インスリン抵抗性とは

インスリン抵抗性については、世界中に多くの患者がいるにもかかわらず、診断されるケースが少ない病態です。2型糖尿病の家族歴のような遺伝的素因も考えられるインスリン抵抗性ですが、主な原因は一日中座りっぱなしの生活と糖分の多い食事です。インスリン抵抗性にはよくある症状がいくつかありますが、中には、その症状自体が原因となっている場合もあります。

インスリン抵抗性の兆候

  • 高血圧
  • 太り過ぎ
  • 肥満
  • イボ(特に首や太もものつけ根にできる)
  • 高コレステロール
  • 高中性脂肪(高トリグリセリド)
  • 脂肪肝
  • 糖尿病予備群(前糖尿病)
  • 糖尿病
  • 前立腺肥大症
  • 心疾患
  • 多嚢胞性卵巣症候群(月経異常)

‌‌‌‌インスリン抵抗性の原因

人によっては、膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンに対して、肝臓、脂肪、筋肉などの細胞が抵抗性(インスリンが効きにくい状態)を示すことがあります。このような状態になった体は、エネルギー生成のために血中に取り込まれる糖の量だけでなく、今後に備えて貯蔵しておく糖の量も調節できなくなるため、膵臓のインスリン分泌量が増え、血糖値が上昇し続けます。

‌‌‌‌インスリン抵抗性を管理するための生活要因

インスリン抵抗性の予防、改善、管理に役立つ生活習慣の見直しには以下のようなものがあります。

  • 減量:最適な体重を手に入れることで、ホルモンバランスの改善を促進
  • 毎日の運動:週に5日、30分間以上の適度な運動
  • 栄養価の高い食事:野菜や果物を十分に摂取
  • 腸の健康維持:食事とプロバイオティクスを上手に利用
  • 特殊な食事法:適正体重を目指す人の多くがパレオ食、ケト食、地中海食などを採用

‌‌‌‌インスリン抵抗性の治療薬

糖尿病予備群や糖尿病の治療薬としてよく用いられるメトホルミンは、体内で効率的なインスリンが生成されるように働きかけます。PCOS(多嚢胞性卵巣症候群、たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)を発症した女性の多くはインスリン抵抗性があることから、メトホルミンは月経周期を正常に戻すのに役立つ薬剤です。

‌‌インスリン抵抗性の管理に役立つサプリメント‌‌7種

ベルベリン

ベルベリンは、常緑植物・落葉植物いずれも含むバーベリー(学名 berberis vulgaris、和名セイヨウメギ)の低木から抽出されます。ヨーロッパ、北米、中東、アジアなどに分布するバーベリーは、健康に多大な効果をもたらすビタミンCを豊富に含んだ実を結びます。

バーベリーの有効成分であるベルベリンはハーブ食品やサプリメントとして摂取され、ベルベリンのさまざまな健康効果が科学研究で示されています。もともと中国伝統医学やアーユルヴェーダ医学で広く用いられていたものです。

ベルベリンは、インスリン抵抗性を減少させ、血糖値を下げる可能性がある上に抗酸化作用もあるため、炎症を抑えるのに期待できる他、心血管疾患の予防や治療にも役立つと考えられています。ある2017年の研究で、ベルベリンは、腸内マイクロバイオーム(腸内微生物叢)に積極的に作用することで、その効果の一部を発揮する可能性が示唆されました。

Journal of Ethnopharmacology誌に掲載された2015年の研究では、ベルベリンが血糖値と総コレステロール値を下げるのに役立つのではないかと報告されています。また、心臓発作の予防に有効とされるHDL(善玉)コレステロールの上昇にもベルベリンは役立つようです。

2012年の研究では、ベルベリンがインスリン感受性の改善に役立ち、最終的には血中のインスリン濃度とグルコース濃度(ブドウ糖濃度すなわち血糖値)の低下に期待できることが明らかになりました。

また、Biochemical Pharmacology誌の2010年の研究では、ベルベリンがGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)を活性化することが示されました。GLP-1はインスリンの分泌を促すホルモンであるため血糖値のコントロールに役立ちます。

この他にも、ベルベリンは健康な腸内細菌の増殖を促進することにより、腸内マイクロバイオームに有益と見られることが研究で示されています

クロム

クロムは、耐糖因子と呼ばれる酵素など多数の酵素反応に不可欠な元素です。耐糖因子は、インスリン機能とグルコース調節を最適な状態に保つのに役立ちます。

Journal of Trace Elements in Medicine and Biology誌に掲載された2017年のメタアナリシス(過去に行われた複数の研究データを統合して解析した統計手法)研究では、ピコリン酸クロムのサプリメントを摂取することで、PCOS患者のBMI(ボディマス指数。体重と身長から算出され、肥満度を表す体格指数)、空腹時インスリン濃度、総テストステロン(女性も分泌する”男性ホルモン”)濃度の低下に有益な効果があると結論づけられました。

同様に、Annals of Nutrition and Metabolism誌に発表された2015年の二重盲検プラセボ対照試験でも、クロムの補給によりPCOS患者のインスリン濃度が低下することが示された他、コレステロール値にも改善が見られました。また、2016年の研究では、ピコリン酸クロムが女性患者のインスリン抵抗性を低下させ、月経周期のコントロールにも役立つ可能性があることが示されています。また、2018年の研究では、糖尿病とPCOSを併発した女性患者のインスリン抵抗性をクロムが減少させ得ることが実証されました。この重要な微量ミネラルは、上記の疾患の有無にかかわらず、代謝の改善を目指す方にもお勧めです。

N-アセチルシステイン(NAC)

NACは、体内(特に肝臓)の毒素排出を助ける重要な栄養素です。医薬品として、NACはアセトアミノフェン(パラセタモール、商品名タイレノール)の過剰摂取の入院患者に/投与される一方で、サプリメントとしは日常の環境毒素の除去に役立ちます。

Obstetrics and Gynecology International誌に掲載された2015年のメタアナリシス研究によると、インスリン抵抗性のあるPCOS患者にNACを投与したところ、プラセボ錠の投与群と比べて排卵、妊娠、出産の可能性が高かったことがわかりました。なお、NAC摂取群の女性に悪影響は一切見られませんでした。

PCOS患者を対象に2015年に行われた別の研究では、NAC600mgを1日3回摂取した患者とメトホルミン500mgを1日3回服用した患者が比較され、NACは医薬品であるメトホルミンよりも空腹時の血糖値とコレステロール値を下げる可能性があると結論づけられました。

最後に、動物モデルを用いて行われた2020年の研究でも、NACの補給がインスリン抵抗性の減少を後押しすると見られることが示されました。

L-カルニチン

L-カルニチンは筋肉と脳に高濃度で存在する重要なアミノ酸で、エネルギー生成や代謝に大きく関与しながら、インスリン調節にも有効であると考えられます。

2015年には、PCOSとインスリン抵抗性のある60人の女性を対象に、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験が行われました。被験者は全員が太り過ぎとみなされ、そのうち半数の30人がL-カルニチン250mg、残りの30人はプラセボ錠を摂取しました。両群共に12週間の追跡観察を行ったところ、研究終了時にはL-カルニチン摂取群の体重と胴囲が減少し、血糖値も低下したことにより、インスリン抵抗性が改善されたことがわかりました。

European Journal of Obstetrics and Gynecology and Reproductive Biology誌に発表された2014年の研究では、クロミフェン(不妊治療に使われる排卵誘発剤)に抵抗性のあるPCOS患者が毎日の薬物療法に3,000mgのL-カルニチンを加えたところ、妊娠する可能性が高まることが実証されました。これは、インスリン抵抗性を減少させるという健康目標を達成する上で、栄養補助食品と処方薬を併用する好例と言えるでしょう。この研究は女性に特定して行われましたが、インスリン抵抗性のある男性にも効果があると思われます。

2017年の研究でも、L-カルニチンを補給することで被験者のインスリン抵抗性の軽減を図れるのではないかという結論に至っており、2019年の研究でも同様の効果が認められました。

コエンザイムQ10

CoQ10(コエンザイムQ10)はよく知られるサプリメントの一つで、エネルギー代謝に重要な役割を果たしています。コレステロール低下薬と併用されることの多いCoQ10ですが、研究によると、インスリン抵抗性、糖尿病予備群、糖尿病の患者にも役立つ可能性があります。

Clinical Endocrinology誌に掲載された2017年の二重盲検プラセボ対照研究では、インスリン抵抗性のある女性を対象に、コエンザイムQ10 100mgとプラセボの使用が比較されました。被験者はまず血液検査を受け、CoQ10のサプリメントまたはプラセボを12週間摂取したのち、再び血液検査を受けました。その結果、コエンザイムQ10摂取群は、インスリン抵抗性のあるPCOS患者にありがちな高い血糖値とインスリン値がいずれも低下しました。

同じく、2018年に韓国で行われた二重盲検プラセボ対照試験でも効果が認められています。同研究では、糖尿病予備群の患者80人が2群に分けられ、半数はプラセボ、もう半数はコエンザイムQ10を摂取しました。その結果、コエンザイムQ10摂取群でインスリン抵抗性の減少が見られ、CoQ10には糖尿病への進行を遅らせる可能性があると結論づけられました。

オメガ3脂肪酸

必須脂肪酸であるオメガ3の代表的なものとしてエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の2種類があります。これらの重要な栄養素は、魚(サバ、タラ、サケが特に豊富)、クルミチアシードフラックスシード(亜麻仁種子)ヘンプシード(麻の実)、アボカド、納豆などさまざまな食品に含まれています。

2009年の研究では、インスリン抵抗性があり、PCOSと脂肪肝を併発した患者は、オメガ3脂肪酸を摂取することで病状の軽減が期待できる他、血圧と中性脂肪の改善も認められました。

2011年の研究では、オメガ3脂肪酸の摂取量を増やすことで、PCOSとインスリン抵抗性のある女性のバイオアベイラブル(生物学的に利用可能な)テストステロンの減少につながる可能性があることが示されました。また、2018年の研究では、フラックスシードがPCOS患者のインスリン抵抗性の軽減に加えて、インスリン濃度の低下に役立つと見られることがわかりました。

‌‌‌‌セレン

セレンは、人体にとって重要でありながら少量しか存在しない微量ミネラルの一つで、食事の他、ビタミンやミネラルのサプリメントで摂取する必要があります。強力な抗酸化物質であるセレンは、脳はもちろん、甲状腺の健康にも重要で、免疫系を最適な状態に保つ働きもあります。特に優れたセレンの食物源にはブラジルナッツがあります。

2013年にトルコの女性を対象に行われた研究によると、インスリン抵抗性のあるPCOS患者は、そうでない女性と比べて血中セレン濃度が低いことがわかりました。このミネラルが欠乏すると、PCOSの原因やホルモンとインスリンの濃度の調節に影響を及ぼすと考えられています。

さらに、2014年に実施されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、セレンがPCOS患者に有効である可能性が示されました。具体的には、セレンがインスリン濃度をはじめ、中性脂肪とLDL(悪玉)コレステロールも低下させるなど、コレステロール値の改善に有望であるというものです。

一方、2018年に行われたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、インスリン抵抗性のあるうっ血性心不全患者にセレンのサプリメントを投与したところ、12週間のセレン補給がインスリン代謝に有益な効果をもたらしたと結論づけられました。

なお、これまでの研究によると推奨摂取量は1日200mcg未満です。

参考文献:

  1. Brown AE, Walker M. Genetics of Insulin Resistance and the Metabolic Syndrome. Curr Cardiol Rep. 2016 Aug;18(8):75.
  2. Drug Metab Rev. 2017 May;49(2):139-157.
  3. Li C, He JZ, Zhou XD, Xu X. [Berberine regulates type 2 diabetes mellitus related with insulin resistance]. Zhongguo Zhong Yao Za Zhi. 2017 Jun;42(12):2254-2260. Chinese.
  4. J Ethnopharmacol. 2015 Feb 23;161:69-81.
  5. Berberine improves insulin sensitivity by inhibiting fat store and adjusting adipokines profile in human preadipocytes and metabolic syndrome patients. Yang J, Yin J, Gao H, Xu L, Wang Y, Xu L, Li M Evid Based Complement Alternat Med. 2012; 2012():363845
  6. Modulation of glucagon-like peptide-1 release by berberine: in vivo and in vitro studies. Yu Y, Liu L, Wang X, Liu X, Liu X, Xie L, Wang G Biochem Pharmacol. 2010 Apr 1; 79(7):1000-6.
  7. Modulating gut microbiota as an anti-diabetic mechanism of berberine. Han J, Lin H, Huang W Med Sci Monit. 2011 Jul; 17(7):RA164-7.
  8. Siavash Fazelian, Mohamad H. Rouhani, Sahar Saraf Bank, Reza Amani, Chromium supplementation and polycystic ovary syndrome: A systematic review and meta-analysis, Journal of Trace Elements in Medicine and Biology, Volume 42, 2017, Pages 92-96, ISSN 0946-672X, https://doi.org/10.1016/j.jtemb.2017.04.008.
  9. Jamilian M, Asemi Z, Chromium Supplementation and the Effects on Metabolic Status in Women with Polycystic Ovary Syndrome: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial. Ann Nutr Metab 2015;67:42-48
  10. Ashoush S, Abou-Gamrah A, Bayoumy H, Othman N. Chromium picolinate reduces insulin resistance in polycystic ovary syndrome: Randomized controlled trial. J Obstet Gynaecol Res. 2016 Mar;42(3):279-85.
  11. Heshmati J, Omani-Samani R, Vesali S, Maroufizadeh S, Rezaeinejad M, Razavi M, Sepidarkish M. The Effects of Supplementation with Chromium on Insulin Resistance Indices in Women with Polycystic Ovarian Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials. Horm Metab Res. 2018 Mar;50(3):193-200. f
  12. Divyesh Thakker, Amit Raval, Isha Patel, and Rama Walia, “N-Acetylcysteine for Polycystic Ovary Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Clinical Trials,” Obstetrics and Gynecology International, vol. 2015, Article ID 817849, 13 pages, 2015. https://doi.org/10.1155/2015/817849.
  13. Forough Javanmanesh, Maryam Kashanian, Maryam Rahimi & Narges Sheikhansari (2016) A comparison between the effects of metformin and N-acetyl cysteine (NAC) on some metabolic and endocrine characteristics of women with polycystic ovary syndrome, Gynecological Endocrinology, 32:4, 285-289, 
  14. Zalewska A, Zięba S, Kostecka-Sochoń P, Kossakowska A, Żendzian-Piotrowska M, Matczuk J, Maciejczyk M. NAC Supplementation of Hyperglycemic Rats Prevents the Development of Insulin Resistance and Improves Antioxidant Status but Only Alleviates General and Salivary Gland Oxidative Stress. Oxid Med Cell Longev. 2020 Nov 14;2020:8831855.
  15. Samimi, M. , Jamilian, M. , Ebrahimi, F. A., Rahimi, M. , Tajbakhsh, B. and Asemi, Z. (2016), Oral carnitine supplementation reduces body weight and insulin resistance in women with polycystic ovary syndrome: a randomized, double‐blind, placebo‐controlled trial. Clin Endocrinol, 84: 851-857.
  16. Alaa M. Ismail, Ali Hassan Hamed, Srdjan Saso, Hossam H. Thabet, Adding l-carnitine to clomiphene resistant PCOS women improves the quality of ovulation and the pregnancy rate. A randomized clinical trial, European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology, Volume 180, 2014, Pages 148-152,
  17. Xu Y, Jiang W, Chen G, Zhu W, Ding W, Ge Z, Tan Y, Ma T, Cui G. L-carnitine treatment of insulin resistance: A systematic review and meta-analysis. Adv Clin Exp Med. 2017 Mar-Apr;26(2):333-338.
  18. Fathizadeh H, Milajerdi A, Reiner Ž, Kolahdooz F, Asemi Z. The effects of L-carnitine supplementation on glycemic control: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. EXCLI J. 2019 Aug 19;18:631-643.
  19. Samimi, M. , Zarezade Mehrizi, M. , Foroozanfard, F. (2017), The effects of coenzyme Q10 supplementation on glucose metabolism and lipid profiles in women with polycystic ovary syndrome: a randomized, double‐blind, placebo‐controlled trial. Clin Endocrinol, 86: 560-566.
  20. Yoo JY, Yum KS. Effect of Coenzyme Q 10 on Insulin Resistance in Korean Patients with Prediabetes: A Pilot Single-Center, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study. Biomed Res Int. 2018 Jul 29;2018:1613247.
  21. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 94, Issue 10, 1 October 2009, Pages 3842–3848, 
  22. Niamh Phelan, Annalouise O’Connor. Hormonal and metabolic effects of polyunsaturated fatty acids in young women with polycystic ovary syndrome: results from a cross-sectional analysis and a randomized, placebo-controlled, crossover trial – , The American Journal of Clinical Nutrition, Volume 93, Issue 3, 1 March 2011, Pages 652 662
  23. Exp Clin Endocrinol Diabetes 2018; 126(04): 222-228
  24. Jamilian, M. , Razavi, M. , Fakhrie Kashan, Z. , Ghandi, Y. , Bagherian, T. and Asemi, Z. (2015), Metabolic response to selenium supplementation in women with polycystic ovary syndrome: a randomized, double‐blind, placebo‐controlled trial. Clin Endocrinol, 82: 885-891.
  25. Raygan F, Behnejad M, Ostadmohammadi V, Bahmani F, Mansournia MA, Karamali F, Asemi Z. Selenium supplementation lowers insulin resistance and markers of cardio-metabolic risk in patients with congestive heart failure: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Br J Nutr. 2018 Jul;120(1):33-40.
  26. Behar A, Dennouni-Medjati N, Harek Y, Dali-Sahi M, Belhadj M, Meziane FZ. Selenium overexposure induces insulin resistance: In silico study. Diabetes Metab Syndr. 2020 Nov-Dec;14(6):1651-1657.