ソーシャルメディアとハッシュタグに囲まれた現代生活においては、完璧な人生とはどうあるべきかという大量のイメージにさらされてしまいがちです。私たちは、自分のセルフケアの方法と、芸能人やインフルエンサーのセルフケアの方法を比べてしまいます。セルフケアと聞くと、白いふわふわのバスローブを着てシャンペンを飲む姿を思い浮かべる人が多いかもしれません。また、セルフケアに関して目にするものが 顔パック や 泡風呂ばかりだと、自分がセルフケアを必要としていても、周囲はそれを軽視してしまうということもよくあります。実際には、セルフケアは自分を守り、心の安らぎを得るために必要なものです。

セルフケアとは何かを本当に理解するために、その基礎について見ていきましょう。少し考えてみてください。あなたはどのように自分自身をケアしていますか?そう、食事、睡眠、そして 歯磨きなどですね。これらは、前提としてやっておいてほしいところです。しかし、精神状態を健全に保つために、何か他に、それ以上のことをやっていますか?セルフケアとは包括的な言葉で、私たちが心・体・精神のために行う全てのことがそこに含まれます。ヨガのレッスンに通う。携帯電話の山のような通知をオフにする。仕事の会議で自分の意見を表明する。これらは全て、セルフケアであると考えられます。

「セルフケア=自分勝手」ではない

1年前、私は仕事のプレッシャーと冬の寒さからどうしても逃れたいという状況に追い込まれました。私は周りに行き先を告げず、1人の友人とカボ(メキシコ)へと向かいましたが、出発前、仕事仲間たちには完全に音信不通になると伝えていました。その時は大きなプロジェクトが始まったばかりの時期でしたが、皆は数日間なら私がいなくてもチームは機能すると保証してくれました。休暇が始まってほんの数時間も経つと、プロジェクトに関するメールやテキストメッセージが大量に送られてきて、電話までかかってくる始末です。当時のプロジェクトマネージャーは、私の平穏な時間を妨害し続け、この大事な時期に連絡が取れないのは自分勝手だというようなことを口にしました。焦ってストレスの溜まった私を見た友人は、私の電話を取り上げ、電源を切ってこう言いました。「自分のための時間を確保することに、罪悪感なんて絶対に感じるべきじゃない」

私は、フェミニストの作家であるオードリー・ロードの著作 A Burst of Lightを読んで、現代におけるセルフケアをいかに定義するかという問題に注目するようになりました。「自分自身をケアするということは、自分を甘やかすこととは違います。それは自己保存であり、政治闘争の行為なのです」女性が周りの全ての人たちの世話をして、自分のことを一番後回しにしてしまう傾向があることを考えると、ロードの言葉は大変な真実味をもって響いてきます。あなたの母親、祖母、あるいは自分のことを考えてみてください。これまでに何回くらい、他の誰かの世話をするために、自分自身の優先度を一番下げて、自分を犠牲にしてきましたか?まずは自分自身をケアしないと、他の人をケアすることはできません。少しだけ時間を取って、この言葉をゆっくりと噛みしめてください。

セルフケアが自分勝手などということは決してありませんし、他の人がそれと逆のことを言っても信用してはいけません。先ほど話に出たプロジェクトマネージャーは、予定通りに休暇を取得するのは自分勝手だという考えを私に受け入れさせようと必死でした。休暇中の数時間は、リラックスしたがっている自分は悪い人間のような気がしました。こうしたネガティブな思考が、頭の中をグルグルと回り始めました。私はこの休暇を取るだけの仕事をしたのか?皆でプロジェクトに取り組んでいるときに、この休みを取る余裕が本当にあったのか?私はチームの成功のためにもっと頑張って、自分のニーズも犠牲にすべきなのでは?これらの考えは大きな誤解に基づいています。現実的に考えて、自分が万全の状態でなかったら、どうやってチームが成功するというのでしょうか。私は、このジレンマから非常に重要な教訓を得ました。一定の距離を置こうとしているあなたに嫌悪感を持つ人は、あなたのこと、あるいはあなたがセルフケアを必要としているという事実すら尊重できない人なのです。

セルフケアは自分の全てを包み込むもの

セルフケアは包括的な言葉ですが、私たちが健全な自己感を維持するために行っている諸々の行為についてはどうでしょう。それらもセルフケアの行為で、あなたにとっても馴染みがあるかも知れません。それらの行為は、身体的なもの、精神的なもの、心理的なもの、感情的なもの、という4つのカテゴリーに分類することができます。

  • 身体的なセルフケアの行為 には、ハイキング、日中の散歩、さらにはマッサージなども含まれるかも知れません。
  • 精神的なセルフケアの行為 とは、( アロマテラピーを利用した)瞑想、祈り、信仰に基づく他者との連帯、ジャーナリング(書く瞑想)などです。
  •  心理的なセルフケアの行為としては、私は良書を読む、ソーシャルメディアを見ない、庭いじりをする、創造性を発揮してインナーチャイルド(自分の中の子どもの部分)を癒すといったことを行っています。
  •  感情的なセルフケアの行為 は、自分の感情を表現する、他者と一定の距離を保つ、不安の原因となるような家族とのディナーを遠慮するといった辛いことの場合も多いですし、感傷的な映画を観て思い切り泣くという方法もあります。

実際にセルフケアを始める方法

私はセルフケアについて話をすることが多いのですが、セルフケアを実践したいという人からの質問で多いのが、「どうやって始めればよいか?」という質問です。まず第一に、本当に自分自身のケアを始める自分を受け入れ、許しましょう。大切なのはあなたなのです!あなたはこれまで、他の誰かのことを愛してきましたが、今度は自分自身を愛する番です。付箋紙に「愛してるよ」と書いて、トイレの鏡に貼っておく、といったシンプルなことから始めてもよいでしょう。あるいは、1週間に1回は、自分自身の時間を作る約束をして、子供の頃に戻った気分(インナーチャイルド)で遊び心たっぷりに過ごしてみましょう。考えてみてください、最後に自分だけで楽しく過ごしたのはいつの事ですか?セルフケアの取り組みを始めるのは比較的簡単ですが、大事なのはそれを続けることです。自分を第一に考えてみましょう。

セルフケアの行為は、月1回でも1日1回でも、気分を高めるために定期的に行う決まり事(リチュアル)です。研究では、感謝の気持ちを表す、自然の中で時間を過ごす、あるいは瞑想をすることで、脳内のセロトニンとドーパミンが増加することが示されています。もちろん、週末に長めに休みを取って、 ペディキュア を塗るのは楽しいものです。しかし、セルフケアとは、喜びの瞬間をもたらし、幸せを見つけることを思い出させてくれるような事をすることです。 セルフケアは、私たちが既に知っている真実を強固なものにしてくれます。私たちは幸せになる権利があり、自分自身からも愛されるべき人間だということです。