エネルギー消費に関しては、人間も車と同じハイブリッドと言えるでしょう。つまり、日々のエネルギー需要を満たすために、私達の体は糖(単純炭水化物であるグルコースすなわちブドウ糖)または脂肪酸を利用できるということです。とはいえ、そのどちらかを選んで利用するといった単純なものではなく、体は糖があれば先にそれを燃焼させますが、摂取されながらも燃焼されなかった糖は余分な脂肪となって蓄積されることになります。

一方、一日の単純炭水化物(パン、パスタ、米、菓子類、一部の果物など)の摂取量が減ると、エネルギーに変換するために体は脂肪を燃焼し始めます。ただし、脂肪はまずケトン体に分解される必要があり、それがケトン食(ケトジェニックダイエット)の基礎となります。

多くの人がこの食事スタイルを取り入れることで大幅な減量に成功しています。ケトン食の大前提は、(食物全体ではなく)カロリーの70%を健康的な脂質、25%をタンパク質、約5%を単純炭水化物から摂取するというもので、要は、良質な脂質をたっぷり摂り、タンパク質は適度に摂取し、単純炭水化物はごく少量に抑えるという食事法です。そのため、ケトン食では、単純炭水化物(糖に変換されるもの)を1日50g(または炭水化物から食物繊維と糖アルコールを引いた正味炭水化物20〜25g)未満に留めることが推奨されています。

ケトン食の歴史

ケトン食は常に減量目的に使われてきたわけではなく、もともとは薬剤耐性てんかんの治療に用いられたのが始まりでした。1920年代、抗てんかん薬が効かない小児てんかん患者がケトン食に好反応を示すことがわかったのです。この食事療法を続けている限り、発作がまったく起こらなくなる症例も少なくありませんでした。

そのケトン食も、最近では減量法として注目を集めており、低炭水化物・高脂肪食を摂取している方の多くから、特に過剰な体重が減り始めると元気になったと報告されています。このように減量に期待できるケトン食ですが、他のあらゆる食事法と同じく、必ずかかりつけ医に相談し、自分に合っているかどうかを見極めた上で始めることが大切です。

ケトン食の実践中に摂取できる食品例

体が糖を処理する仕組み

体内の細胞はさまざまな形で存在する糖(グルコース)を主なエネルギー源として利用しており、不要な糖はグリコーゲンとして肝臓や筋肉に貯蔵されます。人体は72時間分のグリコーゲンを蓄えられるため、空腹時やすぐにエネルギー源が必要な時に備えて糖を確保できます。

人が飢餓状態を乗り切れるのは、この貯蔵という進化上の利点があるおかげです。その一方で、飢餓状態にならずに必要以上に糖を摂取すると、脂肪が蓄積されてしまいます。

‌‌‌‌ケトン食の働き

低炭水化物・低糖のケトン食を続けると余分な脂肪が遊離脂肪酸に分解され、その脂肪酸がエネルギーに変換されることで、肝臓によりケトン体が生成されます。

こうして、単純炭水化物の摂取量を1日50g(正味炭水化物量20〜30g)未満に抑えつつ、運動を続けるとケトーシス状態になります。

私の経験では、減量の目標を達成した後に重要なのは、週に1回、果物(バナナ、リンゴなど)や健康に良い炭水化物(玄米、キヌア、パスタ、レンズ豆のパスタ、ヤムイモなど)を摂取する日を設けることです。これにより代謝柔軟性を維持しやすくなります。

ケトン食に欠かせない食品

アボカドオイル

アボカドはケトン食実践者の間で人気の高い食材ですが、アボカドオイルもケトン食に適していることは意外と知られていないかもしれません。271℃という高い発煙点(油脂の加熱時に煙が発生する温度)が特徴のアボカドオイルは、この高温まで品質が安定しているため、調理に最適なオイルと言えるでしょう。

アボカドオイルは、リノール酸やオレイン酸など、抗炎症作用を持つ健康的な脂質である一価不飽和脂肪酸で構成されています。これらの脂肪酸は、コレステロールや血圧を下げるだけでなく、減量を促す効果があると考えられています。アボカドオイル大さじ1あたりのカロリーは124kcalで、脂質は14g、炭水化物は0gです。なお、アボカドオイルはMCT(中鎖トリグリセリド)オイルではありません。

ココナッツオイル

ココナッツオイルはMCTオイルの中でも特によく知られており、脳の健康や減量促進に使われることの多いオイルです。2009年に行われた研究では、ココナッツオイルを12週間摂取した結果、ウエスト周りの脂肪が落ちたという結果が出ています。ココナッツオイルの発煙点は177℃で、低温から高温まであらゆるタイプの料理に最適です。ココナッツオイルオイル大さじ1あたりのカロリーは117kcalで、脂質は14g、炭水化物は0gです。

チョコレート、ケーキ、クッキー

おそらく、クッキー、ケーキ、ブラウニーなど、ケトン食の実践中に食べても良いケト対応のおやつなどあるわけないと思っている方がほとんどではないでしょうか。

それが、カロリーゼロの天然甘味料とアーモンド粉ココナッツ粉があれば可能なのです。とはいえ、毎日食べることはお勧めできませんが、どうしても甘いものを食べたい衝動に駆られた時、このようなおやつなら低炭水化物食を台無しにすることなく満足のいく代替品となるでしょう。

ギー

澄ましバターとしても知られ、ケトン食を行う方の間でよく使用されているギーは、アーユルヴェーダ医学において重要な役割を果たすオイルであり、抗炎症作用や消化促進作用があるとされています。

ギーは短鎖と中鎖のトリグリセリド(中性脂肪)含有で、オメガ3と酪酸も豊富なため腸内環境を整える効果が期待できる他、ビタミンAEKも含まれています。ギーは、通常バターを使用する料理によく合いますが、1日の脂質摂取量を増やしたい方はコーヒーにも加えてみてはいかがでしょうか。

中鎖トリグリセリド(MCT)オイル

中鎖トリグリセリド(MCT)も減量に重要な役割を果たします。ケトン食の実践者にMCTを補う人が多いのは、この脂肪酸がエネルギーに変換され、普段よく使われる長鎖トリグリセリドよりも脂肪として蓄積されにくいと考えられるためです。

ある2015年の研究では、MCTを摂取した人の体重がやや減少傾向にあったことが示され、血中コレステロール値が上昇しなかったことも明らかになりました。MCTはスプーンにとってそのまま摂取したり、スムージーに加えても良いでしょう。推奨用量:ラベル記載の通り。

ナッツ類

多種多様なナッツがありますが、それぞれに含まれるビタミンやミネラルもさまざまです。必須脂肪酸を多く含むナッツは、健康的な脂質とタンパク質の宝庫であり、心血管や脳に良いだけでなく、間食がやめられない方にもお勧めできるケトン食対応のおやつになります。

  • アーモンド:カルシウム、マグネシウム、ビタミンEが豊富。
  • カシューナッツ:鉄分とマグネシウムの他、優れた微量栄養素の供給源である銅も含有。
  • ヘーゼルナッツ:ビタミンC、B、カルシウム、マグネシウムが豊富。
  • ピーナッツ:タンパク質、食物繊維、健康的な脂質がたっぷりのマメ科植物。ピーナッツは、血行と心臓の健康に重要なアミノ酸であるL-アルギニンを多く含む他、研究によるとエイジングケアや長寿効果が期待できるレスベラトロールの良好な供給源でもあります。
  • クルミ:コレステロール値の低下を助けるオメガ3脂肪酸と抗酸化物質が豊富。

種子類

  • チアシード:タンパク質とオメガ3脂肪酸を豊富に含むチアシードは、健康面で多くのメリットがあることがわかっており、血糖値低下にも役立つとみられるため、減量を目指す方にお勧めです。実際、European Journal of Clinical Nutrition誌に発表された2010年の研究で、チアシードは糖尿病患者の血糖値と血圧を下げやすくする可能性があると示されました。
  • ヘンプシード: 何千年もの昔から摂取されている優れた栄養源であり、特にケトン食を行う方の食生活に取り入れたい食材です。ヘンプシードは、その30%以上を脂質が占め、α-リノレン酸(オメガ3脂肪酸)とリノール酸(オメガ6脂肪酸)も豊富に含んでいます。また、優れたタンパク源でもあるヘンプシードは、スムージーやサラダの他、ケトンボム(ボール型など一口サイズの高脂肪・低炭水化物スナック)に加えても良いでしょう。

甘味料

肥満をはじめ、糖尿病や高血圧に悩む人が世界的に増えている主な原因として、スクロース(砂糖の主成分で、ショ糖とも呼ばれる)の大量摂取が挙げられます。スクロースは、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が結合した二糖類です。

かつて、16世紀頃まで、1日の砂糖の摂取量はゼロに等しいものでしたが、ここ数百年の間で砂糖は世界中で手に入るようになり、慢性疾患を引き起こす存在となりました。幸い、ラカンカ(羅漢果)、アルロース(別名プシコース)、エリスリトールステビアなど、砂糖よりも安全な代用甘味料があります。

食物繊維

中には、低炭水化物食にすると便秘になるケースもあるため、十分な水分補給が重要です。私がよく患者に勧めるのは、便秘になったら食物繊維のサプリメントを摂ることです。なお、用法用量を守って摂取しましょう。

プロテインバー

プロテインバーは、ケトン食実践中のおやつとしてはもちろん、食事代わりにも最適です。1日の炭水化物摂取量の目標値を超えないようにするには、正味炭水化物の量を抑えることが大切です。そのためにも、私はよく旅行にプロテインバーを持参しています。

ケトン食に欠かせないサプリメント10選

ここからは、ケトン食を行っている方の健康サポートに役立つと考えられるサプリメントをご紹介しましょう。

1. コラーゲン

結合組織としても知られるこのタンパク質は、皮膚を安定させ、関節の動きと柔軟性を維持する役割を担っています。コラーゲンのサプリメントは、お肌のエイジングケアにもなり、セルライトを最小限に抑えるなど、多くの効果が期待できます。ケトン食で減量中の方は、肌を最適な状態に保つために、コラーゲンの摂取量を増やしてみてはいかがでしょうか。少なくとも1日3,000〜5,000mgのコラーゲン摂取をお勧めします。

また、できるだけ強いコラーゲンを増やすなら、併せてビタミンCを1000~2000mg摂取することも重要でしょう。

2. 電解質パウダー

ケトン食を続けると電解質異常が起こることがあります。というのも、ケトン食の初期段階では、水分を十分に摂取しないと脱水症状を起こしやすく、マグネシウムやカリウム異常が起こるためです。このことからも、水分をしっかり補給することが肝心です。特に、運動で汗をかく習慣がある方は電解質異常のリスクが高くなるため、電解質パウダーを摂取して電解質の補給に努めている方が多いようです。

3. 外因性ケトン

ここ数年で、外因性ケトンサプリメント(β-ヒドロキシ酪酸)やスポーツドリンクは広く知られるようになりました。2017年の研究で、「外因性ケトン飲料は、ケトーシスになるための実用的かつ効果的な手段である」と結論づけられています。また、食欲を抑えたり、トリグリセリドやグルコースの値を下げる効果もあることが複数の研究で示されています。注:このサプリメントを摂取しても、ケトン食の実践中に単純炭水化物の摂取量を制限する必要性がなくなるわけではありません。

4. 青汁

意外に思われるかもしれませんが、ケトン食では、食物繊維が豊富な複合炭水化物である緑色葉野菜をたっぷり摂る必要があります。重要なのは植物性栄養素と食物繊維を十分に摂取することですが、食事だけでは難しいこともあるため、青汁を毎日の習慣に加えてみてはいかがでしょうか。青汁には、ウィートグラス(小麦若葉)やクロレラをはじめとするさまざまな野菜が含まれています。

5. マグネシウム

マグネシウムは体内で350種類以上の生化学反応に関与しています。心身ともにストレスがかかると、体内で利用されるマグネシウムの量が増えます。特にストレスが多い時期に緊張性頭痛やけいれん、動悸などが起こりやすいのは、このことが原因のようです。また、この多量ミネラルは、ケトン食を実践中の人や活動的な生活習慣のある人に起こりがちな筋けいれんを防ぐ上でもよく摂取されています。

けいれんや頭痛には、マグネシウムキレート(アスパラギン酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム)を1日125~500mg摂取することが推奨されています。ケトン食を続けていると便秘になりやすい傾向がありますが、マグネシウムの摂取が規則正しいお通じにつながると考えられます。けいれんよりも便秘が気になる方は、クエン酸マグネシウムまたは酸化マグネシウムを選ぶと良いでしょう。

6. マルチビタミン

2002年6月19日、Journal of the American Medical Association誌に掲載された研究は、すべての成人がマルチビタミンを摂取することを推奨しています。特に、低炭水化物食であるケトン食を続ける上で、体に必要な栄養素を確実に摂取する後押しとしてお勧めしたいのが良質なマルチビタミンです。推奨用量:ラベル記載の通り

7. オメガ3

高脂肪食であるケトン食は、健康的な脂質をたっぷり摂ることが鍵となります。そこで、食事で健康的な脂質を十分に摂取する上で重要な役割を果たすのがオメガ3脂肪酸またはフィッシュオイルです。一般的なオメガ3の摂取量は1日1,000〜4,000mgです。なお、ヴィーガンの方にはフラックスシードが最適な代替サプリメントとなるでしょう。

8. ピープロテイン(エンドウ豆由来のプロテイン)

ケトン食を行っている方は、ピープロテインのミールリプレイスメント(食事代替)シェイクや植物性プロテインパウダーを取り入れてみてはいかがでしょうか。ピープロテインは、乳製品を控えている方や、特にヴィーガン食を実践している方にお勧めです。このプロテインに含まれる炭水化物の量は1食あたり1g未満です。推奨用量:ラベル記載の通り

9. ビタミンD

ビタミンD欠乏は、世界で最も多いビタミン欠乏症の一つであり、ケトン食の実践者も陥りやすい傾向にあります。ビタミンDの血中濃度が低いと、骨粗しょう症をはじめ、心筋梗塞や脳卒中の他、多くのがんのリスクが高まります。ビタミンDが不足している成人の大半は、生涯にわたって1日2,000~5,000 IU補給しています。

‌‌‌‌10.ホエイプロテイン(乳清タンパク質)

ホエイプロテインは、日常的な運動習慣のある方に愛用者の多いサプリメントで、体重維持または減量を図る際のミールリプレイスメント(食事代替)としてよく使用されています。牛乳を原料とするホエイプロテインは、筋肉増強を目指す方の間でも人気のタンパク源です。ケトン食を行っている方は、ホエイプロテインシェイクを食事の代わりに摂取しても良いでしょう。推奨用量:ラベル記載の通り

参考文献 :

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