‌‌‌‌アシュワガンダ使用の歴史

アシュワガンダは、過去3千年以上にわたって用いられてきた治癒法であるアーユルヴェーダ医学の代表的なハーブです。アーユルヴェーダ医学では、健康とウェルネスは、心、体、精神の微妙なバランスによって成り立っているという信念に基づいています。このアーユルヴェーダ医学の主な目的は、病気と闘うことではなく、健康を維持、促進することです。そして、その手本となるのがアシュワガンダです。

アシュワガンダの根と葉は、アーユルヴェーダ医学で「ラサヤナ」という若返り効果を持つ価値ある物質とされています。アシュワガンダのエイジングケアと活力回復作用は、5千年以上前から珍重されてきました。今では、これまで伝えられてきたアシュワガンダの効能はもちろん、それ以上の効果が現代科学で実証されています。

ちなみに、アシュワガンダという名前は、サンスクリット語で馬の匂いを意味します。確かに、根に独特の香りがあり、しかも活力を高める効果のあるこの植物にふさわしい名前と言えるでしょう。また、アシュワガンダは、その若返り効果が朝鮮人参に匹敵するとされ、「インドの朝鮮人参」と呼ばれることもありますただし、アシュワガンダは、朝鮮人参(別名 オタネニンジン、学名 Panax ginseng)やエゾウコギ (別名シベリアニンジン、学名 Eleutherococcus senticosus)などと同じウコギ科には属しません。

多くの活性化合物が含まれるアシュワガンダですが、特に重要とされるのが「ウィザノライド」と呼ばれる成分で、良質なエキスの製造におけるマーカー化合物(指標となる化合物)として用いられています。

‌‌アシュワガンダはアダプトゲン

アシュワガンダは体内でアダプトゲンとして作用します。アダプトゲンは、ストレスに対処する能力やエネルギーレベルを高め、全体的な精神的充実感を向上させるハーブを表現する言葉として使われます。

このアダプトゲンは、コルチゾールなどストレス反応に関与するホルモンや、神経伝達物質のバランスを調整するのに役立つことが示されています。アシュワガンダに加え、広く知られているアダプトゲンとして、前述のオタネニンジン(Panax ginseng)やエゾウコギ(Eleutherococcus senticosus)の他にも、ロディオラ(和名イワベンケイ、学名 Rhodiola rosacea)などがあります。これらの植物はいずれも、副腎機能に有益な効果を発揮し、ストレスへの抵抗力を高める他、古くから以下のような目的に使用されてきました。

  • 活力を回復させ、気力を向上。
  • 精神能力と身体能力を向上。
  • ストレスの悪影響を防ぎ、ストレスに対する体の反応を強化。

良質なアシュワガンダの標準化エキスの有効性は、アダプトゲンとして医学文献で裏付けられています。その中でも、最も研究対象となったエキスは Sensoril®(ウィザノライド10%含有で標準化)とKSM-66 (ウィザノライド1.5%含有で標準化)です。この2種類のアシュワガンダエキスは、化学組成と用量に若干の違いはあるものの、同様の効果があるとみられます。臨床研究では、これらのエキスが発揮するアダプトゲンの効果と共に、以下の作用が示されています。

  • エイジングケア。
  • 疲労への抵抗力を向上。
  • 精神的な明晰さと集中力の促進を後押し。
  • 男女共に生殖機能の健康を促進。
  • 過食につながりがちなストレス反応を抑制することで健康的な体重管理をサポート。
  • 潜在性甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモン濃度は正常でも、状況により治療が必要となる)状態にある甲状腺機能の改善。

‌‌‌‌アシュワガンダの抗ストレス効果

アシュワガンダは、副腎のストレスホルモンであるコルチゾールの低下を促すと同時に、副腎の抗ストレスホルモンであるDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)とテストステロンという2種類の男性ホルモンの濃度を上昇させることで、ストレス対策に大きな役割を果たします。ただし、女性に対してはその効果はありません。1

できるだけ効果的にストレス対処力を高める方法として、睡眠の質の向上があります。質の高い睡眠は、エネルギーレベルや気分を高め、ストレスを感じる限界点を引き上げます。アシュワガンダが睡眠の質の向上に役立つことが複数の研究で示されていることから、この効果もストレス対策のメカニズムを支えていることがわかります。ある二重盲検プラセボ対照試験では、睡眠の質が悪い患者60人にKSM-66(300mg)、またはプラセボのいずれかが1日2回投与されました。2その結果、アシュワガンダエキスは、統計的に極めて有意な形で睡眠の質を改善することが明らかになりました。具体的には、入眠に必要な時間が短縮されると同時に夜間に目覚める回数も減り、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)の結果に基づき、全体的な睡眠の質が改善されました。PSQI は、睡眠の質を構成する7つの要素(過去1ヶ月間の主観的な睡眠の質、入眠にかかる時間、睡眠時間、夜間覚醒、睡眠障害、睡眠促進剤の使用、日中の疲労感)の結果から推定した睡眠の質と、パターンを測定する自己記入式の質問票です。そのPSQIでわかったことは、KSM-66摂取群に1ヶ月間で69%もの飛躍的な改善が見られたことです。一方、プラセボ群の改善率は11%にとどまりました。

特に大きなストレスを抱えている方にアシュワガンダの効果が期待できます。アシュワガンダは、睡眠の質と副腎機能をサポートし、不安感を和らげるのに役立ちます。さらに、慢性ストレスの兆候が顕著な被験者を対象としたヒト二重盲検試験では、Sensorilまたはプラセボが1回125~250mg、1日1~2回投与されました。3結果として、Sensoril摂取群は気持ちの落ち着きに大きな改善が見られた他、コルチゾール濃度、脈拍数、血圧、C反応性タンパク (炎症の血液マーカー) が36%も減少し、プラセボ群のわずか6%と比べて大幅な改善が示されました。また、血中のDHEA濃度の有意な上昇が見られ、空腹時の血糖値低下や血清コレステロール値の改善にも、用量依存的(用量に比例した変化が起こる)反応が見られました。つまり、これらの後者の効果は、ほとんどの場合において、1回250mgを1日2回摂取した人に見られたということとなります。

また、別の二重盲検試験では、著しい慢性ストレスの既往歴のある被験者64名が、KSM-66(300mg)またはプラセボを1日2回、60日間にわたって摂取しました。そこでわかったのは、試験終了時にアシュワガンダエキス摂取群のすべてのストレス評価尺度のスコアに有意な減少 (P<0.0001)が見られたことです。この改善結果は、アシュワガンダエキス摂取群の血清コルチゾール濃度の大幅な低下に並ぶものです。4

もちろん、大きなストレスを抱えていない方でも、アシュワガンダが持つアダプトゲンの効果からメリットを得ることはできます。健康なアスリートの男女50人を対象とした二重盲検試験では、KSM-66(300mg)またはプラセボを1日2回、12週間投与したところ、アシュワガンダエキス群は、生活の質のスコアと運動能力(VO2max2、最大酸素摂取量)の両方でプラセボ群と比較して有意な改善が示されました。5

‌‌‌‌アシュワガンダに期待できる脳機能の保護と強化

前臨床研究および臨床研究では、アシュワガンダの成分が抗酸化作用をはじめ、脳の保護に特有の効果を数多く発揮することが示されています。6これらの作用は、アシュワガンダエキスが脳機能を改善するという臨床効果の一翼を担っている可能性があります。例えば、ある二重盲検試験では、健康な男性20人が無作為に振り分けられ、Sensoril®(250mg)またはプラセボが1日2回、14日間にわたって投与され、脳機能への影響が測定されました。7その結果は目覚ましいもので、認知機能に関する6件の試験のすべてにおいて、Sensoril®が、反応時間と作業成果を改善することが示されました。ただし、脳から筋肉への機能改善の測定に使用される指タッピング試験では改善が見られませんでした。

別の二重盲検試験では、加齢の影響を示す成人の記憶力と認知機能を改善するKSM-66の能力が評価されました。8同試験の被験者50人は、KSM-66(300mg)またはプラセボが1日2回、8週間投与され、その後の記憶力および認知機能テストには、広く定着しているさまざまな検査法が用いられました。その結果、論理的記憶や言語記憶の他、顔や家族の写真といったサブテストのスコアでも明らかなように、即時記憶・全体的な記憶ともにKSM-66による改善が認められました。また、アシュワガンダ摂取群は、実行機能、持続的注意力、情報処理速度でも、プラセボ群と比較して大きな改善が見られました。これらのテストは、思考能力(認知機能)への影響を示すものです。

他の研究でも、SensorilやKSM-66をはじめとするアシュワガンダエキスが、特に高齢者の脳機能の改善において、さまざまな効果をもたらすことが示されています。なお、このような効果の中には、睡眠の質が向上したことによるものもあるかもしれません。9\

‌‌筋肉量、筋力、テストステロン濃度へのアシュワガンダの効果

アシュワガンダは、その伝統的用途が物語る通り、体力を増強させることが示されています。その一例として、ある二重盲検試験では、20〜32歳の活動的な男性38人がSensoril(1日500mg)またはプラセボを12週間摂取しました。10その内容は、ベースライン時(試験開始前)とサプリメント摂取およびトレーニング開始から12週間後に、筋力、体力、持久力、さらには7.5kmのサイクリングタイムトライアルを測定するものでした。同被験者らは、通常の食事習慣のままで、特定の漸進(ぜんしん)的ウエイトトレーニングプログラムを(上半身と下半身に分けて、週4日)行うように指示されました。Sensoril群では、スクワット力、ベンチプレスのピーク時の力、7.5kmのタイムトライアルの成績、認識された回復力の平均点において、有意な改善が見られました。

また、別の二重盲検試験では、持久力トレーニングの経験が浅い男性被験者(18~50歳)57人に、KSM-66(300mg)またはプラセボを1日2回投与しました。11両群ともに8週間のウエイトトレーニングを行い、ベースライン時と8週目終了時の測定値が比較された結果、プラセボ群と比較して、KSM-66群はベンチプレス運動と脚伸展運動の筋力だけでなく、腕と胸部の筋肉の大きさも大幅に増加したことが示されました。さらに、KSM-66を摂取した被験者は、運動誘発性筋損傷が大きく減少したことがわかりました。KSM-66摂取群は、テストステロン濃度に有意な上昇(96.2ng/dL増加)が見られ(プラセボ群は18.0ng/dL)、体脂肪率では大幅な低下(3.5%減。一方、プラセボ群は1.5%減)が示されました。これらの結果により、アシュワガンダには、男性のウエイトトレーニングに相加効果をもたらす可能性があることがわかります。

また、持久系アスリートにもアシュワガンダの効果が期待できます。健康なアスリートの男女50人を対象とした二重盲検試験では、KSM-66 (300mg) またはプラセボが1日2回、12週間投与されました。ここでは、アシュワガンダ群の心血管系の持久力が増加したことが示されました。20mシャトルラン(往復持久走)テスト中に最大酸素摂取量(VO2max)を測定することで、全被験者の持久力が評価されました。結果として、ベースラインからのVO2max増加量は、8週目でKSM-66群が4.91であったのに対し、プラセボ群が1.42にとどまり、12週目では、KSM-66群が5.67、プラセボ群が1.86と、さらに差が広がりました。また、KSM-66は、身体的健康、心理的健康、社会的関係を含む生活の質に関する世界保健機関(WHO)の自己申告アンケートでも有意な改善が示されました。5

‌‌‌‌アシュワガンダに期待できる男性のリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)向上

アシュワガンダは、男性の不妊や生殖の健康サポートに多くの効果を発揮することがわかっています。12その具体的な内容として、精子の数が少ない男性を対象とした臨床研究で、アシュワガンダが精子の濃度を167%、精液量を59%、精子の運動量を57%向上させることが示されています。この結果は、アシュワガンダが精巣の酸化ストレスを抑え、精子形成におけるエネルギー生成を向上させ、男性のホルモン濃度を改善するという作用によるものです。さらに、アシュワガンダはテストステロン濃度を17%増加させるだけでなく、他の性ホルモンのバランスも整えることから、精巣の機能と重量の改善が図れます。これらの効果はすべて生殖能力の向上につながります。

‌‌‌‌アシュワガンダと甲状腺サポート

甲状腺ホルモンは、全身の細胞機能に重要な役割を果たしています。甲状腺ホルモンT4とT3の濃度が低下すると、体重が増えたり、体重が減らないといった兆候をはじめ、倦怠感、集中力の欠如、気分の落ち込みなど、多くの症状が現れます。臨床的な甲状腺機能低下症は、血中濃度に基づいて、処方された甲状腺ホルモンの使用が必要です。一方で、検査値は正常範囲内でありながら、甲状腺が十分に機能していないという甲状腺機能低下のグレーゾーンが存在します。実は、このような症状が世界人口の約3~8%に発生しているのです。

ある二重盲検試験では、血清T3とT4の濃度が正常範囲内で、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度が4.5~10μIU/L(マイクロ・国際単位・パー・リットル)の患者50人を対象に、アシュワガンダ(300mg、ウィザノライド5%含有)またはプラセボを1日2回、8週間にわたって投与しました。13その結果、アシュワガンダ群は、プラセボ群よりも甲状腺ホルモン濃度に統計的に有意な改善が見られました。具体的には、T3の濃度が4週間で18.6%、8週間で41.5%増加し、T4の濃度は4週間で9.3%、8週間で19.6%増加した一方で、TSH濃度が低下しました。

このことからも、アシュワガンダの抗ストレス作用とコルチゾール低下作用が甲状腺機能の改善に役立っていると考えられます。慢性ストレスやコルチゾール濃度の上昇は、甲状腺の活動を乱すことがわかっています。

‌‌‌‌アシュワガンダの推奨摂取量

アシュワガンダの摂取量は、形状、活性化合物の濃度、製品の品質によって異なります。臨床研究の大半では、市販製剤のSensorilとKSM-66が用いられてきました。そこで、以下の通り、この2つの製剤の一般的な摂取量を目安にすると良いでしょう。

  • Sensoril – 125〜250mgを1日2回。
  • KSM-66 – 300mgを1日2回。

SensorilまたはKSM-66に類似するエキスを使用する場合は、摂取量もほぼ同様のはずです。なお、生薬としてアシュワガンダの乾燥根を使用する場合の摂取量は、1日3000〜6000mgですのでご注意ください。

‌‌‌‌アシュワガンダと副作用

アシュワガンダは概して忍容性が良好であり、重大な副作用は報告されていません。14,15SensorilとKSM-66を用いた臨床研究および安全性試験でも、プラセボと比較して副作用は認められませんでした。また、現在のところ、確認されている薬物相互作用はありません。

参考文献:

  1. Mukherjee PK, Banerjee S, Biswas S, Das B, Kar A, Katiyar CK. Withania somnifera (L.) Dunal - Modern perspectives of an ancient Rasayana from Ayurveda. J Ethnopharmacol. 2021 Jan 10;264:113157.
  2. Langade D, Kanchi S, Salve J, Debnath K, Ambegaokar D. Efficacy and Safety of Ashwagandha (Withania somnifera) Root Extract in Insomnia and Anxiety: A Double-blind, Randomized, Placebo-controlled Study. Cureus. 2019 Sep 28;11(9):e5797.
  3. Auddy B, Hazra J, Mitra A, et al. A standardized Withania somnifera extract significantly reduces stress-related parameters in chronically stressed humans: a double-blind, randomized, placebo-controlled study.  JANA 2008;11:50–56.
  4. Chandrasekhar K, Kapoor J, Anishetty S. A prospective, randomized double-blind, placebo-controlled study of safety and efficacy of a high-concentration full-spectrum extract of ashwagandha root in reducing stress and anxiety in adults. Indian J Psychol Med. 2012 Jul;34(3):255-62. 
  5. Choudhary B, Shetty A, Langade DG. Efficacy of Ashwagandha (Withania somnifera [L.] Dunal) in improving cardiorespiratory endurance in healthy athletic adults. Ayu. 2015 Jan-Mar;36(1):63-8.
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  8. Ng QX, Loke W, Foo NX, Tan WJ, Chan HW, Lim DY, Yeo WS. A systematic review of the clinical use of Withania somnifera (Ashwagandha) to ameliorate cognitive dysfunction. Phytother Res. 2020 Mar;34(3):583-590.
  9. Kelgane SB, Salve J, Sampara P, Debnath K. Efficacy and Tolerability of Ashwagandha Root Extract in the Elderly for Improvement of General Well-being and Sleep: A Prospective, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Study. Cureus. 2020 Feb 23;12(2):e7083.
  10. Ziegenfuss TN, Kedia AW, Sandrock JE, Raub BJ, Kerksick CM, Lopez HL. Effects of an Aqueous Extract of Withania somnifera on Strength Training Adaptations and Recovery: The STAR Trial. Nutrients. 2018 Nov 20;10(11):1807.
  11. Wankhede S, Langade D, Joshi K, Sinha SR, Bhattacharyya S. Examining the effect of Withania somnifera supplementation on muscle strength and recovery: a randomized controlled trial. J Int Soc Sports Nutr. 2015 Nov 25;12:43.
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  13. Sharma AK, Basu I, Singh S. Efficacy and Safety of Ashwagandha Root Extract in Subclinical Hypothyroid Patients: A Double-Blind, Randomized Placebo-Controlled Trial. J Altern Complement Med. 2018 Mar;24(3):243-248.
  14. Neeraj Tandon, Satyapal Singh Yadav. Safety and clinical effectiveness of Withania Somnifera (Linn.) Dunal root in human ailments. Journal of Ethnopharmacology 2020;255:112768.
  15. Verma N, Gupta SK, Tiwari S, Mishra AK. Safety of Ashwagandha Root Extract: A Randomized, Placebo-Controlled, Study in Healthy Volunteers. Complement Ther Med. 2020 Dec 15:102642.