虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん。心臓を動かす筋肉すなわち心筋組織に血液が行き渡らないことで起こる心臓病)は、世界中で死因の上位に挙げられ、2019年の死亡者数は約900万人にのぼりました。このように、世界の死亡者の16%を占める心疾患は、2000年以降200万人以上も増加しており、最も急増している死因と言えるでしょう。

虚血性心疾患は、動脈壁にプラーク(動脈硬化巣)が形成され、心臓に血液と酸素を送っている冠動脈が狭くなることで起きます。そのようなプラーク形成の原因は、血中の脂質やコレステロール値のコントロール不良がほとんどです。その脂質濃度の上昇を引き起こす要因として、脂肪や動物性タンパク質を多く含む食事が挙げられますが、座りっぱなしの生活や運動不足の他、慢性炎症も心疾患の発症につながります。

心疾患の中には、多様な理由を原因とするものがありますが、ほとんどの方は生活習慣を見直すことで心疾患発症のリスクを減らすことができるでしょう。適切な食事、運動、栄養補助食品はいずれも心臓の健康増進に期待できます。

‌‌‌‌心臓に良い基本的な食品

心臓の健康に良い食品には、美味しく食べられるものも多く揃っています。ここでは、果物、野菜、穀物、魚類、ナッツ類など、特に心臓に良いとされる食品を挙げてみましょう。

心臓に良い果物

  • アボカド:虚血性心疾患は飽和脂肪の多い食事が一因となることが多いため、心臓に良い食事を始めたい方には、動物性脂肪の代わりに良質な脂質が摂れるアボカドをお勧めします。アボカドに含まれる一価不飽和脂肪酸は、低比重リポタンパク質(または低密度リポタンパク質、LDLすなわち悪玉)コレステロール値と心疾患のリスクを下げる効果があるとされ、心臓の健康に配慮した食事に最適です。また、カリウムも多く含むアボカドは、血圧降下の他、心臓発作や脳卒中のリスク軽減にも期待できそうです。
  • ベリー類:アントシアニンをはじめとする強力な抗酸化物質を多く含むベリー類は、心疾患を引き起こしやすい炎症や酸化ストレスの予防に役立ちます。ベリー類を日常的に摂取することで、LDL(悪玉)コレステロールや収縮期血圧(最高血圧)が低下することがさまざまな研究で示されています。例えば、ブルーベリーを毎日食べることで、血管壁の内層にある細胞の機能が向上し、血液凝固の阻害につながる可能性があるという研究結果があります。
  • バナナ:心臓の健康に欠かせないマグネシウムカリウムの最適な供給源であるバナナは、心疾患の重大な危険因子である高血圧の予防に役立つと考えられます。大半の人が十分に摂取していないカリウムですが、こちらのミネラルを多く含む食事は心疾患のリスクを最大27%低下させます。

心臓に良い野菜

  • 葉物野菜:ビタミンやミネラルが豊富な青菜ケール、ホウレンソウ、キャベツなどの葉物野菜には、心臓を保護する抗酸化物質が豊富に含まれています。また、硝酸塩ビタミンKも多く含まれているため、血圧を下げ、動脈を保護し、動脈硬化を予防する働きがあります。
  • ニンニク:香味野菜としてお馴染みのニンニクには、血圧やコレステロール値を下げる効果が認められているアリシンという化合物が多く含まれています。また、ニンニクは、血液凝固や脳卒中の原因となる血小板の蓄積を抑える働きもあります。

心臓に良い穀物

  • 全粒穀物:精製穀物よりも食物繊維が豊富な全粒穀物は、心臓の健康に有効であることがわかっています。玄米、オーツ麦、ライ麦、キヌア、全粒粉などの全粒穀物で、悪玉LDLコレステロール低下と心疾患のリスク軽減が図れます。

心臓に良い魚類

  • サケ:オメガ3を多く含むサケを8週間にわたって週3回食べると、拡張期血圧(最低血圧)が大幅に低下することが研究で示されています。サケの他にも、マグロ、サバ、イワシといった脂肪の多い魚を食べることで、総コレステロール値、空腹時血糖値、収縮期血圧が低下するという研究結果もあります。
  • フィッシュオイルのサプリメントは、動脈の機能を改善し、血中脂質と血圧を低下させるなど、心臓の健康に有益であることがわかっています。

心臓に良いナッツ・種子類

  • クルミ:研究によると、クルミは、悪玉LDLコレステロールを減らし、炎症を抑え、血圧を下げるため、心疾患のリスクを軽減する効果があります。
  • アーモンド:食物繊維と一価不飽和脂肪を豊富に含むアーモンドは、心疾患の原因となるコレステロールやお腹の脂肪を減らすことから、心臓の健康に優れた食品と言えます。
  • ヘンプシード(麻の実):アミノ酸の一種であるアルギニンを多く含むヘンプシードは、心疾患の一因とされる血中の炎症マーカー(炎症指標)を低下させると言われています。
  • フラックスシード(亜麻仁種子) :総コレステロール値と悪玉LDLコレステロール値を低下させることが知られているフラックスシードは、サラダやナッツバター、シリアルなどに加えると心臓の健康維持を後押しできるでしょう。また、フラックスシードには、心疾患の大きな要因である血圧を下げる効果があることも明らかになっています。

心臓に良い豆類

  • 大豆 :イソフラボンが豊富な大豆は、コレステロール値を下げるのに役立つと考えられています。特に、未成熟の大豆である枝豆は、心臓に良い食物繊維抗酸化物質を多く含んでいます。
  • うずら豆:有益な腸内細菌によって発酵されたうずらは、悪玉LDLコレステロールと血中の中性脂肪を減少させます。

‌‌心臓の健康に配慮した生活習慣‌‌

心臓に良い食品を毎日の食事に取り入れるだけでなく、生活習慣を見直すことで、心臓の健康増進と心疾患のリスク軽減に役立ちます。

食事

食事代わりにプロテインシェイクを摂ることで、タンパク質を十分に摂取しつつ、食事性コレステロールの摂取量を抑えやすくなります。食事性コレステロールが減ると、冠動脈疾患、ひいては虚血性心疾患のリスク軽減につながります。

運動

座りっぱなしの生活は喫煙に匹敵するほどのリスクがあると言われており、心疾患の発症率上昇の一因となっています。そこで、心臓の健康を改善する上でお勧めしたいのが、ウォーキング、ランニング、水泳、縄跳び、テニス、サイクリングなどの有酸素運動です。

多くの医師が週150分以上の適度な有酸素運動を推奨していますが、これは1日30分の運動を週5日行うだけでも達成できます。

運動で心臓を丈夫にするポイントは心拍数と呼吸数が上がる程度の速さで動くことですが、くれぐれも張り切りすぎないように、運動中は隣の人と会話ができるくらいの速度を心がけましょう。

ストレスを減らす

「サイレントキラー」と呼ばれるストレスは、世界中で心疾患の原因となっています。長期間ストレスが続くと、ストレスホルモンと言われるコルチゾールの血中濃度が高まることで、心疾患の代表的な危険因子であるコレステロール値、血圧値、血糖値の上昇につながります。

また、ストレスにより動脈壁にプラークが溜まりやすくなることも心疾患の原因となります。

禁煙する

研究によると、喫煙は、耐糖能異常(糖尿病と診断されるほどの高血糖ではないが血糖値が正常より高い状態)や血中の高比重リポタンパク質(または高密度リポタンパク質、HDLすなわち善玉)コレステロール値の低下につながり、心臓の健康に悪影響を及ぼします。また、喫煙は脳血管障害や虚血性心疾患との関連も指摘されています。

‌‌心臓の健康をサポートする4種類のサプリメント

ビタミンD

ビタミンD欠乏は、心臓発作、末梢動脈疾患(手足の血管に動脈硬化が起こることで血管が狭くなったり詰まってしまう状態)、うっ血性心不全(心臓のポンプ機能が低下して血液の流れが滞ってしまう状態)の危険因子であることが研究で明らかになっています。ビタミンD欠乏は、屋外で日光を浴びる時間が減ると懸念される問題です。というのも、皮膚が日光に当たるとビタミンDが合成されるためです。

ビタミンDが不足している場合は、ビタミンDのサプリメントを摂取することで心疾患のリスク軽減を図ることができます。主に過剰摂取を原因とする毒性を避けるためにも、ビタミンDのサプリメントを取り入れる前に、かかりつけ医に相談して血中濃度を測定してもらうと良いでしょう。

コエンザイムQ10

CoQ10としてよく知られるコエンザイムQ10は、心臓発作の再発リスクの軽減、うっ血性心不全患者の転帰(症状経過)の改善、血圧の低下など、心臓の健康を促進します。

また、CoQ10は、コレステロール低下薬であるスタチン系薬剤にありがちな筋肉痛や脱力感といった副作用を抑える働きもあります。さらに、CoQ10は心臓に良い善玉HDLコレステロール値を上昇させるという研究結果も出ています。

CoQ10 — 心臓の健康に最適なサプリメント:詳しくはこちら

オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸は、中性脂肪の減少をはじめ、血圧の低下や血液凝固の抑制を助けることで知られており、心臓の健康に役立つサプリメントとして手堅い選択肢と言えるでしょう。

紅麹(ベニコウジ、レッドイーストライス)

固有の成分であるモナコリンKを多く含む紅麹は、ロバスタチンのようなスタチン系のコレステロール低下薬に代わる自然食品です。モナコリンKは、ロバスタチンの有効成分と化学的に同一であるため、筋肉痛や脱力感などの副作用を引き起こす可能性があります。

ただし、紅麹とCoQ10を併用することで、紅麹に起こり得る副作用を抑えやすくなります。

レッドイーストライスがコレステロールを低下:詳しくはこちら

‌‌‌‌心臓の健康についてのまとめ

健康増進と生活の質の向上を目指すなら、心臓に良い食事を始めることで大きな成果が得られるでしょう。心臓の健康に配慮した生活習慣に切り替えるきっかけとして、心疾患のリスクを減らしたり、エネルギーとスタミナを向上させるなど、さまざまな要素が挙げられます。

また、心臓に良い食事を心がけるなら、ナトリウム、糖分、飽和脂肪をなるべく控えることも大切です。DASH食(高血圧を防ぐ食事方法)と地中海食は、どちらも心臓の健康に良いとされています。

有酸素運動を日常的に行うことも、心臓の健康を維持する上で重要な要素となります。ハイキング、サイクリング、スキー、ボート漕ぎなど、楽しみながら取り組める野外活動で心拍数や呼吸数を上げると良いでしょう。また、屋外での運動中に日光を浴びることで、ビタミンD合成や一酸化窒素の生成が促進されることも心臓の健康を後押しします。

このように、心臓の健康に配慮した食事に切り替え、有酸素運動を増やし、心臓に良いサプリメントを取り入れることで、心疾患のリスクを総合的に軽減できると言えるでしょう。

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