間利用と関係しており、子供たちは目の不快感や疲労、頭痛、ドライアイなど大人と同じ症状を経験します。
短期的な影響は気付きにくいため、子供や若者たちは、自分が深刻で長期的なダメージを蓄積している可能性があることを知らない場合があります。このことは、ぜひ覚えておいてください。抗酸化物質が豊富に含まれた食事を取り、ビタミンC、E、亜鉛のサプリメントを摂取することで、CVSなどの特定の目の症状の発症リスクを減らせる可能性があります。
頭痛への対処法
コンピューターの画面を一日中見つめていて、頭痛、特に偏頭痛が出る場合は、その対処に役立つ自然な方法がいくつか存在します。ある二重盲検ランダム化臨床試験では、ショウガの方が、スマトリプタンよりも偏頭痛薬として有効であることが判明しました。偏頭痛に対する有効性が示されているもう1つの天然サプリメントは、ターメリックです。これら2つのスパイスは、健康食にアクセントとして加えたり、粉末、お茶、エキスの形でサプリメントとして摂取することも可能で、薬の代わりとして素晴らしい働きをしてくれます。
屋内で過ごす時間が増えた場合に検討したい3つのサプリメント
子供の教育がオンラインへと移行する中で、抗酸化物質を豊富に含んだ健康的な食事により、子供たちは成功に必要な栄養を摂ることができます。サプリメントの摂取を検討している場合、特に好き嫌いのある子供の場合は、かかりつけの小児科医に相談してください。
1. マグネシウム
緑色の葉物野菜やナッツ類、穀物などに含まれるマグネシウムは、心を落ち着かせ、ストレスや不安を緩和し、それにより全体的な気分の改善を助けてくれる可能性があります。1日の多くの時間を座って過ごすことが原因で、子供が便秘に悩んでいる場合も、さまざまな錠剤や粉末に含まれるクエン酸マグネシウム製剤が役に立つかもしれません。
2. ビタミンB6
ビタミンB6および葉酸も、気分の改善やお肌、髪の毛、目の健康に役立つ可能性のあるビタミンです。これらは重要なビタミンで、体が食物をグルコースに変換するのを助けます。特に学習に関して言えば、グルコースは脳の主要なエネルギー源であるため非常に重要です。これらのビタミンは水溶性で体に蓄積することができないため、サプリメントの形で補給すると有益かもしれません。
子供用のマルチビタミンには、ビタミンB群が豊富に含まれているため、1日1個摂取することで、子供の体と心の総合的な機能をサポートできる可能性があります。
3. ビタミンD
授業がオンラインで行われるため、子供たちが外で遊んだり、自然の太陽光を浴びる機会が失われています。その結果、健康な骨の発達にとって重要なビタミンDやカルシウムの欠乏症が生じる可能性があります。ビタミンD欠乏症は、うつや不安の発生確率の上昇にも関係するとされています。
ここで重要なことですが、サプリメントはそれぞれ1日の推奨摂取量が異なり、既に服用中の処方薬に干渉する可能性があるため、子供にサプリメントを与えることを検討している場合は、必ずかかりつけの小児科医に相談するようにしてください。
予期せぬ変化というのは、子供や10代の若者たちにとって1つの試練かもしれません。それでも、家族の価値観に合わせて融通の利く柔軟なプランを立て、スマホやパソコンなどの利用時間に関してバランスを重視することで、子供のオンライン学習の成功をサポートすることができます。米国小児学会では、家族向けのメディア利用計画のひな型を作成してくれています。各家庭において、希望する目標を達成するために、自分たちの価値観や育児スタイルに合わせてこのひな形を活用することが可能です。最も重要なことですが、この記事でご紹介したサプリメントを子供に与える場合は、必ずかかりつけの小児科医に確認してください。
最後に、幼少期に社会生活を学ぶことは不可欠ですが、オンライン授業の要請により、この点に影響が出ている可能性があります。したがって、教育や体の健康維持と同じくらいに、子供たちとこれまで以上にできる限り協力して、社会的接触を維持することができるよう、さまざまな方法を見つけてあげることが重要です。
参考文献:
- The American Academy of Pediatrics. AAP: Finding Ways To Keep Children Occupied During These Challenging Times.; 2020. https://services.aap.org/en/news-room/news-releases/aap/2020/aap-finding-ways-to-keep-children-occupied-during-these-challenging-times/. Accessed July 19, 2020.
- Bulboacă, AE, Bolboacă, SD, Stănescu, IC, Sfrângeu, CA, Bulboacă AC. Preemptive Analgesic and Antioxidative Effect of Curcumin for Experimental Migraine. Biomed Res Int. Published online October 24, 2017. doi:10.1155/2017/4754701
- Chassiakos, YR, Radesky, J, Christakis, C, Moreno, MA, Cross. C. Children and Adolescents on Digital Media. Pediatrics. 2016;138(5):e20162593. doi:10.1542/peds.2016-2593
- Multimedia Encyclopedia - Penn State Hershey Medical Center - Vitamin B6. Penn State Hershey Medical Center. http://pennstatehershey.adam.com/content.aspx?productid=117&pid=1&gid=002402. Published 2019. Accessed July 19, 2020.
- Fares J, Fares Y, Fares M. Musculoskeletal neck pain in children and adolescents: Risk factors and complications. Surg Neurol Int. 2017;8(1):72. doi:10.4103/sni.sni_445_16
- Family Media Use Plan. HealthyChildren.org. https://www.healthychildren.org/English/media/Pages/default.aspx. Published 2020. Accessed July 19, 2020.
- Hill DL. Social Media: Anticipatory Guidance. Pediatr Rev. 2020;41(3):112-119. doi:10.1542/pir.2018-0236
- American Academy of Pediatrics. https://www.aap.org/en-us/Documents/soim_presentation_pedssupplements.pdf. Published 2020. Accessed July 19, 2020.
- Kozeis N. Impact of computer use on children's vision. Hippokratia. 2009;13(4):230-231.
- Lin LY, Sidani JE, Shensa A, et al. Association between social media use and depression among U.S. young adults. Depress Anxiety. 2016;33(4):323-331. doi:10.1002/da.22466
- Maghbooli M, Golipour F, Moghimi Esfandabadi A, Yousefi M. Comparison between the efficacy of ginger and sumatriptan in the ablative treatment of the common migraine. Phytother Res. 2014;28(3):412-415. doi:10.1002/ptr.4996
- Magnesium Citrate | Michigan Medicine. Uofmhealth.org. https://www.uofmhealth.org/health-library/d01008a1. Published 2020. Accessed July 18, 2020.
- Munzer TG, Miller AL, Weeks HM, Kaciroti N, Radesky J. Parent-Toddler Social Reciprocity During Reading From Electronic Tablets vs Print Books [published online ahead of print, 2019 Sep 30]. JAMA Pediatr. 2019;173(11):1076-1083. doi:10.1001/jamapediatrics.2019.3480