各国の状況にもよりますが、徐々に各地のスポーツクラブが再開し始めることに伴い、運動習慣を取り戻そうと考える方が多いと思います。これは、あらゆる分野のフィットネス愛好家にとって待ちに待ったニュースですが、ジム通いが長期間中断した後は、計画を立ててトレーニングを再開することが大切です。

ただスポーツクラブに戻って、前回の続きから始めようすると、思わぬ壁にぶつかるかもしれません。ブランク後の体は、多かれ少なかれディトレーニング(脱トレーニング)状態であることをお忘れなく。そのため、トレーニング中断前の時点からいきなり再開するのは賢明とは言えません。そこで、この記事では、まずディトレーニングとリトレーニング(脱トレーニング、トレーニング再開)について説明し、さらには、計画的にジムのトレーニングメニューをこなせるように、上手に運動を再開するための3つヒントをご紹介したいと思います。

‌‌‌‌ディトレーニングとリトレーニングについて

ディトレーニングとは、体に馴染んだ刺激を取り除いたり、減らしたりすると起こる状態です。運動におけるディトレーニングにはさまざまな形があります。体は、頻繁に十分な負荷をかけていないと筋力が低下し、また、カーディオ(有酸素)能力を絶えず鍛えていなければ持久力も低下します。

一方、リトレーニングとは、ディトレーニングの時間を取り戻すことで、以前のトレーニングレベルを目指して計画的に取り組むプロセスです。体をリトレーニングすることは、いわば、既に自分が舗装した道を舗装し直し、手入れの必要がありそうな部分をよく見直すということです。

普段の運動スケジュールから長時間離れると、日々鍛えて身につけた適応力からディトレーニング(脱落)したことで、体が鈍ってしまいます。そのため、以下のヒントを状況に当てはめる際は、多様なディトレーニングの形を理解することが肝心です。

そこで、ディトレーニングとリトレーニングに関する重要な3つのポイントについてご説明しましょう。

  1. ディトレーニング率は、遺伝的要素、トレーニングレベル、トレーニング歴、専門とするトレーニング、年齢など、多くの要因に基づいて変化します。このように、ディトレーニング率には個人差があるというわけです。
  2. また、トレーニングを完全に中止した場合と、別のトレーニング方法に切り替えた場合とでは、当然ディトレーニングに差が出てきます。例えば、バーベルトレーニングをやめて何もしないのと、代わりにキャリステニクス(自重トレーニング)をするのとでは、ディトレーニング率が違ってきます。キャリステニクスでバーベルと同レベルの負荷は望めないとしても、何もしない状態に比べれば大きな差ができます。
  3. ちなみに、エリートレベルのウエイトリフターやアスリートがトレーニングの現状水準を維持できなくなるのは、実は初心者よりも早いのです。これは、エリートアスリートのしきい値(境界値)がはるかに高いためで、体が刺激を受けなくなった途端にエリートレベルの状態を保つことが困難になるからです。

この3つのポイントを覚えておくことは、以下のトレーニング再開のコツをつかむ上で大変重要です。

‌‌ヒント1:「時間二分割ルール」を活用

トレーニング再開計画と運動内容を組む際は、「時間二分割ルール」を念頭に置きましょう。このルールは、ディトレーニングとリトレーニングの時間の流れについて行われた研究を元に、複数の要素から生まれたもので、トレーニング中断前のレベルに戻るまでに必要な時間を知る手がかりとなるものです。

このルールでは、ディトレーニング状態にあった時間の半分を基準値として使用することで、本来のレベルに戻るまでの時間が示されます。一例を挙げると、トレーニングを4ヶ月間休んだ場合、約2ヶ月でトレーニング中断前の通常レベルに戻れると示唆されることになります。

このルールをお勧めしたいのは、自分に合ったプログラムを組みやすいため、焦ってトレーニングを再開することなく、しかも、いずれは以前のレベルに戻るという安心感も得られるからです。

ところで、このルールで注意したい点は、適用できる時間の範囲が限られているということです。このルールの「二分割」案が当てはまらない例を2つほど挙げてみましょう。

  1. ディトレーニング期間が6ヶ月以上になると、このルールが成り立ちません。この場合は、再びトレーニング基盤を確立するまで、初心に戻ってトレーニングをやり直すことになります。
  2. 特定の専門分野があるアスリートなら、自らのスポーツやニーズに応じた独自のスケジュールを組む必要があるでしょう。例えば、ウエイトリフターの場合は、中断前のトレーニング内容の特異性により、他のアスリートよりも通常のトレーニングレベルに戻るまでの時間が長くなるかもしれません。

これらの点を踏まえて、自分のトレーニング状況を把握することで、それに応じて目標を設定することができます。なお、トレーニング再開には、想像以上の時間がかかると考えるのが賢明でしょう。

‌‌‌‌ヒント2:無理せず、焦らず、計画を立てること

スポーツクラブに行けない状態が長期間続いた後にいざ再開すると、適度な加減を保つのが難しく、開始早々ついつい張り切りすぎてしまいます。確かに、運動した後の軽い筋肉痛や疲労感が恋しいのはわかりますが、トレーニング再開直後はこのような感覚をしばらく我慢すべきでしょう。

そこで、こう考えてみてはいかがでしょう。トレーニングを再開するにあたり、中断した内容を練り直し、元のレベルを取り戻すのが目的なわけですから、過度の筋肉痛が出るほど無理して頑張る必要などありません。

体に痛みがあると全力を発揮できない上、特に筋肉増強となると、レップ(回数)を重ねる中で思うように筋繊維を補充できません。極度の筋肉痛が起こるほど無理をしては、筋力、筋肥大、パワーにとって逆効果です。

疲労や筋肉痛を適切に軽減するには、トレーニングを再開する際に綿密な計画を立てることが大切です。今は、トレーニング中断期間中に鈍ってしまった感覚を計画的に取り戻すことが先決であり、ぶっつけ本番的なトレーニングはやめた方が無難です。

ではここで、自分で計画を立てるにせよ、コーチの指導を受けるにせよ、できるだけ計画的にトレーニングを行う上で心がけたい点をいくつか挙げてみましょう。

  • 必要に応じて休憩時間を増やす。
  • ブランク後は1RM(最大挙上重量)が落ちている可能性が高いため、以前の1RMから10~20%下げて設定し、その数値からトレーニングを開始すると良いでしょう。
  • くれぐれも、全体的なトレーニングボリューム(レップ数+セット数)に注意しましょう。トレーニング再開時は、「少ないに越したことはない」ということをお忘れなく。
  • 常に「時間二分割」ルールを頭の隅に置いておきましょう。

‌‌‌‌ヒント3:栄養とサプリメントの重要性

トレーニングからディトレーニング、リトレーニングを経て、栄養やサプリメント習慣を維持するのは簡単なことではありません。これらの各段階にはそれぞれ異なる考え方や捉え方があるため、どうしても食事や栄養補給が後回しになりがちですが、適切な燃料補給を忘れないことが肝心です。ましてや、トレーニングを再開するとなればなおさらです。

栄養については、シンプルかつ栄養価の高い食事を心がけましょう。ディトレーニングとリトレーニング中はなるべく食事の内容を変えないことが理想ですが、一つ変えるとすれば、タンパク質の摂取に重点を移すことでしょう。卵、肉、ヨーグルトの他に、プロテインパウダーなどの完全タンパク質を摂取してみることも有効です。

完全タンパク質を摂取する他にも、筋肉の回復、成長、修復を図るためにしっかりアミノ酸を補給したいという方にお勧めしたいのがBCAA(分岐鎖アミノ酸) などのサプリメントです。もちろん、食事でタンパク質を十分摂取している方には必要ないかもしれませんが、毎日のタンパク質摂取量に不安がある方なら、アミノ酸の摂取量を確実に引き上げるサプリメントは心強い味方となるでしょう。

また、プロテインBCAAの他に、炭水化物も回復とエネルギー維持に欠かせません。さらに、炭水化物に加えて、持久力を取り戻そうとリトレーニングに励むウエイトリフターやアスリートには電解質も効果的です。電解質は水で簡単に摂取でき、パフォーマンスに必要な栄養素を供給します。