アスコルビン酸(ビタミンC)とは?効能、サプリメントその他について

著者:エリック・マドリッド医学博士
この記事の内容:
ビタミンCとアスコルビン酸は同じものなのでしょうか。
アスコルビン酸は、一般にビタミンCとして知られています。体内で重要かつ多様な機能を担う強力な水溶性ビタミンであるビタミンCは、特定の食物から摂取する他、栄養補助食品で補うこともできます。ビタミンCは抗酸化性に優れ、人体内で8種類以上の重要な生化学反応の酵素「補因子」として働きます。
ビタミンCを補給する理由
ビタミンCは、過去数十年で最も研究対象となったビタミンの一つです。数々の研究で、ビタミンCが免疫系をはじめ、皮膚や心臓の健康などを改善することが示唆されています。
大半の哺乳類とは異なり、人間はブドウ糖からビタミンCを合成できないため、食物やサプリメントから摂取するしかありません。科学者らは、人類の祖先に遺伝子変異が生じた結果、人体はビタミンCを生成する能力を失ったと考えています。
摂取されたビタミンCは小腸で吸収されます。その後、腎臓がビタミンCの血中濃度を一定に保ち、余分なビタミンCがあれば尿中に排泄します。人体内のビタミンCは、主に脳下垂体、副腎、脳、白血球、眼に貯蔵されます。
ビタミンCの天然供給源
ビタミンCが豊富な食物には多種多様な果物や野菜があります。特に、オレンジやグレープフルーツといった柑橘類の他、イチゴ、グアバ、キウイなどにビタミンCが多く含まれています。
その他にも、ビタミンCを多く含む食物として、緑・赤ピーマン、ブロッコリー、芽キャベツ、トマト、キャベツ、カリフラワー、ジャガイモ、グリーンピースなどが挙げられます。また、アスコルビン酸は、酸化ダメージ防止を図るために、食品に少量加えられることが多い成分です。
適量のビタミンCを他のビタミンやミネラルと共に摂取するには、緑黄色野菜をはじめとする色とりどりの食物をバランスよく摂るのが一番です。ほとんどの栄養素は食事から摂取するのが理想ですが、総合的なビタミンの必要量を確保するにはビタミンCのサプリメント摂取がお勧めです。通常、ビタミンCを含むビタミンとミネラルを十分に摂取したい方が取り入れる方法は、マルチビタミンを毎日の栄養習慣に加えることです。
大半のマルチビタミンに含まれるビタミンC量は100mg未満です。500〜1000mgなど高用量が必要な場合は、単独のビタミンCサプリメントを使用すると良いでしょう。大抵の場合は、ラベルに記載されている量のビタミンCを摂取することが推奨されています。
ビタミンC欠乏症の症状
長期にわたって慢性的にビタミンCが不足すると壊血病(かいけつびょう)と呼ばれる疾患を引き起こし、死に至ることもあります。このように致命的なビタミンC欠乏症にかからないとしても、最適な健康状態には程遠いビタミンC不足の人は少なくありません。
ビタミンC欠乏症の症状には以下のようなものがあります。
- 出血が増えたり、あざができやすくなる
- 皮膚の菲薄化(ひはくか。皮膚が薄くなる状態)
- 貧血
- 歯茎の出血(歯肉炎)と歯の欠損
- 気分の変動
- 関節痛
- 創傷治癒障害(傷が治りにくい)
ビタミンC欠乏症の主な危険因子は以下の通りです。
- 果物や野菜の摂取量が少なく、栄養バランスの悪い食事
- 喫煙
- アルコール依存症
- 吸収不良
- 高齢者(65歳以上)
ビタミンC欠乏症治療の最善策は、何よりもビタミンCを補給し、欠乏症の原因となっている問題を改善することに尽きます。そこでまず、血液検査でビタミンCの血中濃度を測定することもできますが、検査費用が高額になる場合があり、決まって行われるものではありません。このことから、医師が患者の臨床症状を参考に、病歴を十分に聴取した上でビタミンCが不足していないか評価するのが理想的です。
ビタミンCの過剰摂取について
ビタミンCの過剰摂取による症状で多いのは、下痢、腹部膨満感、胃けいれん、吐き気といった消化管障害です。ビタミンCを摂りすぎると、便中グアイヤコール(臭気成分である有機化合物)検査で偽陰性となる可能性があることが研究でわかりました。この検査は大腸疾患のスクリーニングに用いられます。経口ビタミンCなら、ほとんどの人は1日2000~3000mgを摂取しても問題ありません。ビタミンCは水溶性であるため、体内で不要となったビタミンCは尿を介して排泄されます。
1日のビタミンC推奨摂取量
アメリカの保健機関であるNIH(国立衛生研究所)によると、ビタミンCの最低推奨摂取量は年齢や性別によって異なります。ただし、この最低摂取量は壊血病の予防には十分でも、最適なビタミンC血中濃度を目指すには少なすぎるかもしれません。
概ね、成人男性のビタミンC摂取量は1日90mg以上で、成人女性は1日75mgが必要です。また、高齢者や妊娠中の女性には1日120mg以上のビタミンC摂取が推奨されています。
さらにビタミンC欠乏症が深刻な問題になり得るのが喫煙者です。タバコ1本で30~40mgのアスコルビン酸が酸化すると推定されています。つまり、大半の喫煙者は、酸化されたアスコルビン酸を補うために1日1000mg以上のビタミンCが必要であると言えます。非喫煙者と比べて、喫煙者の多くが50代までに歯が抜け始めたり、皮膚が薄くなったり、あざができやすくなるのは、ビタミンC血中濃度の低下と過剰な酸化が原因のようです。
ビタミンCと風邪
ビタミンCは、風邪をはじめ、主要な感染症予防などの免疫防御に役立つことから、これまで幅広く研究されてきました。上気道感染症(いわゆる風邪)は、人が一生のうちに最も発症しやすい感染症です。推定によると、200株以上の風邪ウイルスが存在します。
風邪の治療または予防を目的とするビタミンC摂取は論争の的になっています。多くの研究では、通常量のビタミンCを摂取しても風邪予防に期待できそうにないとしながらも、着実にサプリメント摂取を続けた場合は、発熱、悪寒、痛み(関節痛やのどの痛みなど)といった風邪症状の持続期間が短縮し、重症度が低下することが示されています。研究によると、ビタミンCは風邪症状の8~9%(およそ半日分の症状に相当)を軽減することがわかっています。
ある研究では、463人の学生が調査対象となりました。参加者の半数は、風邪症状の発症前または発症後に、最初の6時間は毎時高用量(1000mg)のビタミンCを1日3回ボーラス注入(短時間で血管内に薬物を単回投与する方法)で静脈内投与されました。同群は、高用量のビタミンCを投与されなかった群と比較して、症状が緩和され、予防にもつながったことがわかりました。
2014年の研究では、プラセボ(糖剤)と比較して、ビタミンCは風邪の発症リスクと持続期間を減少させることが示されました。
また、ある文献では、ビタミンCと亜鉛を組み合わせることで、より確かな症状緩和のエビデンスが示されています。この研究は二重盲検ランダム化プラセボ対照試験で、参加者にビタミンC1000mgと亜鉛10mgを投与したものです。その結果、ビタミンCと亜鉛を合わせて摂取することで、5日間の治療で症状の持続期間が短縮されたことが示されました。
2020年7月に発表された研究は、ビタミンCが急性呼吸器感染症に果たす役割に着目しました。その結果は風邪のケースと同様のもので、急性呼吸器感染症の症状が発生した時点でビタミンCを経口摂取することで、症状の持続期間の短縮には役立つものの、予防や治療には期待できないことが示されました。
ビタミンCと敗血症
敗血症は命に関わる血液の細菌感染症で、世界中で毎年何百万人もの患者が命を落とす疾患です。最近では、ビタミンCの抗炎症特性と潜在的な抗酸化作用に基づいて、敗血症の治療に有望視されるこのビタミンを調査した研究があります。
2018年の研究では、敗血症の標準療法に加えてビタミンCを投与すると、患者の転帰(症状経過)が改善するというエビデンスが示されました。ただし、敗血症に対するビタミンCの確かな効果を完全に結論付けるにはさらなる研究が必要です。ちなみに、私自身、治療プロトコルにビタミンCの静脈内投与を加えているアメリカ国内の病院をいくつか見てきました。
ビタミンCと心臓の健康
ビタミンCは、心血管疾患におけるその抗酸化作用が研究されています。心血管疾患には、血流障害により血栓ができやすくなる動脈硬化などがあります。Journal of Nutritional Biochemistry誌に掲載された2017年の研究では、ビタミンCを豊富に含むローズヒップが、心疾患の初期指標である動脈硬化の予防に役立つことが実証されました。
他にも、心臓の拍動が不規則になると診断される心疾患に心房細動(しんぼうさいどう)があります。この疾患のリスクは加齢と共に増加する他、心臓手術を受けた後の患者も発症する可能性があります。Nutrients誌に掲載された2018年の研究では、心臓手術後にビタミンCを投与された患者は、投与されなかった患者よりも心房細動を発症する可能性が低いことが示されました。
ビタミンCと皮膚の健康
ビタミンCは、局所使用(皮膚に塗布)することで抗酸化作用を発揮することがよく知られています。皮膚にはもともとビタミンCが含まれ、UVA(紫外線A波)とUVB(紫外線B波)による環境ダメージから体を保護します。また、皮膚のビタミンCはコラーゲン合成を刺激する働きもあります。年齢と共にビタミンCが減少すると、真皮層のコラーゲンや弾性繊維が失われていきます。こうして弾力性を失った肌は乾燥しやすくなり、最終的にはシワの形成につながります。
そこで、局所ビタミンC美容液の他、経口サプリメントでビタミンCを補うことでも、加齢に伴う皮膚のビタミンC減少による症状進行を遅らせる可能性があると考えられています。
2017年の研究では、エイジングケア作用に加えて、ビタミンCが皮膚に果たす役割で最も有益なものは創傷治癒効果であると指摘されています。同研究は、ビタミンCには抗炎症作用があり、コラーゲン生成を増加させることで傷の治癒を早めると報告しています。さらに、この研究では、広範囲の火傷を負った子供に経口ビタミンCとEを投与したところ、治癒率が向上したことがわかりました。また、ビタミンC入りのシリコンジェルを塗布したところ、瘢痕形成(はんこんけいせい。傷跡の形成)が有意に減少したことも同研究で示唆されています。
ビタミンC外用剤は有望視されていますが、皮膚の健康に何より重要なのは栄養であるため、食事で必須ビタミンを摂取することが肝心です。ビタミンCがさまざまな健康効果を持つ必須ビタミンであることは間違いなく、誰もがビタミンCを十分に摂取することが大切です。
ビタミンCと腎臓結石
ビタミンCと腎臓結石に関しては、相反する結果が報告されています。ビタミンCがシュウ酸に代謝されると、腎臓結石形成のリスクを高めると考えられています。
ところが、85,557人の被験者を対象とした1999年の研究では、「ビタミンCを日常的に制限しても、結石形成を防ぐという保証はないようである」と結論づけています。
一方、American Journal of Kidney Disease誌に掲載された2016年の研究では、ビタミンCを補給した男性では有意に高い腎臓結石リスクが示唆されたものの、女性被験者には増加が見られなかったことが明らかになっています。腎臓結石のリスクがある方は、ビタミンCを1日1000mg以下に抑えるのが賢明と言えるでしょう。
重要ポイントまとめ
ビタミンC、別名アスコルビン酸は、多くの健康効果がある重要な水溶性ビタミンです。慢性疾患の患者や不健康な生活習慣を送っている人はビタミンC濃度が低い傾向にあります。そのため、栄養価の高い食物を豊富に含む食事を摂ることが不可欠です。さらに多くのビタミンCが必要な方は、マルチビタミン、ビタミンCパウダー、ビタミンCサプリメント、ビタミンCのグミ処方などで摂取すると良いでしょう。
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