松樹皮エキスの14の効用

執筆者 エリック・マドリード 医学博士
記事内リンク:
抗酸化パワー
松樹皮エキスの効用
ビタミンCの再生
白内障予防
心臓機能の向上
静脈瘤の改善
血圧の改善
糖尿病
記憶力改善
アレルギーとぜんそく
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
関節炎
不妊治療
肌の保護
傷の治療
色素沈着
乾癬(かんせん)
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
免疫システム
強力な酸化防止効果のある松樹皮エキス は、医療用ハーブとして北アメリカやアジア地域の先住民族人々によって使われてきました。カナダをフランス領と宣言したことで知られるフランス人探検家のジャック・カルティエも、冒険中の1535年、ビタミンC不足によって起こる壊血病の治療薬として松樹皮エキスを使用したと言われています。
今日の統合医療の専門家も、松樹皮エキスの効用やアンチエイジング効果に気づいています。アメリカで松樹皮エキスが食品サプリメントとして取り入れられたのは1987年です。現在、いくつかの健康食品が販売されており、またカプセルとして摂取したり、エッセンシャルオイルにしたり、ローションに混ぜて局部に塗ったりして使用されています。
健康食品として最も広く使われているのは松樹皮エキス(アジア産Pinus massoniana)です。ピクノジェノール® (ヨーロッパ産のPinus pinaster ssp. Atlantica)というのはこの栄養価の高い松葉エキスのブレンドのことで、特許が取得されています。
抗酸化パワー
抗酸化物質とは組織や器官をフリーラジカルから保護する物質です。Ophthalmic Research に記載されている論文では、フランスカイガンショウエキスまたはピクノジェノールの抗酸化効果がビタミンCやビタミンE、アルファリポ酸、コエンザイム Q10などよりも高いことが証明されています。松樹皮エキスに含まれる抗酸化物質にはバイオフレバノイド、カテキン、エピカテキン、プロシアニジン、フェノール酸などがあります。これらのうち、いくつかはアボガド、ストロベリー、バナナ、ブドウなどのフルーツにも含まれていますが、松樹皮エキス特有のものあります。
松樹皮エキスの効用
- 体内でビタミンC の再生産を促進する
- 白内障リスクを低減
- 心臓の健康状態や血圧を改善する
- 静脈瘤の膨張を抑える
- 抗血小板作用で血小板の凝集を抑える(アスピリンやフィッシュオイル、クリルオイルに似た効果)
- 花粉症やアレルギー、肺病の予防
- 関節炎による関節の炎症を抑える
- 生理不順の抑制
- 記憶力の改善
- 精子の質を高め、不妊症の改善に役立つ可能性
- 注意力欠陥・多動性障害 (ADHD)にも効果がみられる
- 免疫力の改善
- あざを抑え、傷の治癒を促進する
- フリーラジカルを抑制し、肌のコラーゲンと エラスチンを保護することによるアンチエイジング効果
ビタミンCの再生
ビタミンC (アスコルビン酸)は抗酸化物質としてとても重要です。ビタミンCが欠乏すると壊血病になり、歯茎から血が出たり、傷が治りにくくなったり、疲労がたまったり、体が弱くなったりしてしまいます。この病気は喫煙者やお年寄り、果物や野菜をとらない人がかかることが多いです。私もこの数年で二人の患者を壊血病だと診断したことがあります。つまり、医療従事者が思う以上にこの病気にかかる人は多いのです。松樹皮エキスは体内のビタミンCを再生しやすくさせ、ビタミンCの欠乏を予防します。
白内障の予防
白内障 になると、目の水晶体が曇ってしまいます。科学者の間では酸化が主な原因ではないかと考えられています。過度に日光にあたることで白内障になる危険が高まります。2017年にJ.Kim博士によって行われた動物実験では松樹皮エキスが白内障の形成を防いだことが報告されています。抗酸化物質を多く含む果物や野菜を多く取り入れた食事も同様に効果があります。
心臓の機能向上
世界中で循環器系の病気は死因のトップに数えられています。松樹皮エキス は動脈を詰まらせると言われている悪玉コレステロールを抑制しつつ、善玉(HDL)コレステロールを高めるといわれています。さらに慢性的な炎症を抑え、血小板の凝集を防ぐ効果もあります。
2015年にEvidence Based Complementary and Alternative Medicine誌に掲載された論文によると、松樹皮エキスには動脈血栓の前兆となる動脈硬化を防ぐ効果があるそうです。2012年にEuropean Heart Journal誌に掲載された論文では松樹皮エキスに体の機能全般と動脈の機能を向上させる効果があると認められています。
また、フランスカイガンショウエキスもしくはピクノジェノールには一酸化窒素という重要な化合物を体に出しやすさせるという効果もあります。一酸化窒素は循環機能の助けとなります。一酸化窒素には血管をリラックスさせ、血圧を下げる効果もあります。
静脈瘤の治療
静脈瘤(じょうみゃくりゅう)は脚の血管にむくみができてしまうごく一般的な病気です。2015年にInternational Journal of Angiology誌に掲載された論文では、松樹皮エキスを8週間、1日100mg摂取することで、循環器系の働きを改善し、むくみを改善できることが示されています。2017年の論文においても、同誌において同様な発見が報告されています。
血圧の改善
動脈の硬化は高血圧につながります。収縮期圧(上の血圧)が140を超えるか、拡張期圧(下の血圧)が90を超えたら高血圧と診断されます。2016年にPhytomedicine誌に掲載された論文によると、松樹皮エキスは血圧コントロールの改善に効果があるとされています。
糖尿病
世界中で4億2200万人以上の人が糖尿病を患っています。空腹時の血糖値が126 mg/dl (6.99 mmol/L)を超えた時、糖尿病と診断されます。また、ヘモグロビンA1C値が6.5%以上、もしくはランダム血糖値検査の値が200 mg/dl(11.1 mmol/L)以上の場合も糖尿病だと判断されます。糖尿病は脳、神経、組織、目、心臓、肝臓に有害な影響を与えます。血糖値が上がれば、動脈の壁が傷つき(内皮機能不全)、動脈不全、脳卒中、心臓発作などにつながります。また、糖尿病になると、癌やアルツハイマー病になるリスクが高まります。
2013年の研究によると、松樹皮エキスを使った特許商品のフランスカイガンショウエキスもしくはピクノジェノールを毎日150mg摂取した被験者の平均血糖値が、3ヶ月後に123 mg/dlから106 mg/dlに下がり、6ヶ月後にはさらに105 mg/dlまで下がったそうです。この効果に関してはより多くの研究が待ち望まれています。
記憶力の改善
歳を重ねるごとに、記憶力が低下していくのはごく一般的なことです。最大限健康でいるためには記憶力の低下を防ぐことが欠かせません。2012年の研究によると、特定の種類の松樹皮エキスをビタミン Cと一緒に摂取することで、記憶力に関するテストの結果が改善したそうです。アルツハイマー病に対する自然治療アプローチ.について、より詳しい情報をお求めの方はこちらをご覧下さい。
アレルギーとぜんそく
アレルギーやぜんそくは学校や仕事を休まざるをえなくなるなど、生活に深刻な影響を与えます。アレルギーの症状を和らげることは、生活の質の向上につながります。2013年にFood and Chemical Toxicology誌に掲載された論文によると、松樹皮エキスにはアレルギーやぜんそくに対する効果があるかもしれないそうです。2011年の研究で、G. Belcaro博士は「ピクノジェノール® の投与でアレルギー性ぜんそくの症状に改善がみられ、そのおかげで薬剤の投与を抑えることができた」と結論づけています。
COPD
慢性閉塞性肺疾患 (COPD)は慢性的な肺の病気で、主に喫煙によって引き起こされます。この病気の悪化によって、毎年多くのひとが入院を余儀なくされています。Shin博士の2016年の論文では、松樹皮エキスがCOPDの治療薬になるかもしれないと結論づけられています。さらに、2017年の論文ではCOPD患者の症状の進行が松樹皮エキスによって抑えられる可能性があることが言及されています。
関節炎
変形性関節症 (OA)は関節内の軟骨が変形することによって起こります。世界中で2億5千万人がこの病気の影響を受けていると推定されています。加齢を重ねるにつれ、関節を覆って保護している軟骨がすり減り、結果として動くことで痛みを感じるようになったり、むくんだりするようになります。多くの人が副作用のある処方箋薬を避けつつ、痛みを和らげるために自然系の関節炎用のサプリメントを使用しています。松樹皮エキスはそのひとつとなります。
2017年にBritish Journal of Sports Medicine誌に掲載された論文では、松樹皮エキスが関節炎に伴う痛みを抑えるために選択肢の一つとして有効だとされています。2017年にJournal of Medicinal Food誌に掲載された別の論文では、「安全性が高く、消炎症作用が長く続くことから、フランスカイガンショウエキスまたはピクノジェノール(松樹皮エキス)はOA患者の追加的に使用するサプリメントとして有効だ」と結論づけられています。
不妊治療
多くのカップルが不妊に悩んでいます。妊娠できない原因として多く挙げられるのが、精子の数が少なかったり、精子の質が悪かったりすることです。しかし、専門家による不妊関連の治療薬は高額になる可能性があります。2015年に行われたイタリアでの研究によれば、フランスカイガンショウエキスまたはピクノジェノールとLアルギニンで精子の質を改善できる可能性があるそうです。
肌の保護
松樹皮エキスは体の組織の回復を助け、肌を保護します。松樹皮エキスの強い酸化防止効果で紫外線によるダメージを抑制することができるのです。このエキスは顔に局所的に塗ることができます。酸化防止効果によって、肌の老化の原因となる酸化ダメージからコラーゲン と弾性組織を保護することができます。
傷の治療
循環器系に問題がある人や糖尿病の人には傷がつきものです。研究によると、ピクノジェノールを局部に塗ることで、怪我の治り方を改善できるそうです。さらに、傷跡が残るのを最小限に抑える効果もあるといわれています。 2017年にOstomy Wound Management誌に掲載された論文によると、糖尿病にかかったラットの傷にピクノジェノールを塗ると傷がはやく治ったとされています
色素沈着
日やけ、妊娠が原因で、肌に暗いシミができることはよく見られる問題です。中国の研究によると、被験者の患部に松樹皮エキスを塗布すると、80パーセントの被験者の肌の色素沈着が減ったとされています。2016年の研究においても、松樹皮エキスには望まない肌の色素沈着を抑える効果があるとされています。
乾癬
松樹皮エキスを局部に塗布するか、経口摂取することで、乾癬を小さくできると報告されています。2014年のPanminerva medica誌に掲載された論文ではこのことが示されています。乾癬の患者の方にはリーキーガットを治すことも重要です。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
この障害があると、一つのことに集中したり、集中を長続きさせたりすることが困難になります。2017年にComplementary Therapies in Medicine誌に掲載された論文では、ADHD を持つ子供に松樹皮エキスを与えると、限定的な効果がわずかにみられたとされています。2017年にTrials誌に掲載された論文では、144人の小児患者を対象にした実験において、松樹皮エキスはADHDを持つ子供にとって有益で、集中力を続かせる効果がみられたとされています。
免疫システム
ウイルスへの感染を防ぐことだけでなく、自己免疫疾患を予防するという意味でも、免疫システムを強く保つことは重要です。Nutrition Research and Practice誌の記事によると、松樹皮エキスには免疫システムを活性化する効果もあるそうです。
おすすめの摂取方法
松樹皮エキスの効用を体験できる商品としては、特許商品であるフランスカイガンショウエキスもしくはピクノジェノールの他にも、様々なサプリメントや美容品が販売されています。以下に3つの摂取方法を挙げます。
- 50から250mgの松樹皮エキスのカプセルを一日1~2回摂取
- ピクノジェノールの局部用クリームと顔用美容液を毎日説明書に従い使用
- 松樹皮エキスのエッセンシャルオイルをラベルの指示に従い使用
安全性
松樹皮エキスの安全性に問題があるという報告は特にありません。しかし、妊娠している女性や小さな子供に関しては、サプリメントを摂取する前に医療従事者に相談してみて下さい。また、抗凝固薬を服用されている場合はまず医師に相談して下さい。
効果的な酸化防止剤
フランスカイガンショウエキスも別名 ピクノジェノールは安全性に優れ、効果的な酸化防止剤です。習慣的に飲んでいるビタミンやサプリメントのラインナップに組み込むのもいいでしょう。抗酸化物質を保護し、病気に備えるためには、果物や野菜を多く摂取するのもとても効果的です。サプリメントは補完的なものであり、健康的なライフスタイルの「代わり」になるものではないと私はよく患者に言っています。松樹皮エキスは健康への悪影響を避けたい人にとっていい選択肢になると思います。
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