記憶力や脳力の低下は、年齢を重ねても決して避けられないものではありません。

脳細胞は、体内で最も複雑かつ長命であり、栄養を必要とする細胞です。その証拠に、知能、記憶力、行動、集中力などは、すべて脳の栄養の質に左右されることが科学研究で明らかになっています。つまり、年齢にかかわらず、脳機能の鍵を握るのは栄養状態なのです。

幸い、脳の健康向上を促進する成分を含む栄養補助食品が多数あることから、この記事では最も科学的裏付けのあるものを中心にご紹介していきたいと思います。また、心血管と脳の健康には非常に強い関連性があることも指摘しておきましょう。当然のことながら、心臓の健康をサポートする食生活や生活習慣、さらにはサプリメント摂取を実践することで、直接的または間接的に脳の健康もサポートするという利点があります。

‌‌総合的な最優秀サプリメント:ビタミンB、オメガ3、良質なマルチビタミン

数多くの研究により、脳機能はビタミン、ミネラル、オメガ3脂肪酸などの重要な栄養素を中心とする栄養状態と直接関係していることがわかっています。1-3

特に高齢者が栄養不足に陥りやすいことから、精神機能や記憶力の低下の多くは栄養面に原因があると考えられるでしょう。

ビタミンB群オメガ3脂肪酸は、脳機能と記憶力に極めて重要な役割を果たします。また、言うまでもなく、この2つを併用するとさらに効果的です。

ビタミンB

それではまず、英オックスフォード大学の臨床神経科学部による、ビタミンB群補給の影響に着目した研究結果を見てみましょう。4同研究の対象となったのは、軽度の認知障害があり、今後重度の精神機能低下を起こすリスクが高い高齢者156人です。患者は2群に振り分けられ、第1群は葉酸800mcg(マイクログラム)、ビタミンB6 20mg、ビタミンB12 500mcgを含むサプリメントを毎日摂取し、第2群はプラセボのサプリメントを摂取しました。この葉酸ビタミンB6B12の用量は、高力価マルチビタミン・ミネラルサプリメントの標準的な含有量です。

この試験前と試験期間中には、MRI(核磁気共鳴画像法)を用いて、患者の脳の灰白質(かいはくしつ。中枢神経系の中で神経細胞が密集する部分)の萎縮度が測定されました。灰白質の萎縮は、脳の老化が加速している兆候です。

2年間の研究を経て、ビタミンB群を摂取した患者は、プラセボ群と比べて灰白質萎縮が約7倍少ないことが明らかになりました。

また、灰白質の萎縮が最も早い患者はホモシステイン濃度が高く、また、ホモシステイン濃度が高い人は、最初にビタミンB群のサプリメントの効果が見られることがわかりました。ホモシステインは、メチオニンというアミノ酸の代謝物で、ビタミンB12、B6、葉酸の濃度が低いと増加し、脳やその他の組織の酸化ダメージが増えやすくなります。

オックスフォード大の研究者らは、ビタミンB群を補給することで、認知機能低下に伴う特定の脳領域の萎縮を遅らせる可能性があるという結論に達しました。4

オメガ3

オックスフォード大学で行われた別の研究では、脳内のオメガ3脂肪酸の量が多い人は、ビタミンB群による認知機能向上の効果が高まることがわかりました。5

脳力の低下が見られる250人以上の被験者を対象に、認知機能と血中のオメガ3脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の濃度を測定する一連の試験が行われました。ランダムに2群に振り分けられ、ビタミンB群のサプリメントまたはプラセボの錠剤を2年間投与された参加者は、認知機能が測定され、研究開始時の基準値と比較されました。

その結果、EPA+DHAの濃度が低い人は、ビタミンB群のサプリメントを摂取しても、灰白質の減少を防ぐ効果はほとんどありませんでした。一方、EPA+DHAの基準値が高い人の場合は、プラセボと比較して、ビタミンB群が認知機能の低下を防ぐ上で非常に効果的でした。これらの結果は、EPA+DHA濃度が良好であれば、ビタミンB群は軽度認知障害患者の脳萎縮の速度を緩めることを示しており、画期的なものと言えるでしょう。

もちろん、オメガ3脂肪酸の摂取量を増やすだけでも、気分や精神機能のスコアが向上するとされています。例えば、有名なフラミンガム心臓研究(心血管疾患の原因を探るために1984年に米マサチューセッツ州フラミンガムで開始された大規模研究)の分析では、DHAの血中濃度が高い人は、低い人に比べて認知症発症のリスクが47%低いことがわかっています。

この研究結果によると、オメガ3脂肪酸を多く含む魚を週2〜3回食べるか、EPA+DHAを1,000mg以上含むフィッシュオイルを摂取するだけで、重度の精神機能低下のリスクが50%近く減少すると見られます。6-8

マルチビタミン

要は、ビタミンB群を十分に含む高力価マルチビタミン・ミネラルサプリメントと併せて、良質なフィッシュオイルから1,000〜2,000mgのEPA+DHAも摂取することで、加齢に伴う精神機能低下のリスクを劇的に減らす可能性があるということです。

‌‌最優秀食品:葉野菜とブルーベリー

魚に含まれるオメガ3脂肪酸以外にも、脳機能に役立つ食品は多数あります。

緑色葉野菜

シカゴのラッシュ大学メディカルセンターで行われた研究では、「記憶と老化プロジェクト」の参加者960人が食物頻度アンケートに答え、約5年間に2回以上の認知機能評価を受けました。結果として、ビタミンK1、ルテイン、葉酸、α-トコフェロール、硝酸塩、ケンフェロール(またはケンペロール)を豊富に含む緑色葉野菜などの食品を1日1食程度摂取することで、加齢に伴う認知機能の低下を防ぐという結論に達しました。

そこで、葉野菜のサプリメントを食生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。その代表的なものには、スピルリナクロレラウィートグラス(小麦若葉)青汁大麦若葉青汁などのスーパー”グリーン”フードがあります。

ブルーベリー

他にも、脳力アップに役立つ食品として、フラボノイド(ポリフェノールの一種)を多く含むブルーベリーのような食物やエキスが挙げられます。動物研究では、ブルーベリーが脳の酸化ストレスや記憶力低下の予防に役立つことがわかっています。10高齢のラットに、ヒトの1日1カップ分に相当するブルーベリーを与えたところ、学習能力・運動能力ともに大幅に向上し、はるかに若いラットと精神的に同等の能力が見られました。さらに、ラットの脳を調べると、ブルーベリー摂取群のラットの脳細胞は、非摂取群の高齢ラットの脳細胞よりもコミュニケーション能力が高いことがわかりました。

このことから、ブルーベリーの摂取量を増やすとともに、ブルーベリーブドウ種子パインバーク(松樹皮)エキスなど、フラボノイドを多く含むエキスを摂取してはいかがでしょうか(1日100〜300mg)。

‌‌‌‌脳力のための最優秀サプリメント:PQQ、アセチル-L-カルニチン、レスベラトロール、クルクミン

ミトコンドリアは細胞内のエネルギー生成区画です。ミトコンドリアの機能低下が、老化をはじめ、認知機能と記憶力の低下などに関与していることを示す研究が増えています。体重の約2%を占めるに過ぎない脳ですが、体内エネルギーと酸素の20%以上を消費します。脳が最適に機能するには、ミトコンドリアの強力なエネルギー生成が不可欠です。

ミトコンドリアの機能を高める上で必要な栄養素や心がけたい習慣は以下の通りです。

CoQ10とPQQ

ミトコンドリア増強作用のあるサプリメントについては、コエンザイムQ10 (CoQ10)ピロロキノリンキノン (PQQ)の2種類を併用すると記憶力と認知力の向上に有効であることがわかっています。

CoQ10は既に広く知られていますが、PQQは最近話題になり始めたばかりです。PQQは強力な抗酸化物質で、特にミトコンドリアの損傷を防ぐ他、ミトコンドリア生合成というプロセスである老化細胞内での新しいミトコンドリアの自然発生を促進する働きがあります。PQQがエイジング対策として大きな注目を集めているのはそのためです。

PQQは単独でも有効ですが、コエンザイムQ10と組み合わせることで、さらに高い効果が期待できます。40〜70歳の中高年71人を対象とした研究で、PQQを1日20mg摂取した群は、プラセボ群と比較して高次認知機能(記憶、言語、思考、推論、意思決定などの知的機能)テストの結果に改善が見られ、PQQ 20mgとCoQ10 300mgを摂取した群では、さらに劇的な結果が得られました。11ただし、PQQとCoQ10はいずれもミトコンドリアのエネルギー生成に関与しているため、それほど意外な結果とは言えないでしょう。11,12

アセチル-L-カルニチン

アセチル-L-カルニチンは、最も優れた形態のカルニチンです。カルニチンは、CoQ10のように体内で作られる化合物ですが、不足することもあります。

脂質、炭水化物、タンパク質の代謝とエネルギー生成に重要な役割を果たすカルニチンは、ミトコンドリアの代謝にも欠かせません。アセチル-L-カルニチンは、脳の健康促進を図る方に最適な形態のカルニチンであると考えられています13

アセチル-L-カルニチンが脳細胞内のミトコンドリアの活動を保護および強化して酸化ストレスを抑えることで、脳細胞内のエネルギー生成が活発になり、脳機能の向上につながります。

臨床研究では、アセチル-L-カルニチンが精神能力や記憶力を向上させることが示されており、短期的な学習課題や特殊な学習課題の他、時間制限のある注意力の課題や個人認識の課題などで改善が見られました。場合によっては、アセチル-L-カルニチンの使用開始後1ヶ月以内に効果が認められることもありますが、長期記憶と注意力の向上が確実に見られるのは長期使用(使用開始から1年以上)のようです。14アセチル-L-カルニチンの標準摂取量は1日900~1,500mgです。

レスベラトロール

レスベラトロールは、赤ブドウの果皮をはじめ、赤ワイン、ココアパウダー、製菓用ビターチョコレート、ダークチョコレート、ピーナッツ、桑の実などに低濃度で含まれる植物性化合物です。細胞寿命の調節に重要な役割を担うサーチュイン1という酵素を活性化するレスベラトロールは、脳機能を高め、インスリンの働きと血糖コントロールの改善を促進します。

ヒト臨床研究では、レスベラトロールが加齢や高齢者の精神機能低下に伴う脳の炎症マーカー(炎症指標)を低下させることがわかっています。15,16その結果、レスベラトロールは、高齢者の気分や精神的認知の他、日常生活動作の指標スコアを改善しました。

レスベラトロールのサプリメントのほとんどはイタドリ(学名 Polygonum cuspidatum)というタデ科の植物を原料としています。摂取量は、天然トランスレスベラトロールを1日1,000mgが目安です。

クルクミン

クルクミンは、ターメリック(ウコン)の黄色の元となる色素であり、さまざまなエイジングケア効果を発揮する他、脳の保護や活性化にも大きな期待が寄せられています。17

ターメリックを大量に摂取しているインド農村部の住民は、加齢に伴う脳障害の発生率が世界一低いことが明らかになっています。もちろん、ターメリック(カレーの主成分)は食事でたっぷり摂ることもできますが、より良い結果を目指すなら、高用量のクルクミンを供給するサプリメントを摂取すると良いでしょう。

米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で行われた研究では、認知・記憶障害のある50〜90歳の40人がランダムに2群に分けられ、18ヶ月にわたって第1群は高バイオアベイラビリティ(摂取された薬剤や栄養素が体内で利用・吸収される量)型のクルクミンであるTheracurmin® 90mgを1日2回、第2群はプラセボを摂取しました。

40人の被験者全員が、研究開始時とその後6ヶ月間隔で、さらに最後は18ヶ月後に、標準化された一連の精神評価を受けました。結果として、Theracurmin®摂取群は記憶力と注意力が大幅に改善されたのに対し、プラセボ群に改善は見られませんでした。クルクミン摂取群は、記憶力テストでは18ヶ月で28%の改善があった他、軽度の気分改善も見られ、脳機能PET(陽電子放射断層撮影法またはポジトロン断層法。脳や心臓などのの細胞の働きを断層画像化する)検査では損傷が大幅に減少していました。このように、Theracurmin®などのクルクミン製品は、加齢に伴う精神機能低下の予防を図る方にとって重要な一歩となるでしょう。

‌‌‌‌老化の影響に対抗するための最優秀サプリメント:グルタチオン

グルタチオンは、体内の全細胞で作られる最も重要な化合物の一つであり、細胞をダメージから守り、有害化合物の解毒を助けます。

グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンという3つのアミノ酸から成る小さなタンパク質分子です。その研究の歴史は100年以上に及び、10万本を超える科学論文によって、細胞の正常な機能と免疫系の健康を維持し、老化のプロセスを遅らせる上で、細胞内グルタチオン濃度の維持が一つの重要な鍵となることが立証されています。体内に存在する最も効果的な解毒剤と言えるグルタチオンは、不要な毒素、汚染物質、化学物質、重金属、薬物代謝物に結合し、尿や消化管を通じて排出します。19

グルタチオン濃度は、加齢をはじめ、毒素、薬剤、環境汚染物質など酸化ダメージを引き起こす化合物にさらされると低下する傾向にあります。脳内のグルタチオン減少は、脳細胞にとって大きな打撃となります。20ある程度までなら健康的な食事でグルタチオン濃度を上げられないことはありませんが、サプリメントを摂取する方がはるかに効果的です。

グルタチオン濃度を高めるためによく使用されるサプリメントは、グルタチオンかN-アセチルシステインのいずれかです。最近の研究結果が出るまでは、グルタチオンをサプリメントとして摂取することについて論争がありました。経口摂取したグルタチオンが吸収されないのではないかと考えられていたためです。現在では、経口グルタチオンが吸収され、細胞の保護作用を向上させることを示す研究結果がいくつか発表されています。21

還元型グルタチオンの経口摂取量は1日250~1000mgが目安です。また、N-アセチルシステイン(NAC)の摂取量は、脳をはじめとするグルタチオンの組織濃度を高める栄養補助食品として、通常1日500〜1,200mgです。22

‌‌‌‌脳保護のための最優秀サプリメント:L-セリン

脳変性疾患は、食い止めたり遅らせたりできるだけでなく、改善する可能性もあることを発見したのは民族植物学者のポール・コックス博士でした。民族植物学は、生活習慣や食生活における先住民の植物活用法を研究するものです。

ハーバード大学で博士号を取得したコックス氏は、1990年代後半、グアム島のチャモロ人にALS(筋萎縮性側索硬化症)、アルツハイマー病、パーキンソン病などの退行性脳障害に伴う症状(ろれつが回らない、顔面麻痺、運動能力の喪失、非可動性、認知症など)の発生率が100倍以上も高いことに着目しました。

その答えは、2002年にコックス博士が神経学者の故オリバー・サックス博士と共同で発表したNeurology誌の論文にあります。その内容は、チャモロ人の食事にβ-メチルアミノ-L-アラニン(BMAA)という毒性化合物が多量に含まれており、それが脳変性の原因となっているという理論です。また、米国やフランスを筆頭に、他地域の集団でも、BMAAの摂取量が多いと脳変性を引き起こしやすいという結果が出ています。

BMAAは、L-セリンというアミノ酸に代わって脳タンパクの形状を変化させることにより、脳に悪影響を及ぼします。つまり、BMAAをL-セリンと勘違いした脳細胞は、自らが生成するタンパク質中のL-セリンをBMAAに置き換えてしまい、本来あるべき形ではないタンパク質ができるため、タンパク質の変性と脳細胞への毒性につながるのです。そうなると、タンパク質のフォールディング(折りたたみ。直鎖状につながったアミノ酸からなるタンパク質が折りたたまれて立体構造をとることで、さまざまな機能を発揮)が正しく行われず、折りたたみ異常が発生したり、まったく折りたたまれなくなります。

また、BMAAは脳内でβ-炭酸という毒素の生成につながります。この化合物は、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体などの脳細胞の神経伝達物質受容体に結合する可能性があるため、さまざまな原因により細胞がダメージを受けやすくなり、最終的には脳細胞の死滅を招いてしまします。

前臨床試験(ヒト臨床試験の前に行われる研究段階)では、BMAAにさらされた脳細胞にL-セリンを投与したところ、ミスフォールド(折りたたみに失敗した状態)やアンフォールド(折りたたみ構造がほどけた状態)のタンパク質形成が抑えられました。さらに、L-セリンは、BMAAによって誘導される脳細胞死を引き起こす酵素の形成増加を防ぎます。

‌‌‌‌記憶力と認知機能のための最優秀サプリメント:ヤマブシタケとフペルジンA

ヤマブシタケ(山伏茸、学名 Hericium erinaceus)

ヤマブシタケは、その英語名「ライオンのたてがみ(Lion's mane)」を彷彿とさせる白く細長い房に覆われたキノコで、広葉樹の枯れ木などに生えますが、最近では栽培もされています。

ヤマブシタケには広範な生理活性化合物が含まれていますが、特に菌糸体(きんしたい。キノコの根の部分)に見られるエリナシンという化合物は、血液脳関門を通過して、動物モデルで目覚ましい効果を上げています。24,25これらの化合物は、中枢神経系、脳、脊髄のオリゴデンドロサイト(または乏突起膠細胞、ぼうとっきこうしゅさいぼう)と呼ばれる細胞を刺激します。26

オリゴデンドロサイトは、髄鞘(ずいしょう。別名、ミエリン鞘)形成を促進する働きがあります。髄鞘とは、神経細胞の軸索(じくさく。神経細胞の突起)を取り囲む膜構造であり、電気インパルスが神経細胞や脳細胞と共に迅速かつ効率的に伝達されるための絶縁体として機能します。脳にとって髄鞘の完全性と機能は不可欠なもので、特に老化した脳の記憶、運動、認知に重要な役割を果たしています。

ある二重盲検プラセボ対照試験では、記憶力と認知力の低下が見られる50〜80歳の日本人男女がヤマブシタケ粉末を含む250mgの錠剤4錠を1日3回、16週間にわたって摂取し、27摂取終了後は4週間の観察が行われました。

その結果、ヤマブシタケ摂取群は、試験の8週目、12週目、16週目の精神機能テストのスコアがプラセボ群に比べて有意に増加しました。

ただし、摂取終了から4週間後にはヤマブシタケ群のスコアが大幅に減少したことから、ヤマブシタケが脳活性効果を発揮するには継続的な摂取が必要とみられます。

軽度の認知障害のある高齢者を対象とした別のヒト臨床試験でも、ヤマブシタケで同様の結果が得られています。28

フペルジンA

フペルジンA (またはヒューペルジンA)は、トウゲシバ(学名Huperzia Serrata)というシダ植物に含まれる天然アルカロイド化合物です。フペルジンAが発揮する作用は、記憶力・認知力低下に対して臨床的に意味のある効果をもたらします。29,30その一例として、フペルジンAは、アセチルコリンエステラーゼという酵素を可逆的に阻害(元に戻すことが可能な阻害。阻害剤が血中に存在している時にのみ起こり、血中濃度が低下すれば消失)することで、神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を抑制します。

記憶力低下や集中力低下の特徴の一つにアセチルコリン欠乏があるため、フペルジンAがアセチルコリンの分解を防ぐことで、その活性を高め、認知機能や記憶力の向上が期待できます。他にも、フペルジンAは、さまざまな神経毒(神経細胞に作用する毒)による脳細胞の損傷を防ぎ、脳の抗酸化酵素の活性を高め、新しい脳細胞の形成を促進します。フペルジンAの摂取量は、200mcgを1日2回が目安です。なお、安全性と有効性の観点から、粗製品ではなく、必ず純粋なフペルジンAを選びましょう。

‌‌‌‌まとめ:必要に応じて脳機能を向上

脳力や記憶力の低下の兆候に気づいたら、直ちに行動を起こして積極的に食生活や生活習慣を見直し、サプリメント摂取も取り入れることが大切です。脳機能には血流が大きく影響するため、十分な睡眠やストレス対策も重要です。そのため、この分野でもできる限りのことをして備えておきたいものです。

ではここで、脳機能に大きく作用し、脳の老化防止に役立つお勧めのサプリメントをおさらいしておきましょう。それぞれの段階で必要性の高いサプリメントから順に挙げてみました。

正常:フェーズ1サポート

脳機能や記憶力の低下はなく、現状を維持したい場合:

軽度:フェーズ2サポート

健康ではあるものの、脳力と短期記憶力の低下を感じている場合:

  • フェーズ1サポートのサプリメントを摂取
  • MemFood(メモフード)、1日あたり付属の計量スプーン1または個包装1包1回分の用量に含まれる成分:
    • L-セリン:4.2g
    • オーガニックヤマブシタケ:オーガニックオーツ麦で培養した菌糸体バイオマスと子実体(しじつたい。キノコの傘と柄からなる部分):2g
    • ブルーベリー果汁パウダー(学名 Vaccinium corymbosum)(果実):2g
    • MEMブレンド290mg
      • アセチル-L-カルニチン(アセチル-L-カルニチンHCL由来)、オーガニックターメリックエキス(学名 Curcuma longa)(根茎)、トランスレスベラトロール(イタドリエキス由来)(根)、フランス海岸松樹皮エキス(学名 Pinus pinaster)、ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩(PQQ)
  • コエンザイムQ10:ユビキノール型(100mg)、ユビキノン型(300mg)のいずれかを摂取します。

重度:フェーズ3サポート

脳機能と記憶力のサポートを緊急に必要とする場合:

  • 上記(フェーズ1・フェーズ2サポート)のサプリメントをすべて摂取する他、以下の製品は用量を増やします。
  • さらに以下を追加します。

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