秋から冬にかけて、家族や友人にとっておきの手料理を振る舞う機会が増えるものですが、ただ喜んでもらうだけでなく、健康的で美味しい料理となると、何を作れば良いのか迷ってしまうかもしれません。特に、ご馳走したい大切な人が血糖値の問題を抱えているならなおさらです。これはなぜなら、感謝祭やクリスマスなどのお祝い事に登場するお馴染みのメニューやデザートは血糖値を上げがちで、できれば避けたいものが多いためです。

この記事では、ご馳走を楽しみながらもインスリンを正常値に維持できるように、人工糖類を最小限に抑え、マクロ栄養素(多量栄養素:タンパク質、脂質、炭水化物)、食物繊維、グリセミック指数、グリセミック負荷などの科学的知見を活用したおもてなしの料理とデザートをご紹介します。

血糖値の重要性

血糖値の管理に悩む方やそのご家族は、果糖や野菜のデンプンも含めて、糖分は一切禁物だと思い込んでいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。すべての糖質が体に悪いわけではないのです。この考えを理解する上で、まず基本的なヒト生物学と栄養学についておさらいし、後半でレシピをご紹介しましょう。

細胞は糖分を取り込んで活動するもの

体内の細胞はすべてグルコース(ブドウ糖)を栄養にして動いているため、グルコースが不足すると、毎日体内で起こっている500種以上の生化学反応に必要なエネルギーを作り出すことができなくなります。そうなると、低血糖やエネルギー低下の他にも、倦怠感、ブレインフォグ(脳霧。思考力低下)、脱力感、震え、さらには悲しみやイライラといった感情的な症状も出やすくなり、全身に悪影響が生じます。

上記の例を見れば、糖分が私達の生存と健康にいかに重要かがお分かりいただけると思います。では、血糖値を管理する必要があるというのは、実際にどのような状況を指すのでしょうか。空腹感と満腹感や食欲の増進と抑制には、インスリン、レプチン、グレリンなどのホルモンが大きな役割を果たしています。

血糖値の問題を引き起こすホルモンと生活習慣

2型糖尿病に見られるインスリン抵抗性や1型糖尿病に多いインスリン分泌不全があると、たとえ1日に必要な量の糖分を摂取しても、細胞に十分な糖分が行き渡りません。これは、インスリンがいわば生化学的な鍵であり、細胞を解放して、摂取された糖分を吸収できるようにする存在だからです。そのため、インスリンがなければ、細胞は血液中のグルコースを取り込めず、十分に食事しても低血糖になってしまいます。つまり、問題は糖分というよりも、むしろインスリンにあるのです。

インスリンはホルモンの一種であり、その分泌量や機能は、特定の疾患や生活習慣によって徐々に変化していきます。2型糖尿病は、薬物療法、生活習慣の見直し、食事などを組み合わせることで多くの場合は改善可能ですが、1型糖尿病は現時点で治す方法はなく、インスリンによる管理が不可欠です。ここからは、インスリンの分泌量が正常な方にも過剰な方にも役立つ生活習慣と食事についてお話しましょう。

1型・2型に関わらず、糖尿病がある方は、食生活を大幅に変える前に、管理栄養士や内分泌科医などの専門家にご相談ください。また、高血圧と診断された場合は、後述のレシピやアイデアを参考に改善を図ってみてはいかがでしょうか。

重要なのはグリセミック指数とグリセミック負荷

砂糖やデンプンを摂っても、血糖値に大きな影響を与えない暗号があるのをご存知でしょうか。それがグリセミック指数(GI値)とグリセミック負荷(GL値)です。グリセミック指数とは、ある食品が血糖値に及ぼす影響をグルコースと比較して表したものです。GI値が高いほど食品の糖分が多く、血糖値が急上昇する可能性が高くなります。

高GI食品には、精白パン、白米、サトウキビ糖(ショ糖)などがあり、低GI食品の代表的なものには、多くの葉野菜をはじめ、ナッツ類種子類などがあります。

以下に挙げる食事やおやつは低GI食品が中心で、腹持ちが良く、ヘルシーなものばかりです。

血糖値を上げずにおもてなしできるパーティー料理とデザート

ヘルシーなサイドメニュー:野菜のロースト

ローストしたトウモロコシ、芽キャベツ、アスパラガス、ブロッコリー、ニンジンなどが好きな方は多いと思いますが、メインの料理に集中するあまり、付け合せのことまで頭が回らないという方は多いのではないでしょうか。ほとんどの野菜は糖分が少なく、食物繊維が豊富で、デンプン質は控えめのため、GI値・GL値ともに非常に低いのが特徴です。さらに重要なのは、野菜には免疫系や心血管系の他、肌の健康維持に必要なビタミンやミネラルなどの栄養素が豊富に含まれている点です。

なお、バターは糖分は多くないものの、高カロリーで飽和脂肪が多く、通常は塩分も含まれるため、できるだけバターや油の量を控えてローストしましょう。また、シリコン製のベーキングマットなどを活用すれば、油を使わなくてもこびりつかずに香ばしく焼き上がるので便利です。

テーブルに出した途端にあっという間にお皿が空になる以下のようなサイドメニューを作ってみてはいかがでしょう。

オードブル、クリュディテ(野菜の盛り合わせ)、シャルキュトリーボード(ハム・サラミなど食肉加工品やナッツ類などの盛り合わせ)

ホームパーティーでは、メインコースの前にオードブルや野菜またはハムなどの盛り合わせがよく出されるものですが、このような軽食があるとヘルシーな食材を摂れる上に、空腹のまま料理を待つよりも会話が弾みます。シャルキュトリーボードには、以下のような低GI食品が多く使われています。

  • 新鮮な野菜
  • オリーブ
  • 肉類の薄切り
  • ナッツ類
  • ローストピーマンや酢漬けのタマネギまたはニンニク
  • レンズ豆などの豆類を使ったディップ

このような品目を中心に、新鮮な果物(ドライフルーツは不可)を取り入れることをお勧めします。一方、乳製品、クラッカー、チーズ、スプレッド(ピーナッツバターやクリームチーズなど)などは、摂取カロリーを増やし、血糖値を上げやすいため除外します。乳製品が血糖値を上昇させると聞くと驚く方もいるかもしれませんが、牛由来の乳製品は、GI値が高いサトウキビの糖以上にインスリン値を上昇させるという研究結果があります。そのため、血糖値の管理が難しい方には、乳製品を避けるか、なるべく控えるように勧めています。

肉類と野菜

七面鳥とアスパラガス、牛肉とインゲン豆、鶏肉とブロッコリーのローストといった組み合わせは、ご馳走が続く季節も血糖コントロールを図るお肉好きの方にとって最適なレシピです。肉そのものは、パン粉をはじめ、糖質を含むソースやトッピングを添えない限り常に低GI食品のため、肉料理はグリルするか、野菜と一緒にフライパンで焼くなどして糖質を抑えましょう。

豆類(インゲン豆、レンズ豆など)

レンズ豆などの豆類を使った料理は、食物繊維が豊富なことから、炭水化物が含まれていても低GI食品です。ミートローフの代わりにレンズ豆のローフを作ったり、メインディッシュのひよこ豆のパスタに白インゲン豆とホウレンソウのサラダを合わせるなどして食物繊維を増やしながら、もちろん美味しさも味わいましょう。

ヘルシーなデザート

シナモン風味のサツマイモマッシュ:簡単にできるこのレシピは、1食あたりの糖分がわずか5g、正味炭水化物14gです。作り方は、小さめのサツマイモ4〜5個を洗い、丸ごとオーブンで焼くだけです。ポイントは、調理中に空気が抜けるようにフォークなどを刺していくつか穴を開けておくことと、食物繊維や栄養素を無駄にしないために皮ごと焼くことです。私は普段、230度のオーブンで45分ほど焼いています。焼きあがったらオーブンから取り出して熱いうちに潰します。潰すのが面倒であればフードプロセッサーを使っても良いでしょう。マッシュしたサツマイモには、シナモンやパンプキンパイ用のスパイスミックスなどを好みの味になるまで加えます。甘味が足りない場合は、ステビアなどのノンカロリー甘味料を加えて味を整えます。できたてはもちろん、冷めてもおいしくいただけるこのマッシュはパーティーの人気メニューで、このレシピで8~10人分できます。

ココナッツ・チアシードプディング:チアシードプディングは、糖分控えめで栄養価の高い美味しいデザートを作る際に重宝する一品です。基本のプディングは、チアシード大さじ2〜3、乳成分を含まない植物性ミルクを1~2カップに、ステビア少々と果物を適量加えたもので、かなり薄味のため、バニラカカオパウダーシナモンなどお好みのフレーバーを混ぜて自由に楽しめます。さらに、ココア味のチアシードプディングにペパーミントを加えると、砂糖を使わずにミントチョコチップアイスクリームのような美味しいスイーツになります。是非お試しください。