ハーブは、古くから体組織の治癒をはじめ、病原菌の殺菌、栄養状態の改善、気分高揚の促進に使われてきました。強力な薬剤と同じく、ハーブが害を及ぼさずに効果を発揮するには、正しい用法用量を守って摂取することが大切です。

一般に、ハーブとは薬、スパイス、香料として利用できる植物を指します。この記事では、特に他の医薬品を服用中の方が使用する際に注意したい薬用ハーブについておさらいしたいと思います。

なお、この記事の中で何度も触れる原則ですが、新しいサプリメントの摂取を始める際は必ずかかりつけ医に報告し、新たなハーブを取り入れる際はハーブに詳しい植物療法士や自然療法医に相談することが重要です。

以下でご説明する通り、食料品店やオンラインで購入できるハーブの中には、医薬品と併用したり、持病のある方が摂取すると危険なものも少なくありません。医師やハーバリストはもちろん、栄養士も、ハーブの安全な使用を指導するために高度な訓練を受けています。そんなプロの専門知識を活かして健康維持に努めてはいかがでしょうか。

1. 甘草根(カンゾウ根)と心疾患治療薬

甘草根には優れた薬効が数多くあり、抗炎症作用、アダプトゲン作用、抗菌作用もあります。ただし、甘草根は塩分貯留を促して血圧を上昇させるため、低血圧の方には治療計画の一環としては有効でも、高血圧の方には危険なものです。

甘草根は、市販薬の他、スーパーマーケットなどで手に入るチンキ剤やお茶などによく含まれる成分で、風邪・インフルエンザ、抗炎症、デトックスなどと謳う処方に配合されています。また、成分表示には「甘草」ではなく、学名のglycyrrhiza glabraと記載されていることもあり、そうなると見分けるのが難しくなります。高血圧の方は、ハーブ製品を購入する際に甘草またはglycyrrhizaと表示されていないか、さらに念のため、自宅にあるお茶にもこの成分が含まれていないか確めることをお勧めします。というのも、甘草は利尿薬やその他の心疾患治療薬の効果を妨げたり低下させることがあり、心血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞などの心血管系疾患)のリスクが高くなるためです。

高血圧や心血管疾患の他、体液貯留に問題がある方は、甘草根を摂取しないようにしましょう。唯一の例外は、DGL(脱グリチルリチン酸甘草)型の甘草です。このタイプの甘草は、塩分貯留を引き起こす甘草の主成分であるグリチルリチンを除去するように加工されています。そのため、DGLは高血圧でも甘草を摂取したいという方に安全な選択肢と言えるでしょう。ただし、この場合も、既に医薬品を服用中の方はハーブ製剤を取り入れる前に必ず医師にご相談ください。

2. セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)と抗うつ薬

セイヨウオトギリソウは、抗ウイルス作用や気分高揚作用に富む優れた植物ですが、2つの重要な相互作用に注意が必要です。まず、セイヨウオトギリソウは、他のセロトニンやモノアミン(MAO)の受容体調節薬(抗うつ薬、抗てんかん薬、下痢止めなど)と共に服用すると、セロトニン症候群を発症するおそれがあります。セロトニン症候群は、適切な治療を受けなければ、てんかん発作、発熱、筋硬直、振戦(しんせん。震え)、胃の不快感といった症状を引き起こし、場合によっては死に至ることもあります。さらに、セイヨウオトギリソウは、化学的避妊薬の代謝を高めることで、効果を低下させてしまう可能性もあります。その結果、破綻出血(不正出血のうち妊娠や器官の炎症などによる出血以外の機能性子宮出血の一つ)、ホルモンの問題、避妊薬の効果低下などが起こりやすくなります。気分向上や疾患予防の促進にセイヨウオトギリソウを使ってみたいとお考えの方は、かかりつけ医にビタミンD鉄分ビタミンB12の血中濃度を確認してもらうと良いでしょう。これらの栄養素はほとんどの薬剤と併用しても安全であり、不足している場合は、気分や免疫機能を概して安全に改善できることが実証されています。

3. イチョウとアスピリン

イチョウ(学名 Ginkgo biloba)は、メンタルヘルス、認知機能、心血管の健康へのプラス効果が研究されてきました。ただし、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)であるワルファリンやアスピリンなどの薬剤と相互作用する可能性があり、これら2種類の薬剤と併用すると過剰出血につながるとされています。このことから、特にアスピリンやワルファリンを使用中の方をはじめ、心血管疾患または出血・凝固障害がある方は、イチョウを摂取する前にかかりつけ医に相談し、代わりにバコパやベリー類など、薬と相互作用しないヌートロピック(向知性)サプリメントや血管強壮剤を選ぶのが賢明でしょう。

4. ハーブ緩下剤:センナとカスカラ

センナカスカラ・サグラダといったハーブ緩下剤(かんげざい。便秘薬)は、「肝臓サポート」、「腎臓サポート」、「大腸サポート」と銘打ったハーブブレンドに含まれていることが多いものです。このようなハーブ緩下剤は、摂取した食物をできるだけ早く消化器系に運ぶために短期間使用するのは良いのですが、続けて3日以上使用したり、2週間以上継続して摂取しないように注意が必要です。あらゆる緩下剤と同じく、ハーブ緩下剤にも、大腸から通常を上回る電解質を排泄させる働きがあるためです。この状態が続くと、脱水症状や電解質異常を引き起こし、心臓や脳などの器官の電気信号に影響を及ぼすことになります。また、緩下剤は経口薬の吸収にも影響し、消化器症状の抑制を目的とした薬の効力を低下させる可能性があります。そこで、便秘気味の方は、マグネシウムビタミンCなどのサプリメントを摂取することで、他の薬剤に影響を与えたり、脱水症状を起こさずにお通じ改善を図れるかどうかを医師に相談することをお勧めします。肝臓を安全にデトックスしたいなら、食物繊維と水を多めに摂ることから始めると良いでしょう。

5. 中枢神経系を調整する低用量ハーブ

この種のハーブは、重篤な障害や死亡を回避するために極めて低用量で調合しなければならないことから「低用量ハーブ」と呼ばれています。これらは、医薬品が発明される以前、各ハーブの化学的性質が完全に解明される前に、主に痛みを和らげる薬草として使用されていたハーブです。この低用量ハーブに関しては、実績のある専門家に最適な摂取量を判断してもらうか、よりリスクの少ない別の選択肢を考慮に入れる必要があるでしょう。低用量ハーブとして(少なくとも)以下のハーブが挙げられます。

以上のハーブの大半は神経系に作用するため、気分、痛み、発作などに効果のある医薬品と相互作用する可能性があります。なお、くれぐれも医師等の指示なしに独断で使用しないでください。

6. 肝臓に負担をかけるハーブ

すべての薬剤は肝臓で代謝されます。ハーブ製剤の中には、過剰摂取または長期摂取の他、製造や品質管理の不備によるカビ、細菌、重金属などの混入により、肝臓にダメージを与えるものがあります。

よく知られているハーブにも、以下のように肝臓障害を引き起こすとされるものがあります。

  • チャパラル(別名 クレオソートブッシュ)
  • カヴァの根(目下注目を集めている抗不安作用のある根)
  • クサノオウ(学名 Chelidonium majus)
  • スーヤ(和名 ニオイヒバ、特にエッセンシャルオイルを内服した場合)

これらのハーブは安全に使用できますが、専門家の指導が必要であり、必ず使用前にかかりつけ医に相談して適切な用法用量を指示してもらうことが大切です。

このリストに入るようなハーブは他にも多数あります。どのようなハーブでも過剰に摂取すると肝臓にダメージを与える可能性があるため、医師の指示なしで1日に何度も摂取したり、何週間も続けて使用しないようにしましょう。この件についての詳細は、PubMed(医学・生物学文献データベース)で "herb-induced liver injury”(ハーブを原因とする肝臓損傷)と検索してみてください。

‌‌‌‌7. 特筆すべき植物:グレープフルーツ

グレープフルーツは厳密にはハーブとは言えませんが、この果汁はアメリカだけでも20%以上の家庭で飲まれており、世界中で広く摂取されているため取り上げたいと思います。というのも、グレープフルーツは肝臓や腸の酵素と相互作用し、血中の薬剤濃度を高めることがあるためです。

そうなると、通常の用量で服薬しても、薬効が高すぎたり、逆に低すぎたりすることがあります。このような相互作用の可能性を抑えるために、グレープフルーツは投薬から数時間おいて食べるようにしましょう。また、特定の処方箋とグレープフルーツの果実や果汁を併用しても問題がないかどうかを医師に確認することをお勧めします。

まとめ

ハーブによっては今回ご説明したような相互作用があるとはいえ、安全で効果的なハーブも多数存在し、適切な指導と用法用量により健康増進が図ることができます。ハーブ関連のサプリメントを服用する際は、必ずかかりつけ医にその旨を伝え、自分に合ったハーブを選ぶ際も、医療従事者の指導やアドバイスを受けることがとても重要です。あくまでもハーブは薬であり、できるだけ安全に使用して効果を最大限に発揮させるには、それ相応の注意が必要であることを覚えておきましょう。

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