‌‌‌‌ブラックコホシュとは?

ブラックコホシュは、17種に大別されるサラシナショウマ属のうち、ハーブサプリメントとして最も知名度の高い植物です。この多年生の顕花植物の異種は世界中に分布し、その医学的用途はヨーロッパ、アジア共にハーブの本草書(ほんぞうしょ=薬物についての知識をまとめた書物。別名マテリア・メディカ)に記録されています。

東洋伝統医学ではショウマ(升麻)という生薬として知られ、主にオオミツバショウマ(学名 Cimicifuga heracleifolia)フブキショウマ(Cimicifuga dahurica)が用いられる一方で、ヨーロッパでは古くからCimicifuga racemosa(アメリカショウマすなわちブラックコホシュ)の根がよく使用されてきました。サラシナショウマ属のハーブサプリメントには、自然発生化合物であるトリテルペンやポリフェノールが豊富に含まれています。植物栄養素化合物の多数の固有種と含有率がサラシナショウマ属の異なる種で確認されていることから、その作用機序(薬物が生体に何かしらの効果を及ぼすメカニズム)の鍵を握るのはトリテルペンやポリフェノールといった化合物と言えるかもしれません。

そのため現在では、ブラックコホシュの近縁種を個々に識別し、その効果を調べることを目標に、この人気の高い植物に関する研究が行われています。

‌‌ブラックコホシュのサプリメントの品質検証および認証

女性の心身の健康を後押しするハーブサプリメントとしてブラックコホシュが注目されたことで、ブラックコホシュ配合のサプリメントに含まれる化学成分の研究への関心が高まっています。このように、各品種の検証と分類のプロセスが、異なる種を識別するための指針となっています。

そこで用いられるのが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)という手法です。これは、専門の研究機関でサンプル(試料)内の化学成分をそれぞれ分離して各成分を特定・定量化する分析試験法です。このHPLC法で分離された種々の化学成分とそれぞれの成分量は、分析サンプルを他のサンプル(既に試験、マッピング=位置付け、同定済み)と比較することで異なる種を識別するのに使用されます。

Journal of Agricultural and Food Chemistry誌に発表されたある研究では、HPLC法を用いて多数のブラックコホシュ製品のトリテルペンおよびフェノール成分の分析が行われました。ただ、この研究で注目したいのは、多様なサラシナショウマ属の種が交互に使用されていることです。これについては問題があります。というのも、それぞれの品種固有の化学プロファイルにより、異なる効果があると考えられるためです。

この他にも、植物成分の真正性を保証するためにDNAバイオテクノロジーを用いたTRU-ID™などの分析試験方法があります。確かに、遺伝子試験を用いて特定の植物種を特定するのは有益ですが、これによって必ずしもサンプル内の個々の化学化合物の量が実証されるとは限りません。例えば、多くのブラックコホシュ製品には標準化されたエキスが含まれており、トリテルペンなどの化合物の含有率はサプリメントの成分表示ラベルに記載されています。

‌‌ブラックコホシュ使用の起源

ブラックコホシュは、多くの伝承民族植物学に見られますが、ヨーロッパとアジアの伝統医学の観点から捉えるとわかりやすいかもしれません。

ヨーロッパの伝統において、ブラックコホシュはホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)、更年期障害、月経前症候群などに関連する症状緩和に役立つとされるように、女性のホルモンサポート処方が一般的です。ドイツの科学論文では、60年にわたるアメリカショウマ(Cimicifuga racemosa)研究を調査した結果、その有効性と相対的な安全性が報告されています。実際、ブラックコホシュが更年期障害に伴うホットフラッシュや寝汗などの血管運動症状を抑えるのに効果的であることが複数の研究で実証されています。

一方、アジアの伝統では、ブラックコホシュは免疫系に関連した処方に含まれています。西暦200〜250年頃に書かれたとされる中国の薬物書『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』では、何百種もの薬草が分類され、各植物の作用について詩的言語で記述されています。この書物は、神農本草経すなわち神農(医学の神様として知られ、人民に農耕を教えたとされる古代中国の三皇の一人)の本草書(マテリア・メディカ)と呼ばれて研究されてきました。古典書物によるとアジア種のサラシナショウマ属は「熱と毒性を除去し」、「陽の気を高め」、「外気を解放する」ために使用されてきましたが、これはつまり、体のほてりを抑えて熱を鎮めやすくし、さらに免疫系をサポートして、季節性の風邪やインフルエンザの関連症状の緩和を促す機能を意味すると解釈されます。

‌‌‌‌ブラックコホシュと免疫の健康

ブラックコホシュに他のハーブを配合して熱に関連した症状の緩和に役立てることは、女性ホルモンのサポートによく見られる方法ですが、これはさまざまな風邪・インフルエンザ対策の伝統処方にも含まれています。

漢方の辛夷散(しんいさん)は、アジア種のサラシナショウマ属とモクレン(中国名;辛夷)他のハーブを組み合わせた伝統処方で、アレルギーや風邪、一部のインフルエンザに多い鼻づまりや嗅覚喪失に効果があるとされます。2019年に発表された台湾の全人口を対象とした研究では、この伝統処方の使用は、10年間の研究期間にわたって、アレルギー関連の合併症による入院患者が比較的軽症であったことと相関性があると報告されています。この他にも、International Immunopharmacology誌に発表された研究では、辛夷散はその多様な免疫調節作用により、アレルギー性鼻炎の症状を抑えるのに役立ったことが示唆されました。

また、International Journal of Antimicrobial Agents誌掲載の研究では、オオミツバショウマ(Cimicifuga heracleifolia)のエキスが抗ウイルス活性を示す可能性があることが指摘されています。この研究の目的は、アジア伝統の薬局方(医薬品の品質規格書)に記述された特定種のハーブサプリメントから得られたエキスを調べ、その薬効をもたらす可能性のある化学成分を追跡することです。さらに、別の風邪・インフルエンザ処方の研究例として、伝統処方の升麻葛根湯(しょうまかっこんとう)に含まれるフブキショウマ(Cimicifuga dahurica)種は、ヒトの呼吸器系の細胞へのダメージを抑制する能力と抗ウイルス活性が認められました。

なお、東洋伝統医学において、ブラックコホシュが単一のハーブとして使用されることはごく稀です。ブラックコホシュは、よく知られる風邪・インフルエンザ処方の多くに配合されており、呼吸器系疾患やアレルギー性鼻炎に効果があることが認められています。ただし、このような効果をもたらす可能性のある固有の化合物を詳しく分析するには、さらなる研究が必要です。

‌‌‌‌骨の健康と健康的な加齢に期待できるブラックコホシュの効果

一般に、更年期障害は骨密度の低下を伴うものとされています。この関連性にまつわる生物学的機能は複雑ですが、ブラックコホシュを含むいくつかのハーブサプリメントが、骨減少症、骨粗しょう症(こつそしょうしょう)、変形性関節症などを原因とする骨量の減少を防ぐのに役立つ可能性があることが研究で示唆されています。体質によっては、健康的な食事や運動と併せて、ブラックコホシュにコラーゲンビタミンDビタミンKを組み合わせたホルモンサポート剤を使用することで、骨量の減少を遅らせ、全体的な結合組織の強化に役立つかもしれません。

これまで、アメリカショウマ(Cimicifuga racemosa)とこの種のサラシナショウマ属を配合する処方が複数の研究で調査されています。その結果、ブラックコホシュは細胞増殖を促進し、コラーゲン生成をサポートし、骨芽細胞(こつがさいぼう。骨組織で骨形成を行う細胞)のミネラル化に影響を与えることで、骨密度の減少を防ぐのに役立つ可能性があることがわかっています。このようにブラックコホシュが骨を保護する効果の秘密は、おそらくトリテルペンサポニン化合物にあるという説があります。他の研究で調査されたブラックコホシュの仲間は、アジアの伝統処方で関節炎治療に使用されるオオミツバショウマ(Cimicifuga heracleifolia)で、この種に含まれる化合物に軟骨保護作用が期待できることが明らかになりました。軟骨保護作用のある化合物は、関節炎に多い進行性の関節腔の狭小化(関節のすきまが狭くなる)を遅らせるのに役立つことが特徴で、軟骨内の細胞を保護することで関節のバイオメカニクス(生物力学)の改善を促進すると考えられます。

さらに、ホルモンや免疫のサポートにとどまらず、他にも有望視されるブラックコホシュの効果があります。最近行われた2件の研究では、フブキショウマ(Cimicifuga dahurica)種に、未同定および未確認のフェノール化合物3種と、確認済み化合物5種を組み合わせたところ、酸化ダメージを受けやすい副腎細胞を保護する効果があることがわかりました。これらの抗酸化化合物についてはさらなる研究が必要ですが、脳内酵素の阻害を促すことで、神経保護効果を発揮するのではないかという学説があります。脳内酵素は、認知機能や記憶に関与する神経伝達物質の分解に携わる酵素です。このことから、ブラックコホシュは、細胞保護や更年期障害に伴う症状緩和を助けることで、症状面にとどまらず、健康的な加齢サポートを図る上で大きく期待できる成分と言えるでしょう。

‌‌‌‌ブラックコホシュについてよくある質問

具体的に、ブラックコホシュは体内でどんな働きをするのでしょう。

ブラックコホシュは、エストロゲン(女性ホルモン)が付着しないようにエストロゲン受容体に結合することで、ホルモン変動に伴う不快な症状を和らげるのに役立つことが、研究で示唆されています。また、ブラックコホシュは更年期障害に多い骨量の減少を防ぐのにも一役買うというエビデンスがあります。なお、ブラックコホシュがどのように炎症経路をサポートし、免疫の健康と健康的な加齢を促進するかについては、さらなる研究が進行中です。

ブラックコホシュを摂ると体重が増えるというのは本当でしょうか。

ブラックコホシュが体重増加の原因となるといったエビデンスは現在のところないようです。また、健康的な食事や運動習慣と併せた場合、ブラックコホシュは体を調整し、生理学的健康をサポートするのに役立つと考えられます。

ブラックコホシュの効果が現れるまでにどのくらいの時間が必要でしょうか。

ブラックコホシュの効果には個人差があり、全体的な健康状態に左右され、さまざまな条件による累積的な結果も考えられます。

ブラックコホシュはエストロゲンを増やすのでしょうか。

サラシナショウマ属の中でも、特にアメリカショウマすなわちブラックコホシュ(Cimicifuga racemosa)種に含まれる主な4種類のトリテルペノイド化合物を調べた研究では、エストロゲン濃度を増加させることはありませんでした。

‌‌‌‌まとめと実用的なアドバイス

健康的な食事と運動習慣に加え、ブラックコホシュをハーブ単体として使用したり、ブラックコホシュ配合のサプリメントを摂取することで、健康的な加齢をサポートする方法が多数あります。もちろん、各個人の健康状態を評価するには医療専門家に相談することが重要ですが、ここではまとめとして、サプリメントを選ぶ際に覚えておきたいヒントをご紹介したいと思います。

  • サプリメントの成分表示ラベルをよく読み、一般名称はもちろん、学名も表記されている製品を探しましょう。例:ブラックコホシュ根エキス (Cimicifuga racemosa)
  • 化学成分の規格にも注目しましょう。例:ブラックコホシュ根エキス(トリテルペン配糖体 2.5%)(Cimicifuga racemosa)
  • HPLC法またはTRU-ID™のようなDNA試験を通過した製品を選びましょう。
  • 全体として、第三者機関によるiTestedプログラムのような試験を実施し、品質と真正性を証明している製品を吟味することが大切です。

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