筋肉増強といっても、実際には何を意味するのでしょう。今の筋肉量をただ増やすだけなのか、それとも持ち上げる重量を増やして強くなることを意味するのでしょうか。

実は、多くのトレーニー(トレーニングする人)にとって、筋肉増強の概念が明確ではないため、行き当たりばったりのトレーニングと栄養・サプリメント摂取になりがちです。そんな心当たりがある方も、目標を明確に定めることで、そのゴールに向かって着実に進めるようになります。

例えば、筋肥大を目的とするトレーニング方法は、筋力やパワートレーニングなどとは若干違ってきます。このような具体的な目標も、厳密に言えばすべての「筋肉増強」の範疇に収まるものであり、極限まで鍛える構造と手段を作り上げる手がかりとなるでしょう。

この2回にわたるシリーズでは、筋肉増強を目指す男性のためのトレーニング、栄養、サプリメントについて解説していきたいと思います。

‌‌‌‌筋肉増強とは?

まずはっきりしておきたいのですが、このシリーズで言う筋肉増強は、プログレッシブ・オーバーロード(漸進性過負荷(ぜんしんせいかふか )。筋肉にかかる重量や回数などの負荷を増やし続けること)で得られる筋繊維の肥大適応および反応と定義しています。本質的には、筋肉に意図的なストレスをかけた後に回復させることで、筋肉の大きさ・強度をいずれも向上させるのが筋肉増強です。

筋肉増強において、大きさと強度は相いれないものではなく、むしろ比例するものです。つまり、筋肉が肥大化すれば、その変化に合わせて強度も増加します。筋力の増加率は、選択するトレーニング方法によって異なります。

あらゆるタイプの規則正しいトレーニングスタイルで、筋力の増加率に差があるのはこのためです。従って、トレーニングの目的が純粋な筋肥大か、あるいは強度かパワーかに関係なく、筋繊維は成長し強化を続けます。唯一違う点は、選択するトレーニングのスタイルに基づく成長・強化の速度です。

著者注:他の回復方法と共に、筋肉増強の速さを大きく左右するのは栄養です。このシリーズを通して筋肉増強について解説する上で覚えておきたいのは、上記の要素が必ずしも筋肉を鍛えるとは限らないものの、筋肉増強の速度に大きな役割を果たしていることです。要は、広い視野を持つことが大切です。

‌‌筋肉増強の基本

筋肉を成長させるには、さまざまなトレーニングの可変要因(変えることができる要素)を調整する必要があります。筋肉をつけたいのに、出たとこ勝負でがむしゃらに目標を目指そうとしても、残念ながら大した結果は出せません。

そこで、どんな方も確実に進歩するためにおさえておきたい筋肉増強の3つの基本ポイントを見ていきましょう。

1. 筋肉増強のための良質なトレーニングプログラムを見つける

簡単なことですね。ところが、これは数多くのウエイトリフターが見落としがちなポイントなのです。トレーニングプランは筋肉増強の速度を決定するものであり、それを認識することが重要です。

なぜ重要なのでしょう:優れた運動プログラムは、プログレッシブ・オーバーロード、適切なボリューム(レップ数=反復回数やセット数などの回数)の増加、トレーニング経過を追跡するシステムなど、筋肉増強に必要な複数のトレーニングの可変要因が考慮されているからです。なお、これらは主な要素のほんの一部に過ぎません。これらの要素がないトレーニングプログラムを行っている方は、現在のトレーニング内容を見直すか、コーチをつけてサポートしてもらうと良いかもしれません。

ウエイトリフターが陥りやすい落とし穴:一般に、トレーニング頻度が多いにもかかわらず、筋肉が増えない場合は、一貫性のないプログラムが原因です。次から次へとプログラムを変える人がいますが、それは筋肉増強にとって時間の無駄でしかありません。これは例えば、「最高 」あるいは「完璧」 なプランに出会うことを期待してしまうがため、どんな内容であろうと次々とプログラムを切り替えてしまうことを含みます。

そういった移り気なプログラムの切り替えは、忍耐の欠如や、筋肉増強の仕組みを理解していないことに加え、ソーシャルメディアも追い打ちをかけているかもしれません。一貫したプログラムで進捗状況を追跡しないと、筋肉を増強する能力を台無しにすることになります。

2. 筋肉増強時に重視したい栄養

今の食事のままでジムへ行き、トレーニングをしても筋肉はつきます。これは、体が新たな刺激を受けているからであり、トレーニングを続けると、体が順応していきます。

なぜ重要なのでしょう:「初心者は成長が速い」(体にとって重量を持ち上げることが目新しい活動であるため、筋力がすぐに反応して増加する傾向)と言われる時期を過ぎると、筋肉増強が次第に難しくなっていくからです。さらに、トレーニングと同じように、着実に進歩していくためにあとひと押し努力が必要です。そのひと押しとは栄養計画です。

毎日の総カロリーやマクロ栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物を指し、多量栄養素とも呼ばれる)はもちろん、食事時間さえも考慮に入れることで、筋肉増強の速度を加速することができます。例を挙げると、マクロ栄養素の摂取量を追跡せずに、食事の量が少なすぎたり、十分なタンパク質を摂取していないと、これらを心得ているトレーニー仲間と比べて、筋肉増強の速度が大幅に遅くなります。

タンパク質は、筋肉増強が目標の方にとって何よりも重要な栄養素です。十分なタンパク質を摂取していれば、維持期やカロリー多めの時期には良質な筋肉が増えやすくなり、逆に食べる量が少なくても除脂肪筋肉量を維持しやすくなります。

タンパク質の摂取量を増やす方法は多数あります。牛肉、鶏肉、魚、乳製品などの動物性プロテインに加えて、プロテインパウダーにもさまざまな種類があります。動物性タンパク質を摂取している方には、ホエイタンパク質カゼインプロテインがお勧めです。ベジタリアンやヴィーガンの方向けには植物性プロテインがあり、その種類としてエンドウプロテイン大豆プロテインヘンププロテインなどがあります。多くの運動後の回復用サプリメントにもタンパク質が含まれている他、BCAAのような重要なアミノ酸など、筋肉をサポートする栄養素も配合されています。

トレーニングにおける栄養の重要性については、以下の記事をご覧ください。

ウエイトリフターが陥りやすい落とし穴:スタート時点で効果が現れても、すぐ頭打ちになりがちです。身体トレーニングで体にかかるストレスが増えるほど、栄養的観点からの燃料補給方法や目標との照らし合わせに気を配る必要があります。

例えば、カロリー不足の状態では、維持期の食事やカロリーが若干多めの時と比べて、筋肉増強の速度がはるかに遅くなります。要は、栄養を重視することで、良質な筋肉をつけるための食事方法と筋肉の目標を両立させることができるのです。

3. 何よりも、回復(睡眠)は筋肉増強の鍵

良質な筋肉を作るなら、ただジムに通ってトレーニングし、きちんと食事するだけでは不十分です。そこで覚えておきたいのは、睡眠による回復プロセスも筋肉増強に大きな役割を果たす可能性があるということです。

なぜ重要なのでしょう:睡眠中、体は筋肉の成長と強度への適応に大きく関与するヒト成長ホルモン(HGH)を分泌するからです。さらに、睡眠は筋タンパク合成を介して回復と成長を促進します。 筋タンパク合成とは、筋繊維を再構築して修復するために体がタンパク質を利用する数多くの手段の一つです。

これらの2大要素に加えて、レム睡眠中は血流が増加する傾向があります。血流が増えると、有益な回復用プロテインを筋繊維に送りやすくなります。また、睡眠により筋肉がほぐれ、日中の活動やトレーニングで筋肉にかかった緊張を和らげることができます。

睡眠の他にも、マッサージ、氷風呂、サウナ、瞑想などの回復方法は、筋肉増強を目指す方のサポートとして役立ちます。

ウエイトリフターが陥りやすい落とし穴:上記の最初の2つのコツをおさえているリフターは多いのですが、睡眠やその他の回復法の重要性を忘れがちです。筋肉の回復と適応に必要な方法を身につけていなければ、せっかく優れたトレーニングプランを組んでも成果が上がりません。

しかも、睡眠による回復プロセスがおろそかになると、栄養価の高い食事を摂っていても無駄になってしまいます。睡眠不足は、コルチゾール(ストレスホルモン)のようなホルモンの増加を引き起こす可能性があります。ちなみに、コルチゾールは異化作用(生物体の物質代謝のうち、体内の複雑な化合物をより簡単な物質に化学的に分解する作用)があります。つまり、分子を分解するため、このホルモンが増加すると筋タンパク合成が阻害されやすくなります。

‌‌‌‌筋肉増強の基本を理解する

次回の筋肉増強に関する記事では、上記3つのポイントをさらに掘り下げてみたいと思います。まずは、具体的なアドバイスを参考に筋肉増強の基本をしっかり叩き込み、着実に成果を上げていきましょう。