健康
亜鉛がもたらす13の健康効果
1月 31 2018

エリック・マドリード医学士
Journal of Nutritionによりますと、アメリカ人のおよそ45%が食事で十分な量の亜鉛を摂っていないことが示されています。世界中では15%以上の人々が亜鉛不足とされています。この問題は、サブサハラアフリカや南アジアに住む人々の間でとてもよく見られます。
加齢するにつれて、亜鉛などの大切なミネラルは低下する場合があります。さらには、亜鉛を含む食べ物の摂取量が減ったりアルコールを定期に飲むことで、亜鉛値は慢性的に低下します。亜鉛欠乏症は皮膚や血液の問題、感染する危険性の上昇、視覚障害、精神健康状態、関節炎、泌尿器の問題と関連しています。また亜鉛は、その量が血液内よりも10倍多いとされる脳に健康をもたらすための重要な役割を果たします。
脳や体全体の酵素によって必要とされる亜鉛は300種類以上の生化学反応と関わり、2,000種類以上のたんぱく質における大切な成分です。
亜鉛欠乏症の症状
- 味覚の低下または消失
- 嗅覚の低下
- 感染する危険性の上昇
- 腸内感染の危険性の上昇
- 慢性的な下痢
- 皮膚の乾燥(皮膚炎)
- 子供の発育遅延
- 亜鉛値の低い母親の産んだ子供が自閉症にかかる危険性の上昇
- 記憶力の低下
- 精子数の減少による不妊症
- うつ病にかかる危険性の上昇
亜鉛を枯渇させる薬
一般的な処方薬は、亜鉛の吸収を低下させたり、体による亜鉛の排泄を高める場合があります。このような薬を服用されている場合は、まずかかりつけ医に相談するまでは服用をやめないでください。以下の薬物を摂る方にとって、亜鉛と共に上質なマルチビタミン剤を摂ることで亜鉛不足を防止できる場合があります。
胃酸分泌抑制剤
亜鉛やその他の栄養素の吸収を妨げる胃酸分泌抑制剤は、世界的な売上が10億ドルを超える市場となっています。2013年に処方型の胃酸分泌抑制剤は、世界的に100億ドル以上の売上がありました。これらの薬にはラニチジン、ファモチジン、オメプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾールがあります。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬
ACE阻害薬としても知られているこの種の薬は、高血圧の治療に使われています。この薬の一例にはリシノプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、カプトプリル、ラミプリルがあります。研究では、この種の薬を定期的に服用することで、尿内の亜鉛の排泄が高まる場合があると提唱されています。
利尿薬
利尿薬は高血圧の第一次治療薬としてよく使用されている、血圧を下げる薬の一種です。この種の薬にはヒドロクロロチアジド、トリアムテレン・ヒドロクロロチアジド(DyazideやMaxzide)、クロルタリドン、フロセミド(Lasix)があります。残念なことに、日常的な使用はカリウムやマグネシウムだけでなく、亜鉛の血中濃度を低下させる場合があります。
経口避妊薬
避妊用として1960年に初めて認可された経口避妊薬は、世界で1億人以上の女性が服用しています。正しく服用した場合には99%の効果が現れていますが、これらの薬は亜鉛やその他の栄養素を枯渇させる場合があります。
抗生物質
シプロフロキサシン、レポフロキサシン、テトラサイクリンといった特定の抗生物質は腸内で亜鉛と相互に作用し、吸収を低下させる場合があります。特に長い間、抗生物質を摂り続けた場合、亜鉛サプリの補給を検討する必要があるかもしれません。
亜鉛の最良の食物源(3グラム当たり)
- 牡蠣 – 74mg
- 牛肩ロース – 7mg
- アラスカ産のカニ – 6.5mg
- ビーフパティ – 3mg
- 朝食シリアル – 3.5mg
- ロブスター – 3.4mg
- ポークチョップ – 2.9mg
- ベイクドビーンズ(1/2カップ) – 2.9mg
- 鶏肉 – 2.4mg
- フルーツヨーグルト(8オンス) – 1.9mg
亜鉛を摂取する13の正当な理由
- 風邪と闘う
- ニキビの治療をお手伝い
- 記憶力の向上と脳の最適な健康づくり
- うつ病にかかる危険性を低下
- 注意欠如・多動性障害(ADHD・ADD)の治療をお手伝い
- 外傷性脳損傷(TBI )患者の治療をお手伝い
- 皮膚損傷の治療をお手伝い
- 日焼け防止
- 生後6ヵ月以上の子供による下痢の予防
- 免疫システムの最適化
- たんぱく質合成の最適化
- DNAに関する健康の最適化
- 細胞の適切な再生をお手伝い
風邪と闘う
風邪は人生の中で最もかかりやすい感染症です。人間に感染する風邪のウイルスは、220種類以上あると推定されています。通常、ウイルスにさらされた場合は発症するまで1~3日かかり、症状は7日間続くと言われていますが、数週間続く場合もあります。同じウイルスが、同じ人物に二度感染することは決してありません。風邪を治せなかったとしても、亜鉛の摂取などで感染を予防する方法はあります。
数多くの研究で亜鉛は、風邪の予防にメリットをもたらすことが示されています。British Journal of Clinical Pharmacologyで公開された2016年の研究では、“風邪にかかった患者は、その治療のために亜鉛トローチを推奨される場合がある”、そして2017年の研究では、“風邪にかかった患者は、症状の現れから24時間以内に亜鉛トローチの服用を指示される場合がある”と結論付けられています。
ウイルスにさらされた直後に亜鉛トローチを摂ることは、数多くのホリスティック療法士によって推奨されています。この重要なミネラルサプリメントは、症状を感じたらすぐに服用できるよう、常に薬箱に入れておきます。2017年に行われた別の研究では、グルコン酸亜鉛トローチと酢酸亜鉛トローチは共に効果が高いことが示されています。亜鉛トローチの推奨摂取量は、ラベルの指示通り30mgです。
ニキビの治療をお手伝い
ニキビは、10代の若者や若年成人がかかりつけ医を訪れる一般的な要因です。ニキビが10代の若者で見かけられる主な原因は、加工度の高い食品やホルモンによるものと捉えられています。市販薬・処方薬は数百万ドルの売上を出す市場です。研究では、亜鉛の経口摂取がニキビの治療をお手伝いすることが示されています。
The Journal of Drugs in Dermatologyで公開された2013年の研究で、亜鉛の経口摂取および局所使用は、亜鉛が持つ抗細菌性・抗炎症性を理由にニキビの治療となる場合があることが実証されています。またDermatologic Therapyで公開された2017年の研究では、“亜鉛はコストが低く、効果が高く、全身性副作用を引き起こさないため、有望な代替薬である”と記されています。
記憶力の向上と脳の最適な健康づくり
認知症やアルツハイマー病は進行性の記憶障害を引き起こします。65歳以上の方は、これを引き起こす危険性が最も高い方たちです。脳の健康において、亜鉛はとても大切な役割を果たします。亜鉛が不足すると、思い出すことが難しくなる場合があります。ただし亜鉛は、考慮すべき重要な要素の一つ(もう一方は銅)とされています。亜鉛と銅の比率を理解することは、大切になる場合があります。両方のミネラルは共に、簡単な血液検査でテストできます。Journal of Alzheimer’s Diseaseで公開された研究によりますと、亜鉛の血中濃度の低下や銅の銅の摂りすぎは、認知症にかかる危険性を高めます。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究者であるデール・ブレザン博士によりますと、亜鉛と銅の最適な比率は0.8:1.2です。亜鉛の最適な血中濃度は90~110mcg/dlです。
うつ病にかかる危険性を低下
抑うつ障害は、世界中で何百万人もの方に影響を及ぼす病気です。これは通常、社会的および財政的なストレス、そして生化学的不均衡の組み合わせが原因とされています。その症状には睡眠欲の高まり、活動意欲の低下、罪悪感を感じる、集中力の低下、体が重い、時には自傷行為を行うなどがあります。このような症状が見られた場合は、医療専門家に相談することが大切です。研究でうつ病を患う方は、血液内の亜鉛値がより低い傾向にあることが示されています
Frontiers in Pharmacologyで公開された2017年の研究では、うつ病を患う方に施す亜鉛の重要性が支持されています。また同じ研究では、亜鉛の補充は精神病の治療となる場合があることが示されています。
注意欠如・多動性障害(ADHD・ADD)
2017年にロシアで行われた研究で亜鉛は、ADHDを患う子供の治療となる場合があることが提唱されています。またCurrent Psychiatry Reportsで公開された2017年の研究では、欠乏症の危険性にさらされている方への亜鉛の補充により、注意欠如障害の治療となる場合があることが示されています。この点ではさらなる研究が必要です。
外傷性脳損傷(TBI)
外傷性脳損傷とは脳震とうの後によく見られる、脳への損傷を指します。これは認知症やうつ病にかかったり、薬物乱用の危険性を高めます。2017年にロシアで行われた研究で亜鉛は、脳の神経細胞の再生をお手伝いする場合があることが提唱されています。
慢性皮膚損傷
慢性的な傷は、糖尿病や病気により歩けない方でよく見られる症状です。2017年の研究によりますと、亜鉛を含む栄養素の欠乏は慢性下腿潰瘍を患う方によく見られることが示されています。またJournal of Wound Careで公開され同年に行われた研究では、酸化亜鉛を局所使用した際、傷の治療に役立つことが実証されています。
日焼け防止
酸化亜鉛の局所使用は日焼け止め製剤としての効果があり、日焼け防止をお手伝いする場合があります。
毒性
全般的に亜鉛は、摂取しても問題のないミネラルです。他の物質と同様に、ポイントは適度な摂取にあります。その一方で摂りすぎた際は、吐き気、胃けいれん、頭痛などの副作用を引き起こす場合があります。推奨摂取量は、特にサプリメントを摂っている方は銅の吸収の低下と関連しているため、1日150~450mgです。
鼻腔内投与型の亜鉛は推奨されていません。これは嗅覚の低下と関連しています。
おすすめの薬:
- ピコリン酸酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、ビスグリシネート亜鉛、クエン酸亜鉛:吸収力が高く、一般的な摂取量は1日10~25mg
- 上質なマルチビタミン剤:亜鉛と併用
- 亜鉛トローチ:ラベルの指示通りに服用
- 酸化亜鉛:局部使用や傷の治療に推奨
- 酸化亜鉛:日焼け防止に使用
- 硫酸亜鉛と酸化亜鉛:吸収性が低く、経口摂取は非推奨
亜鉛は最適な健康づくりをお手伝い
亜鉛は最適な健康づくりに欠かせない必須ミネラルです。亜鉛が豊富に含まれ、栄養価が高くてバランスの良い食べ物をとることは、亜鉛の適切な血中濃度や組織内濃度を確実に維持するためとても大切です。亜鉛は様々な健康状態で役立つ場合があります。特定の薬の服用は体内の亜鉛値を低下させる場合があるため、適切な量の亜鉛を確実に吸収するには、くれぐれも注意する必要があります。
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