‌‌体の代謝とはそもそも何なのでしょう。

食事や運動の話になると、よく登場するのがこの代謝という言葉です。特に体重の減量を目指す場合は、必ずと言っていいほど代謝が話題になるものです。その代謝とは、具体的にどういうものなのでしょうか。

代謝とは、摂取した食べ物や飲み物に含まれるエネルギー(すなわちカロリー)を、身体機能と生命維持に必要なエネルギーに変換するあらゆる物理的および化学的プロセスの総称です。

では、代謝は体重管理とどういう関係にあるのでしょうか。体重は、体内に放出されたエネルギーと利用されたエネルギーの差によって決まります。代謝が体重を左右する重要な要素となるのはそのためです。

体重減量を目指している人を筆頭に、ほとんどの人が代謝を上げたいと思っているでしょう。ところが、実はそこで多くの誤解が生まれます。勿論、自分の健康に影響する決断を下す際、わざわざ根拠のない方法で時間を無駄にしたい人などいません。そこで、代謝にまつわる俗説と真実を解明し、しっかり見極めていきましょう。

‌‌‌‌俗説:食事の量を減らせば代謝が上がる

確かに、体重が減るとエネルギー不足になりがちですが、これは、体が使うカロリー(摂取カロリー)よりも消費カロリーが日に日に少なくなっていくためです。ただし、長期的に減量を成功をさせるには、単に食事の量を減らせば良いというものではありません。

カロリー摂取量を減らしすぎると、体が飢餓状態に陥ります。これは、カロリーが減少したことを飢餓状態にあると解釈した体が、普段より少ないエネルギーで通常通りの機能を実行する方法に切り替えるということです。つまり、代謝が落ち、体重の減量が止まってしまいます。そればかりか、体重が増えることもあります。

‌‌‌‌俗説:痩せている人は代謝が高い

大柄な人は、小柄な人よりも体の機能により多くのエネルギーを必要とします。従って、実際には痩せた人よりも肥満の人の方が代謝が速い傾向にあります。ただし、いくつか例外があります。甲状腺機能低下症またはクッシング症候群(副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールの血中濃度が過剰になると起こる障害)の患者は、代謝が低下し、肥満の可能性が高くなります。

‌‌‌‌俗説:年齢とともに代謝が落ちる

加齢とともに基礎代謝量(BMR)が低下することはよく知られています。BMRは、安静時に身体機能を維持するために必要なエネルギー、すなわちカロリーを指します。ただし、加齢そのものが代謝低下の原因というわけではありません。むしろ、代謝低下に大きく影響するのは生活習慣です。

多いのは、若い頃と食事習慣が変わらない一方で、年齢とともに運動量が減りがちというケースです。そのため、BMRが低下し、体重が増えてしまうのです。

‌‌‌‌俗説:安静時の筋肉は1ポンド(約450g)あたり50カロリーを消費

実際には、安静時の筋肉が消費するのは1ポンド、または約450gあたりせいぜい6~7カロリーです。そのため、ジムでのトレーニングを強化して筋肉を5ポンド(2kg強)増やしたとしても、1日に消費するBMRが約35カロリー上がるだけです。これで、安静時の筋肉組織が総エネルギー消費量には、実はそれほど影響しないことがわかります。

では、安静時のカロリーのほとんどを消費させるものとは一体何なのでしょう。実は、カロリーの大部分を消費するのは肺、心臓、脳、肝臓、腎臓で、BMRの約80%を占めています。

‌‌‌‌俗説:しっかり運動すれば栄養価の低い食事でも補える

残念ながら、高カロリーで栄養価の低い食事を続けている限り、いくら運動をしても減量目標を達成することはできません。さらに、運動が1日の消費カロリーの大部分を占めているわけではないのです。ハイレベルなアスリートでない限り、運動による消費カロリーは1日のカロリー消費量の約10~30%程度です。一方、BMRは総カロリー消費量の60~80%を占めています。

ちなみに、高強度インターバルトレーニング(HIIT)のような激しい運動をすると、運動後の何時間かは(24時間か、場合によってはそれ以上)代謝が上がるというエビデンスがあります。ただし、この効果は一時的なものであり、運動した日にしか現れません。

もし、一時的な代謝アップを狙って毎日激しい運動を続けているとしたら、その計画が裏目に出てしまう可能性があります。体に十分な休息と回復する時間を与えられなければ、代謝は効率的に機能しないからです。また、体に負担をかけすぎると炎症状態になり、ホルモンのバランスが崩れ、代謝が乱れてしまいます。

‌‌‌‌俗説:食事の回数を増やして少量ずつ食べると代謝が上がる

少量ずつ食事を摂ることは、食事量の制限には役立つかもしれませんが、それで代謝を上げることはできません。ある研究では、1日3食を摂る人と6食摂る人が比較されました。その結果、24時間の脂肪酸化率(代謝の指標)に違いは見られませんでした。さらに、食事の回数が増えると空腹感が高まりやすくなるため、かえってカロリー消費が増える可能性があると指摘されました。

‌‌‌‌俗説:夜遅くに食事すると代謝が落ちる

体重が増えると、夜中に間食するせいで代謝が落ちたことが原因だと考える人が多いのではないでしょうか。ところが、体重増加の原因が食事時間にあるとは限りません。それよりも問題なのは、おそらく食品の質や量でしょう。夜でもお腹が空いたら良質なものであれば、おやつをつまんでも大丈夫です。ただ、むやみに間食することは控え、カロリーの摂り過ぎには注意しましょう。

‌‌俗説:特に代謝が上がりやすい食品がある

カイエンペッパー(トウガラシ属)を摂取することで代謝が上がることを実証した研究がいくつかあるのは確かです。ただし、わずかに上がるだけで長続きしません。

一方、緑茶に関する研究では、緑茶に含まれる化合物であるエピガロカテキンガレート(EGCG、別名:没食子酸エピガロカテキン)がカロリーを消費しやすくすることが明らかになりました。あるメタアナリシス(過去に行われた複数の研究データを統合して解析した統計手法)では、EGCGを250mg摂取すると、1日の消費カロリーが平均100カロリー増えたことがわかりました。

別のメタアナリシスでは、緑茶で肥満の人がわずかに減量しただけにとどまりました。このように、緑茶でも、一度減った体重の維持に役立つ効果は示されていません。

とはいえ、緑茶は長寿に有益とされる抗酸化作用に優れています。体重減量を目標にしている方にとって、成功の鍵はやはり運動習慣と栄養価の高い食事以外にありません。それでも、緑茶の効能を踏まえて、体重減量の目標達成のサポートとして取り入れることをお勧めします。

前述の通り、研究でカロリー消費の増加に有効であると示された250mgのEGCGを摂取するには、緑茶を1日3杯飲むと良いでしょう。ただし、その量には個人差があり、各自のカフェイン摂取可能限度や生まれつきの代謝によって異なります。なお、緑茶は刺激物であるため、何らかの疾患がある方や服薬中の方は、緑茶を日常習慣に取り入れる前にかかりつけ医等に相談することが賢明です。

‌‌‌‌実証済みの代謝アップ法

栄養バランスの良い食事を摂る

野菜や果物をはじめ、タンパク質や体に良い脂質を豊富に含む健康的な食生活を送ることで、代謝の強化に必要な栄養をしっかり補給できます。

食事の際に体がエネルギーを使う(カロリーを消費する)のは、食物を消化して代謝するためです。これを食物の産生熱量(TEF)といいます。食物繊維タンパク質はいずれも他の成分や栄養素と比べてTEFが高い傾向にあるため、代謝を高めるのに役立ちます。

ある研究では、1日40g以上の食物繊維を摂取した参加者は、1日の消費カロリーが非摂取群よりも92カロリー以上多かったことがわかりました。その他の研究では、タンパク質を多く摂取することで、1日の消費カロリーが約80~100カロリー増加したという結果が出ています。

代表的なタンパク質供給源には、赤身肉、レンズ豆やその他の豆類ナッツ・種子類植物性タンパク質などが挙げられます。一方、食物繊維を十分に摂取するには、全粒穀物、果物、野菜が欠かせません。また、食事で十分な量のタンパク質が摂れていない方には、プロテインパウダーによる手軽なタンパク質補給をお勧めします。

水を十分に飲む

水を十分に得られなくなった体は、代謝を低下させてしまいます。健康な人のほとんどは、毎日少なくともコップ4~6杯の水を飲めば脱水状態を避けられるはずですが、気候や身体活動などによって個人差があります。長時間にわたって激しい運動を行う場合は、電解質を摂取すると水分補給に役立ちます。

ある小規模な研究では、水を500ml摂取したところ、代謝率が30%増加したという結果が出ています。

もう一つ水を飲むメリットがあります。人は、喉が渇くと空腹と勘違いする傾向があるため、水を飲むことで食べ過ぎ防止になります。

睡眠を十分とる

睡眠が十分にとれていないと、血糖値の調節がうまくいかなくなる可能性があります。低血糖状態では、体の代謝過程に燃料を供給できなくなります。

また、睡眠不足により、レプチン(食欲抑制ホルモン)とグレリン(食欲増進ホルモン)という2つのホルモンのバランスが崩れやすくなります。レプチン耐性が生じると、空腹感が続き、代謝の妨げとなってしまいます。寝つきが悪い(入眠困難)方や夜中に何回も目が覚める(中途覚醒)方は、メラトニンサプリメントの効果が期待できます。(注:日本国内のお客様へ:メラトニンを含む製品につきまして、iHerbでは2ヶ月分まで購入が可能です)

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