人の気分は、内的焦点と生理機能という2つの要素に影響されるものです。内的焦点とは、心構えをはじめ、生活上の出来事の捉え方(楽観視するか悲観視するか、など)や自分自身との内的対話を表します。一方、生理機能は、栄養、ホルモン、脳化学といった生化学的要因の他、体の構え方(姿勢)や呼吸の仕方などを指します。また、消化管内に生息する微生物の集合体であるマイクロバイオームも気持ちに影響を与えるとされています。

時には、身近な存在の死や、仕事および人間関係、あるいは何かから解放された時など、何らかの喪失を伴う一時的な状況に感情が左右されることもあります。他にも、慢性的な痛みを引き起こす疾患や不調など、長期的な問題が原因となっている場合があります。気分の落ち込みが最近のことだとしても、長期的かつ持続的なものだとしても、気分を一新するには、各自が内的焦点と生理機能について見直す必要があると言えるでしょう。さらに、気分の落ち込みは栄養面に原因があることが多いため、適切な食事や栄養補助食品で効果的に対処できる場合もあります。

‌‌‌‌気分に影響を及ぼす主な要因

気分を左右する2大要因はストレスと睡眠の質の低下です。つまり、気分を高揚させる近道の一つは、睡眠の質を改善することです。人間の睡眠は、おそらく最も不可解な身体プロセスの一つですが、睡眠が健康と正常な機能に大きな影響を与えることに疑いの余地はありません。睡眠障害、睡眠パターンの変化、睡眠遮断はうつ病と密接な関係があるとされており、精神機能、身体機能ともに損ないます。

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気分の変動につながるその他の要因としては、栄養不足、ホルモンバランスの乱れ、血糖コントロール不良などが挙げられます。人間の脳は体全体の2%を占めるにすぎませんが、体内で最も代謝が活発な組織です。その脳が正常に機能するには、栄養素やホルモンなどの安定供給が不可欠です。中でも、ビタミンB12葉酸といったビタミンB群の他、オメガ3脂肪酸などの栄養素がどれか一つ欠乏しただけでも、気分のスコアや精神機能が低下しやすくなります。

さらに、薬物(処方薬、違法薬物、アルコール、カフェイン、ニコチンなど)の多くは、直接的な害はもちろんのこと、栄養を枯渇させることでも気分の変動や気分障害を引き起こします。

‌‌食物と気分の関係

食べ物が気分に影響を与えることについては間違いありません。特に、脳が正常に機能する上で絶え間ない血糖供給が必要なため、低血糖症を予防することが大切です。低血糖症の症状には、抑うつ気分、不安、イライラなどがあります。この低血糖症は、気分の低下を引き起こす要因としてごく一般的なものであることが複数の研究で示されています。1また、低血糖症の原因は、糖分の多い食事に対する体の反応であるケースがほとんどです。反応性低血糖症が原因で気分が落ち込んだ患者の治療には、低血糖症を悪化させかねない精製炭水化物(パンやパスタなど)とカフェインを食事から排除するだけでも効果が見られる場合があります。

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低血糖症以外にも、構造的要素をはじめ、脳の機能や気分の良し悪しは、栄養状態と密接に関係しています。特に、脳の機能や気分にとって、オメガ3脂肪酸は計り知れないほど重要なものです。脳内のオメガ3脂肪酸の濃度が高いほど、脳機能と気分が高まるとされています。オメガ3脂肪酸の一種であるEPA(エイコサペンタエン酸)を含むフィッシュオイルのサプリメントを1日1,000〜2,000mg投与した一連の臨床試験では、気分の改善に大きな効果があることが示されています。2,3

オメガ3脂肪酸は脳細胞の重要な構成要素であり、抗炎症作用により抗うつ効果も発揮します。うつ病は脳の炎症を反映しているという新しい理論があります。当然のことながら、炎症を抑える食事は気分の向上に効果的であることがわかっています。例えば、お茶(緑茶、紅茶ともに)、大豆食品、フラボノイドが豊富な果物(特にベリー類)など、フラボノイドを多く含む食品の摂取量を増やすことで、気分高揚効果があることを示す集団ベースの研究が多数あります。4,5また、幼年期にフラボノイドを多く含む食品を摂取すると、幼年期〜思春期のメンタルヘルスの改善につながることを示すデータもあります。具体的には、幼児〜若年成人を対象とした二重盲検試験で、アントシアニン253mgを含むフラボノイドが豊富な野生種のブルーベリー飲料を飲むと、摂取後2時間以内に気分が大幅に高まる効果が示されています。5そうした研究の一つでは、「食事介入は前向きな気分を促進する上で重要な役割を果たす可能性があり、情動不安やうつ病を予防する方法として期待できる」と結論づけられました。6

‌‌‌‌気分をサポートする5種類のビタミンとサプリメント

気分のバランスを整えるには総合的なアプローチが必要です。前向きな心構えを維持し、健康を促進する生活習慣や最適な栄養摂取を心がけ、主要な栄養補助食品を適切に使用することは、心身の健康と充実を図る上で基礎となるものです。

重要なのは、すべてのビタミン・ミネラルを推奨食事摂取量以上含む高効力マルチビタミン・ミネラルサプリメントを摂取した上で、さらにビタミンD3(1日2,000〜5,000 IU)を補給し、EPA(エイコサペンタエン酸)+DHA(ドコサヘキサエン酸)+DPA(ドコサペンタエン酸)含有の良質なフィッシュオイル(1日1,000〜2,000mg)や、フラボノイドが豊富なブドウ種子またはパインバーク(松樹皮)エキス(1日100〜300mg) 摂取して、確かな栄養基盤を作ることです。これらの基本的なサプリメントは、フィッシュオイルを筆頭に気分を高める効果があります。これ以外にも、科学的な裏付けのある天然の気分高揚成分がいくつかあります。

1. サフラン

サフランは、気分を高める最良のハーブ療法として注目されるようになりました。多くの研究により、サフラン(学名 Crocus sativus)の標準化エキスは、安全かつ効果的な天然の気分高揚剤であることが明らかになっています。7-9 サフランの気分高揚効果は複数の作用部位によるものです。例えば、サフランは、気分を高める重要な神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンなどの脳内濃度を増加させる他、脳内でストレス反応を調節し、抗炎症作用を発揮します。いくつかの研究によると、サフランは従来の抗うつ薬と併用しても安全で、抗うつ薬の副作用を相殺する可能性があります。サフラン由来の化合物サフラナール2%で標準化されたサフランエキスの摂取量は15mgを1日2回が目安とされていますが、30mgを1日2回使用する研究もあります。このように、サフランは、従来の抗うつ薬を服用中の方に特にお勧めしたいサプリメントです。

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2. 5-HTP

5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)は、アフリカ原産の植物(学名 Griffonia simplicifolia)の種子から抽出されたもので、気分を調節する重要な脳内化学物質であるセロトニンの直接前駆体です。5-HTPはセロトニン濃度を上昇させる上、エンドルフィンなどの神経伝達物質の濃度も増加させて気分を高めることが多くの二重盲検試験で実証されています。10-12なお、摂取量は50~100mgを1日3回が目安です。胃腸障害を防ぐために、なるべく腸溶性カプセルなどの製品やチュアブル錠を食前に摂取することをお勧めします。5-HTPは、炭水化物を食べたい衝動が抑えられない方や、睡眠障害がある方に最適なサプリメントです。(注:日本国内のお客様へ:5-HTPを含む製品につきまして、iHerbでは2ヶ月分まで購入が可能です)

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3. セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)

セイヨウオトギリソウエキス(学名 Hypericum perforatum)は天然の気分高揚剤としてよく知られており、30件以上の二重盲検試験で良好な結果を示しています。13-15 セイヨウオトギリソウエキス(天然色素ヒペリシン0.3%含有)の摂取量は1日900~1800mgが目安です。セイヨウオトギリソウエキスは、経口避妊薬など特定の薬を解毒する肝臓や腸内の酵素を誘導し、その効果を低下させる可能性があるため、処方薬を服用中の方は、このエキスの使用前に医師または薬剤師にご相談ください。なお、気分の落ち込みが激しい場合は5-HTPと併用しても良いでしょう。

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4. パルミトイルエタノールアミド(PEA)

パルミトイルエタノールアミド (PEA)は体内で生成される脂肪性物質で、栄養補助食品としても販売されています。PEAは、脳内で炎症のバランスを整え、脳細胞のストレスを抑える働きがあります。600mgのPEAを1日2回投与した臨床試験では、気分を高揚させる効果16がわずか2週間の使用で認められました。PEAは、気分の落ち込みだけでなく、身体的不調が多い方にも最適な成分です。

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5. S-アデノシルメチオニン (SAMe)

S-アデノシルメチオニン(SAMe)は、セロトニンに代表される神経伝達物質など、多くの脳内物質の生成に利用されます。これまで発表された臨床試験では、SAMeの補給が気分の改善に役立つことが示されています。推奨摂取量:200~400mgを1日3回。SAMeは肝臓に効果を発揮し、妊娠中の女性にも有効です。ホルモンバランスの乱れや有害物質への曝露、あるいは妊娠などが原因で肝臓に負担がかかり、気分の落ち込みを感じる方にSAMeは最適なサプリメントと言えるでしょう。

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‌‌‌‌これらの推奨サプリメントが効いているかどうかを判断する方法

自然に気分を高めるサプリメントでも、効果が現れるまでには2~6週間かかります。多くの人が最初に実感する効果の一つは睡眠の質の向上です。気分の落ち込みが続く場合は臨床的にうつ病の可能性があり、通常は以下のような兆候や症状を伴います。

  1. 食欲不振からの体重減少、または食欲増大からの体重増加
  2. 不眠症または過度の眠気(過眠症)
  3. 活動亢進(かつどうこうしん。活動過剰)または無気力・不活発
  4. 普段の活動に対する興味や喜びの喪失または性欲減退
  5. 活力の喪失、倦怠感
  6. 無価値感(自分は何の役にも立たないなどの否定的感情)、自責の念、根拠のない罪悪感
  7. 思考力や集中力の低下

これらの症状が5つ以上ある場合や自傷行為について繰り返し考えてしまう場合は、必ずかかりつけ医等にご相談ください。

参考文献:

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  3. Jahangard L, Sadeghi A, Ahmadpanah M, et al. Influence of adjuvant omega-3-polyunsaturated fatty acids on depression, sleep, and emotion regulation among outpatients with major depressive disorders - Results from a double-blind, randomized and placebo-controlled clinical trial. J Psychiatr Res. 2018;107:48-56. 
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  7. Khazdair MR, Boskabady MH, Hosseini M, Rezaee R, M Tsatsakis A. The effects of Crocus sativus (saffron) and its constituents on nervous system: A review. Avicenna J Phytomed. 2015 Sep-Oct;5(5):376-91.
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