フェヌグリーク(学名 Trigonella foenum-graecum、別名メティ、和名コロハ)は中国伝統医学やアーユルヴェーダ医学で使用され、何千年もの昔からその効果が記録されてきたハーブです。インド料理のスパイスとしてもお馴染みのフェヌグリークは、ナッツのような香ばしさで料理の味わいを深め、ビタミンやミネラルの栄養価を高めます。

大さじ1杯のフェヌグリークシードで、食物繊維とタンパク質がそれぞれ3g摂れる他、鉄分は1日の推奨摂取量の20%を摂取できます。一般的に、フェヌグリークは、毎日の食事に取り入れやすい粉末タイプや種子として販売されています。

フェヌグリークの効能

ヒト研究、動物研究ともにたびたび示唆されている通り、血糖値やコレステロール値の低下をはじめ、代謝の向上、消化促進、陣痛誘発などは、フェヌグリークが発揮すると考えられる効果のほんの一例です。

1. 血糖値の低下に有望なフェヌグリーク

ある研究では、水に浸したフェヌグリークシードの粉末15gを摂取することで、非インスリン依存型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病とも呼ばれる2型糖尿病)患者の食後血糖値が有意に低下することがわかりました。これは、研究参加者がフェヌグリークパウダーを摂取した後にインスリン濃度が低下したものです。

フェヌグリークは、糖尿病患者の空腹時血糖値を安定した状態に保つのにも役立つことが示されています。また、追加研究では、1型糖尿病患者が10日間にわたって1日2回、昼・夕食時にフェヌグリークシードパウダー50gを摂取したところ、血糖値が改善した上に、総コレステロール値とLDL(悪玉)コレステロール値が低下しました。

2. コレステロールの低下が期待できるフェヌグリーク

フェヌグリークがコレステロール値を下げるという可能性を示すエビデンスがあります。フェヌグリーク2.5gを1日2回、3ヶ月間投与した研究では、非インスリン依存型糖尿病と冠動脈疾患の両方に罹患した患者の総コレステロールと中性脂肪(トリグリセリド)はもちろん、食後血糖値と空腹時血糖値も著しく低下しました。

別の研究でも、1日2回、フェヌグリークパウダー50gを10日間摂取した1型糖尿病患者のLDLコレステロール値と総コレステロール値が低下したことがわかっています。

3. 消化器系の健康改善が図れるフェヌグリーク

古くから伝わるこのハーブには抗潰瘍作用があることが研究で明らかになっています。エタノール起因性の胃潰瘍の患者にフェヌグリークのサプリメントを投与したことで、フェヌグリークシードから抽出されたジェルエキスにかなりの潰瘍予防効果があることがわかりました。

この保護効果は、フェヌグリークの抗分泌作用に加え、胃の内壁の抗酸化力を高めて粘膜の損傷を抑えたことによるものと思われます。この研究では、胃酸分泌を抑制する医薬品オメプラゾールよりも、フェヌグリークシードジェルの方が胃障害の発生を防ぐ効果があることも判明しました。

さらに、フェヌグリークには、胸焼けの不快感を和らげる効果があることも示されています。パイロット研究(研究の初期段階で研究計画が適切かどうかを確かめたり、修正の必要がないかを調べるために行なう小規模な研究)によると、胸焼けの頻度が高い被験者がフェヌグリークを2週間摂取したところ、症状が大幅に抑えられた他、市販の制酸剤(胃酸を中和する薬)と同等の効果があることもわかりました。

この他にも、フェヌグリークに期待できる意外な効果に食欲抑制があります。フェヌグリークに関する臨床試験では、食欲と脂質の摂取量の減少が観察されています。

わずか大さじ1杯に水溶性食物繊維を3g含むフェヌグリークは、腹部膨満感や便秘の緩和を促します。また、フェヌグリークの消炎鎮痛作用は、消化管の粘膜に保護膜を形成して刺激を抑えることで、胃腸の不快感を和らげるのに役立ちます。

4. 月経痛の緩和に有効とみられるフェヌグリーク

古代エジプト人は、月経痛すなわち月経困難症の対策としてフェヌグリークを使用していました。一方、現在の研究では、2ヶ月連続で月経周期の1〜3日目に1日3回、フェヌグリークシードパウダーを900mg摂取した女性は、月経痛の程度と期間が軽減されたという結果が出ています。他にも、フェヌグリークによる治療に反応した症状として、吐き気、嘔吐、頭痛、疲労感などが挙げられ、副作用は報告されていません。

5. 男女ともに性欲の改善に期待できるフェヌグリーク

フェヌグリークを摂取することで、男女問わず性欲と性的興奮が高まることが報告されています。

6週間の研究でフェヌグリークを600mg摂取した男性30人のほとんどが、健康的な性機能、スタミナ、性的興奮、精力が増強したと報告しました。また、同量のフェヌグリークエキスを摂取した女性は、8週間のサプリメント摂取後、フリー(遊離型)テストステロン(男性ホルモンであるテストステロンのうち1〜3%であるフリーテストステロンだけが活性型)とエストラジオール(女性ホルモンであるエストロゲンの一種)の濃度が大幅に上昇しました。

さらに、その後の研究で、フェヌグリークが男性のテストステロン濃度の維持にも役立つ可能性があることがわかりました。ある8週間の研究では、男子大学生30人がフェヌグリークを1日500mg摂取し、週4回ウエイトリフティングを行いました。その結果、フェヌグリーク非摂取群はテストステロン値がわずかに低下した一方で、摂取群はテストステロン値が上昇し、体脂肪率が減少しました。ちなみに、テストステロンは男性の性欲にもプラス効果をもたらします。

6. 母乳の分泌促進に有望なフェヌグリーク

母乳の出が悪いと悩むお母さんは多いものですが、フェヌグリークは乳汁分泌を促す処方薬の代用となり得る天然成分です。

ある研究では、66人の母親が3群に振り分けられ、第1群はフェヌグリークティーを、第2群はプラセボを摂取し、第3群の対照群(研究中の治療を受けていない群)は何も摂取しませんでした。結果として、プラセボ群と対照群でいずれも搾乳量が34ml増えた程度だった一方で、フェヌグリークティー群の搾乳量は73mlまで増加しました。

別の研究では、77人の母親がフェヌグリークシードティーを14日間飲んだところ、母乳の分泌量が増えたことで、赤ちゃんの体重も増加したことがわかりました。

7. 皮膚炎の改善が図れるフェヌグリーク

フェヌグリークは、皮膚の炎症を鎮める湿布剤としてさまざまな文化圏で使用されてきました。古くから、フェヌグリークは、湿疹、潰瘍、毛嚢炎(もうのうえん。毛根を包む袋状の組織である毛包の感染症)による膿瘍形成などの炎症性皮膚疾患の治療に用いられてきました。

最近の動物研究では、フェヌグリークシードエキスが、足浮腫(足のむくみ)を起こしたラットの痛みや炎症を有意に減少させたことがわかっています。この抗炎症および鎮痛作用は、フェヌグリークに含まれる粘液多糖とステロイドサポニンによるものと考えられます。

フェヌグリークの使用方法

通常、フェヌグリークのサプリメントは粉末タイプや種子として販売されていますが、他にもこの栄養価の高いハーブを取り入れる方法が多数あります。

そこで、主なフェヌグリークの使用方法を以下にまとめてみました。

  • 経口サプリメントカプセル:これはフェヌグリークの血糖値・コレステロール値低下作用を手軽に実感したいという方に最適な方法でしょう。
  • ハーブティー:前述のように、母乳量の増加に関する研究でハーブティーが使われていることを考えると、母乳育児中の女性にはフェヌグリークのハーブティーを飲むのが一番ではないでしょうか。ただし、サプリメントでもハーブティーと同じような効果が得られるかもしれません。このハーブティーを淹れるには、スプーン1杯のフェヌグリークパウダーをお湯に入れてかき混ぜるだけです。また、フェヌグリークシードをターメリック(ウコン)シナモンショウガといった抗炎症作用のあるハーブと合わせて10分ほど煮出し、冷ましてから飲んでみてはいかがでしょうか。
  • 湿布:フェヌグリークシードを使った外用クリームは皮膚刺激や炎症のサポートにお勧めです。
  • ハーブバス:フェヌグリークシードやパウダーを温かいお風呂に入れると、湿疹などの炎症性皮膚疾患に効果が期待できます。
  • 種子:フェヌグリークシードを一晩水に浸しておくと、翌朝、調理することなくスプーン1杯摂るだけで自然に消化器系と血糖値をサポートできます。
  • スプラウト:フェヌグリークシードを一晩水に浸し、朝に水を変えることにより、数日で発芽させることができます。このプロセスを2~3日繰り返すと緑色の芽が出てきますので、野菜や穀物などの料理に加えてどうぞ。いわばフェヌグリークのもやしのようなスプラウトをサラダやキヌアなどに振りかけると食感と風味が増します。
  • 香味料:インドの伝統料理の風味付けに使われるフェヌグリークは、栄養価が高く、ナッツのような香ばしい美味しさで、幅広い料理にアクセントをつけるハーブです。カレーやソースによく使われるフェヌグリークパウダーとシードですが、お好みの料理に自由に加えてみましょう。

フェヌグリークのリスクと副作用

フェヌグリークは概ね安全とされていますが、軽度の副作用の他、薬物や他のハーブとの相互作用の可能性があることに注意が必要です。

例えば、ヒト研究では、フェヌグリークの使用による消化不良や下痢がみられた程度ですが、かなり高用量のフェヌグリークを使用した動物研究では、生殖能力の低下、流産のリスク増加、DNAの損傷、神経障害といった深刻な副作用が確認されています。これらの動物研究で使用された用量は、ヒトの推奨摂取量よりもはるかに高いものでした。

血糖降下薬を服用中の糖尿病患者の方は、フェヌグリークにも血糖値を下げる作用があるためご注意ください。

また、フェヌグリークは食欲を抑制するため、脂質の摂取量が減少しやすいことから、摂食障害のある方や食欲が低下している方は摂取しないことをお勧めします。

フェヌグリークに限らず、新しいハーブやサプリメントを取り入れる際は、必ず事前にかかりつけ医にご相談ください。

フェヌグリークについてのまとめ

薬草や香味料として長い歴史を持つフェヌグリークの効能は多くの文化圏で知られています。カレーの風味付けから、ハーブティーによる母乳分泌の促進まで、フェヌグリークは栄養価が高いだけでなく、甘味とほろ苦さが絶妙のナッツのような香ばしさも味わえます。

個々の事情やニーズにかかわらず、食物繊維タンパク質鉄分マグネシウムビタミンB6などの栄養素が豊富に含まれ、しかも美味しいフェヌグリークは、どなたにもお勧めできるハーブと言えるでしょう。

参考文献:

  1. Basch E, Ulbricht C, Kuo G, Szapary P, Smith M. Therapeutic applications of fenugreek. Altern Med Rev. 2003;8(1):20-27.
  2. Madar Z, Abel R, Samish S, Arad J. Glucose-lowering effect of fenugreek in non-insulin dependent diabetics. Eur J Clin Nutr. 1988;42(1):51-54.
  3. Neelakantan N, Narayanan M, de Souza RJ, van Dam RM. Effect of fenugreek (Trigonella foenum-graecum L.) intake on glycemia: a meta-analysis of clinical trials. Nutr J. 2014;13:7. Published 2014 Jan 18. doi:10.1186/1475-2891-13-7
  4. Sharma RD, Raghuram TC, Rao NS. Effect of fenugreek seeds on blood glucose and serum lipids in type I diabetes. Eur J Clin Nutr. 1990;44(4):301-306.
  5. Bordia A, Verma SK, Srivastava KC. Effect of ginger (Zingiber officinale Rosc.) and fenugreek (Trigonella foenumgraecum L.) on blood lipids, blood sugar and platelet aggregation in patients with coronary artery disease. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 1997;56(5):379-384. doi:10.1016/s0952-3278(97)90587-1
  6. Pandian RS, Anuradha CV, Viswanathan P. Gastroprotective effect of fenugreek seeds (Trigonella foenum graecum) on experimental gastric ulcer in rats. J Ethnopharmacol. 2002;81(3):393-397. doi:10.1016/s0378-8741(02)00117-4
  7. DiSilvestro RA, Verbruggen MA, Offutt EJ. Anti-heartburn effects of a fenugreek fiber product. Phytother Res. 2011;25(1):88-91. doi:10.1002/ptr.3229
  8. Mathern JR, Raatz SK, Thomas W, Slavin JL. Effect of fenugreek fiber on satiety, blood glucose and insulin response and energy intake in obese subjects. Phytother Res. 2009;23(11):1543-1548. doi:10.1002/ptr.2795
  9. Chevassus H, Molinier N, Costa F, Galtier F, Renard E, Petit P. A fenugreek seed extract selectively reduces spontaneous fat consumption in healthy volunteers. Eur J Clin Pharmacol. 2009;65(12):1175-1178. doi:10.1007/s00228-009-0733-5
  10. Younesy S, Amiraliakbari S, Esmaeili S, Alavimajd H, Nouraei S. Effects of fenugreek seed on the severity and systemic symptoms of dysmenorrhea. J Reprod Infertil. 2014;15(1):41-48.
  11. Steels E, Rao A, Vitetta L. Physiological aspects of male libido enhanced by standardized Trigonella foenum-graecum extract and mineral formulation. Phytother Res. 2011;25(9):1294-1300. doi:10.1002/ptr.3360
  12. Turkyılmaz C, Onal E, Hirfanoglu IM, et al. The effect of galactagogue herbal tea on breast milk production and short-term catch-up of birth weight in the first week of life. J Altern Complement Med. 2011;17(2):139-142. doi:10.1089/acm.2010.0090
  13. Vyas S, Agrawal RP, Solanki P, Trivedi P. Analgesic and anti-inflammatory activities of Trigonella foenum-graecum (seed) extract. Acta Pol Pharm. 2008;65(4):473-476.
  14. Dawid-Pać R. Medicinal plants used in treatment of inflammatory skin diseases. Postepy Dermatol Alergol. 2013;30(3):170-177. doi:10.5114/pdia.2013.35620